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魔境にて  作者: そら
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第4話 描くこと

2018.12・20書き直ししました。

 「じじい」が言った、「描けばよかろ」の言葉に私はどういう事か問いつめた。


 はたから見ればワンピースの胸元をパカッとあけてぎゃあぎゃあやってるのっておかしいとわかるけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。


 かわいいしろちゃんは群れのところだし、私は群れのはじの方とはいえ、胸元をあけて話しをしていても安全な場所にいる。


「で、何なのよ、描くってなに?」


「じゃから・・・」とじじいが返し、えんえんとこの不毛な会話が繰り返されることしばし。


 やっと「描く」と言う意味が理解できた。


 どうやら「描く」というのは私の描く大好きな紋様の事らしい。


 そういや我が癒しの「みどりちゃん」やこの東洋の竜の「じじい」も元を正せば私の描いた紋様じゃないか。


 すっかり周囲の異常にまぎれて大事なことを忘れていた。


 これもまた異常事態だったのに。


 忘れるなよな、自分。


 それに私ってこんなにアクティブな人間じゃなかったよな、と同時に思い出した。


 仕方ないじゃん、行動しなきゃ即、死んじゃうような世界だもん。


 ぐだぐだ生きれるのは、やっぱ余裕がなきゃできないんだ。


 私ってばまだ中学生だよ、ぴかぴかの1年生のはず、学校いってないけど。


 頑張って生きなきゃね。


 ふんふん、それで描くといい、描けばいいわけね。


 ・・・、で、描く道具はどこ?墨もしくは絵の具、鉛筆でも最悪可。


 こにには葉っぱと木と大きな虫とさらに大きな生き物たちがいる。


 で、どうしろと。


 幸い手に職はある、これは立派な職だよねえ。


 私にかかれば、あのとげとげ種はおちゃのこさいさいだ。


 この種とりのスペシャリストとしてこの世界で生きていく、だな。



 あのさぁ胸元でため息つくのやめてくんないかな?


 微妙にワンピースの胸元ぱひゅんと膨らんで、またぺちょってひっつくんですけど。


 別に胸がぺったんこなんて気にしてないんだからねっ!


 成長期はこれからなんだから。


 私がそう言った時、更に盛大なため息をついた「じじい」が「しょうがないのぉ」とそう言ったのが聞こえた。


 それと同時に何か急にひゅっとジェットコースターに乗って高いとこから降りたみたいな感覚と共に、目とかがチカチカしたと思ったら、目の前がそのまま急に暗くなり私は思わず座り込んだ。


 クラクラ、ぐらぐらしながらまだ座り込んでいると、気がつけば私の目の前に小さな女の子が、五才くらいの女の子がなぜか立っていた。


 真っ黒なおかっぱ頭に膝ぐらいの赤い着物を来た女の子が無表情に私を見つめていた。


「ざ、座敷わらし?」


 私が昔見たアニメを思い出しそう叫ぶと、どこからかあっという間に取り出した赤い鼻緒の草履で私の頭をパコーンと子気味よく叩いてきた。


 それも私は冷静にちゃんと見た、この子がわざわざ草履の汚れた裏側を見て叩いてきたのを!


「誰が座敷わらしじゃ、このおろか者めが!」


 その声はあのすんごく使えない「じじい」の声だった。


 え?じじい?


 私はその現実を受けいれるまでに半時をようした。


 で、じじいが言うにはわざわざこうして姿を変えてまであらわれたのは、まあ、その間にもいかに自分がすごいのかとかクドクドうるさかったんだけど、私がじじいの話しを聞けぬ残念な子だからだそうだ。


 わざとじじいの話しを無視してただけなのに。


 私は別に今更絵描き道具などなくても、ここでは大丈夫らしい。


 描いたほうが力あるものを呼べるが、ぶっちゃけイメージで描く事もできるという。


 え、まじで。


 ならば金銀財宝ざっくざくもありかと思ったら、またまたあの草履でバチコンと叩かれた。


 何で考えてることわかるんだろう?


 「ふん、主の顔が卑しく崩れておるのじゃ、誰にでもわかるわ。よいか、聞け!なぜか主の魂はことわりの命の流れにとけた。なのに消えもせずここにいる。一にして全、どこにでもあり、そしてないものの中にとけた。なぜ主がはじまりの命の聖域に作用できるのかはわしにもわからぬ。かといって主の存在が強いものかといえば、そこらの蚊トンボにさえ負けるありようでしかない。ゆえに守るものを呼べとわしは言うておるのじゃ」


 このじゃあじゃあうるさい幼女じじいの言ってることはちんぷんかんぷんだけど、守ってもらうのは確かに大事だよね。


 草をおいしょと引っこ抜いて、あいた地面に木の枝で絵を書こう。


 枝を持ってかがみこみながら、首長竜もどきともいられるような、そんな生き物がいいなと思った。


 あまりほかの生き物の邪魔にならないといい、じじいみたいにうるさいのもなあ。


 そんなことを考えながら何か紋様を思い出そうとした時、そういえば究極に簡単な人型のまじないって「へのへのもへじ」じゃないかと、ふと思った。


 枝を持って描こうと思っていたその体勢で。


 


 わかってくれたろうと思う、やってしまいました。


 わちゃわちゃと500のペットボトルくらいの「へのへのもへじ」が腰にちっさな剣をさして、はい。わちゃわちゃと数十体、はい。


 みなおんなじ顔が私を振り仰ぐ。


 声は出てないが、この無表情さにこれはこれでかわいいんじゃなかろうかと思ってしまった。


 そこのやつ!やれやれという顔をするんじゃない!!



 


 


 

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