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魔境にて  作者: そら
3/5

負けないんだから!

2018.12.20書き直しました。


 私は現在思いっきり走っている。 


 力の限り、自分の背丈ほどある下草や、それ以上あるもっと背の高い草の間をちょこまかと走っている。


 これ以上ないくらいに必死で、これ大事、覚えておいて。


 何せ私はあいつらと違ってちっこい、悲しいくらいにちっこい。 


 とりあえず今は走るの優先、がんばれ、息が切れても苦しいだけで死にはしない。


 


 ここにいる生き物たちは、本当に見上げるような大きさばかりだった。


 当たり前だが生き物がいた。


 一人たそがれていた私はお馬鹿だった、早くほかの生き物の存在に思いいたれ!


 あのあと、相変わらず声をかけていると思われるあれをどうしようと思っていたら、何かの気配に気がついた。


 草をおしつぶしながら、黒くて丸い何かが前方に見えた。


 ぎょっとしてよくよく見ると一匹だけじゃなく五匹くらいいた。


 えって、何って、あれ大きいんだけどってマジでと思って、それからはわかんない。


 がさごそって音にびくっと我にかえって、ちゃんと走り出したんだ、逃げようと思って。


 この時私は思ったよ、中学校の担任ですって言ってたあの人が「何事も無駄という事はありません」と繰り返し言ってたことを。


 「お母様やお父様のお子さんへの思いはいつかわかってくれますよ、親の愛をまだわかれというには、まだ会田さんは経験もたりないのでしょう。お子さんへの愛情が無駄になるものですか、ゆっくりと学校も待ちますから」


 「会田さん、学校の勉強もそうです、決して無駄なものなどないと、まだまだ教師として未熟ながら私はそう信じています」


 「たくさんの友達を作れなくてもいいんですよ、まずは学校にきて少しずつなじんでいきましょう。小学校からのお友達もたくさんいますから大丈夫ですよ、怖い事なんてないですから、学校は」


 そう言ってたっけっなあ。


 確かに無駄はなかった、


 小学校のとき、やられそうな気配の時は、考えるより先に体は動いて逃げていた。


 あれがあるからこそ、今の私は震えもせずにすぐにかけ出せた。


 あいつら何なんだろう、昆虫だとはわかる。


 だけど大きさがでかすぎる、


 さっきはじめてみたこの世界の生き物が、地球でいうダンゴ虫みたいな生き物が小さな車くらいの大きさがあるんだ。


 なんなのここ。


 ほうほうのていで逃げ出して、木にのぼり私がすっぽり入るくらいの小さなうろに逃げ込んだ。


 食べるものもない、場所もわからない。


 あの物語の中の親指姫だって、私に比べたら、本当に優雅に暮らしていたんじゃないかなと心から羨ましく思う。


 このあとしぶしぶとだが、あのいらん声の持ち主を私は現実として認めた。


 木のうろの中にへたりこんでこれは夢、これは夢、絶対夢!と心の中で、口にも出してたいたかも知れないけど、そう思いこもうとしていたのに、あの声の言ったひと言に私はこれは現実なんだと変なところですとん、と実感しちゃったから。


 私は小学校の底辺にいても、何がおきてもなぜか心が動かなかった、それをどうしてかと思いはしても私は自分自身については絶対自己卑下だけはしなかったの。


「私は私」それだけは思っていられた。


 それなのに、私の胸元の声が私が無視して相手にしていなかったら、ぽつりと言ったの。 


「こりゃあ、ちといろいろと足りない主のようじゃのぉ。はてわしはどうすればいいんじゃろか」とほとほと困ったかのように言うのが聞こえてきたの。


 それをしっかり聞いた私は思わず自分の胸だけど、服の上からバチコンと頭にきて叩いちゃったの、珍しく頭にきて。


 こんな状況でそんな事を言うその声のぬしを。


 うん、私に痛みはなかった。


 だけどすかさず「なんとまぁ、乱暴な主じゃ、足りない上にこれか」とまた聞こえたの。


 私はすかさず反撃しまた叩いた。


 今まで何があっても怒るなんてしたことなかったのに。


そこで誰かが見てたら,自分の胸元をつかみながら,ギャアギャアやってるおかしな子どもが出来あがってたはず。


 それも長くは続かなかったけど。


 だって、急に木が揺れてきたから。


 それに伴ってドシン、ドシンと体に響く音がして、それでなくても草の影や木々の影で薄暗いのに、もっと深く暗くなって、座りこんだまま見上げると、一軒家くらいの「カモノハシ」みたいなのに「ネズミ」が合体したような生き物があたりを見渡しながら歩いていた。


