ノエル
「ところで、今回一緒に仕事をするノエルってどんな奴なんだ?」
オレのその質問に、ギルバートは少し困ったような顔をした。
「いい子ですよ。まあ少し困ったところがあるんですが。実は今回の人手不足の原因は彼女なんですよね。ジョージが彼女と一緒は嫌だとごねまして」
「ちょっと待って。え、女の子なの?」
「ええ。ですが非常に優秀です。今回の仕事は彼女が最適だと思いますし、貴方のお兄様方も彼女が一緒ならと渋々今回の許可を頂けたくらいですから」
ギルバートだけではなく兄たちも認めたというのなら相当に優秀なのだろう。しかしあのジョージが嫌がったとは。彼は控えめに言って女の子が大好きで、チームに女の子がいるかいないかで仕事の張り切りようが違うような奴だ。更に言えばオレはジョージが女の子にそんな態度をとるところを見たことがない。
「物凄く不安なんですが」
そんなオレの心境を知ってか知らずか、ギルバートは可笑しそうに続けた。
「心配しなくても、いい子なのは本当です。もう少ししたら彼女もここに来ますから、会えばすぐにわかりますよ」
多少不安は残るものの、オレはギルバートの言うことを信じて待つことにした。優秀な上司の言うことに間違いはないのだ。
程無くして応接室の扉がノックされた。オレは少し緊張しながら扉を見つめていたが、入ってきた人物を見て今までの不安やら疑念やらが全て吹き飛んだ。はっきり言おう。めちゃくちゃタイプだった。
「何あれ何あれ!!あんな子いた?!めちゃくちゃかわいいんだけど!!」
興奮気味に小声でギルバートに詰め寄るオレは彼女から見たらさぞ不審者だったに違いない。けど仕方ないじゃないか、それだけ衝撃的だったんだ。後悔はしている。
「落ち着いてください。ノエル、こちらに。紹介します。今回組んでもらうことになったエドワードです」
「あ!は、初めまして!エドワードです!よろしく!」
ギルバートの言葉でようやく彼女の視線があることに思い至ったオレは、とりあえず慌てて彼女に挨拶し手を差し出した。対して彼女は驚いたようにギルバートとオレを交互に見比べた後、まさか……と呟きギルバートに詰め寄った。オレの手は虚しく宙に浮いたままだ。羨ましいなんて思っちゃいない。
「ギル!冗談だろ?!エドワード様と仕事なんて!!彼に何かあったらブラコン王子たちが何をしでかすか……!!」
「大丈夫ですよ。お兄様方にはきちんと許可をもらっていますから。貴女が相棒なら安心して任せられるとおっしゃってくださいましたよ」
「嬉しいが嬉しくねー……!他にいただろ?!ジョージとか今暇そうじゃん!」
「貴女が前回彼にあんなことするからですよ。当分ノエルとは組みたくないと言われました。私もさすがに今回はフォロー出来かねましたので。自業自得です。」
「ぐぅ……」
思ったより口悪いなぁとか、何でオレのこと知ってるのかなぁとか、こんなかわいい子が同じ職場にいたのに何で今まで気づかなかったのかなぁとか、ジョージは何されたのかなぁとか、まぁいろいろ疑問はあったが、今の二人の会話を聞いて何よりもまず聞かなければならないことがある。オレは意を決して彼女に問いかけた。
「ギルバートとどういう関係ですか!?」
呼び方が親密すぎる!!
突然のオレの質問に、ノエルはぱちりとその大きな緑の目を瞬かせ、ギルバートは本日二度目の大きなため息をついた。