 それがビョ~ンという感じに飛び上がって次に着地した時にはカブトムシに似た体中複眼だらけの車くらいの大きさのそれをくちばしでパクッと丸のみした。


 飲み込んだとき、その目玉がぐりゅんと裏返ったのが見えた。


 私は座り込んだままあんぐりと口を開け次に絶叫したと思う。


 止めなきゃと思うんだけど止まらない。


 それでそいつにとってはたるに足らない声であっても、何かに気づいたかのように、ギョロリとその目を元にもどし私のいる方にその目を向けた。


 私はそれを見て自分でまた勝手に出ようとする声を両手で必死に口を押さえて止め、それでも今度は出てくる涙でしゃくりあげる声にもはや自分ではもうどうしようもなくなった。


 けれどすぐ優しい感触を自分の腕に感じ、自分で懸命に口を押さえてる手を見れば、あの腕の紋様の蔓たちが優しく私を癒やし落ち着かせてくれようと優しくなでさすってくれているのがわかった。


 きょとんと涙も止まった私は必死に静かに小さく木のうろに背中をおしつけ息を殺した。


 やがて別の何かのぶ~んという音が聞こえたとたん、あのカモノハシもどきはちっぽけな私への関心を捨てまたどしどしと足音をさせていなくなった。


 腕の蔓をほうけたように見続けていると、何か頭の中でイメージみたいなのがぼんやりと浮かんだ。


 泣いた事などない私が泣いた反動なのか、そのときの私はとても幼い精神にかえっていたと思う。


 そのせいか、すんなりとこの腕の生命の木の紋様からのメッセージだと理解できた。


 明るく力強い、私へのあたたかい思い。


 次に紋様はその蔓の先で私の逃げる方向を教えてくれた。


 どう説明すればいいのかな?


 進むべき先を見えないけど感覚で引っ張ってくれる感じ。


 驚きすぎて、まっ白けっけになっていた私はそれに疑問も持たず素直に従った。


 それからは腕にある生命の木の紋様を「みどりちゃん」と呼びすんごいラブラブな関係になっている。


 体が小さい分、慎重に選べば衣食住の負担は軽いのがわかった。


 葉っぱで洋服も作る、あーら不思議、一日何度もとりかえるおしゃれさんになりました。


 ちょっとひっかければすぐ破れるからね。




 私の住処は崖の上。


 あの蔓のみどりちゃんに、どんどん広がってどうせなら背中にも這っていきそこから翼のようになったらいいのに、と高いところにある木の実に苦労しているときに独り言を言ったら、次の朝私は蔓の山に包まれていた。


 ならば、といろいろ練習をしていまじゃ安全な崖の隙間に住んでいて、出入りはこの蔓でひゅーんとターザンみたいに一気に降りたり登ったりしてる。


 飛べないかは今練習してるとこ。


 モモンガみたいに高いとこから滑空する感じをまずはめざしてる。




 あの大きな生き物やそれよりもっと大きな恐竜のような生き物たちがいるが、私はちいさすぎて邪魔さえしなければ大丈夫だと知った。


 水もこの腕の生命の木から出る。


 寒くはないし、葉っぱで生きていけるはず、たぶん。


 体にも大丈夫な葉っぱをむしって着替えるとき、ほんのりとみどりちゃんからのお馬鹿な子的な感情が漂ってくるけど、気のせいだと思いたい。


 あの大きい生き物には踏まれないようにするのだけ気をつければいいし、彼らはその大きな音でその存在を知らせてくれるから結構大丈夫。


 それに今はなんとなんと首長竜みたいな群れとは共存中なの。


 何十頭もいる群れの迫力ってすごいんだから。


 草原エリア、うん大木が密集してるとこを森林エリアってよんで、私の何倍もある細長い柔らかな草しかないとこを草原エリアってよんでるんだけど、その細長い草をその巨体で踏み潰してフカフカな寝床のようなひらけた場所に首長竜みたいな彼らの群れは住んでるの。


 彼らと知り合ったきっかけは、たまたまダンゴ虫もどきのご家族一行様を避けようと逃げてきて、この草原エリアがあるのを見つけたの。


 まぁ、何といってもここでの私の天敵は小さい方の昆虫もどきたちなわけ。


 わかるでしょ?私でも腹ごなしになるサイズね。


 いっつもみどりちゃんのセンサーでちゃんと逃げてるけど、あいつら最悪。


 本当、みどりちゃんがいなきゃ何もできない。


 ちょっとした病院でもあり、センサーでもあり、ナビゲーターでもあり言うことないよ。


 それに比べて・・‥。


まぁ、今は奴の事はおいといて。


 それでね、草原エリアに逃げてきた時、草が踏み潰してあって視界が良好な分、私はあの首長竜の群れが見えたわけ。  


 即効また逃げるよね。


 それでも大丈夫そうとわかれば興味はあるわけで、安全そうな端の方で彼らの様子を時々見にきていたの。


 いつも草をはむはむしてるのが多い中、五頭ほどが何かを囲んでいたの。


 ウロウロしてて、その長い首を下に向けて「ブォウー」って声を出して、そういう繰り返しが遠くからでも見えた。


 みどりちゃんも彼らを見ても警戒せずに騒がないし、私は座り込んで彼らが食べてるこの草を好奇心で、はじっこの方を、それでも私をくるんじゃうほどあるんだけど食べて見ました。

  

 新しい洋服ゲットだぜ、とか思いながら。


 はい、ざりざりしてて唇切りました・・‥。


 血がドバドバ出ました。


 はい、みどりちゃんからの残念思念が送られてきたけど、すぐにパアっと光って直してくれました。 


 「みどりちゃん大好き、愛しているよ」


 そう言ってみどりちゃんとラブラブしていると胸元で声がしました。


 無視だよね。

  

 だらだらとそこでそのまま時間を潰していると、もうじき昼に変わる明るさの頃、首長竜もどきの群れが静かに移動しはじめた。


 ゆったりと歩み去るその様子を眺めて、完全に彼らの姿が消えたあと、私は彼らが囲んでいたのが何か気になって見に行った。


 みどりちゃんも何の反応もしないから安全だし、もしかしたら、夢のスイーツみたいなおいしい果物でもあるかもしれない。


 私がいそいそと向かったそこには、食べ物なんてなくて小さなミニチュア首長竜もどきが弱々しく横に倒れていた。


 それでも自転車近くの大きさはあるかもしれない。  


 「ミュー」って鳴いて警戒することもなく力なく私を見る眼差しは、すんごくキラキラ澄んでいた。


 ああ、赤ちゃんの目だ。


 私はすぐそばによって、この世界にきてはじめて本当の意味でここの生き物に触った。


 そっとそっと触った。


 何かザラザラするけど、ほんのり温かい。


 「どうしたの?おいてかれちゃった?」


 そう話しかけなでていてもその子供の竜はそのまま動こうともしなかった。


 みどりちゃんが足の方を気にしているので私はこの子の足の方に移動して足を観察してみた。


 すると、象のような足の指の間に何かが挟まって腫れていた。


 「えっ、やだ寄生虫とか無理、絶対無理。ビャ~って飛び出たらどうしよう」


 でも、でも。


 私は恐る恐る指の間を声をかけながらそっと開いた。


 私はそれがなんなのか怖いけど凝視した。


 すると何かの種に見える、ほら地球にいた時、オリエーテーリングでいった大きな公園で服に沢山ついた先っぽがとがったあの種、あれに似てる。


 ただしでかいけど。


 私の手の平の半分くらいの大きさのそれを私はそれが挟まったままの指の間からひとつひとつ取っていった。


 私には簡単に出来るその作業も、体の大きな彼らには無理で、特に弱い赤ちゃんには相当な被害がこうして出ているんだろう。


 だからあの大人の首長竜達は何もできずにただいたのか。 


 そうとわかれば私は、足の指に挟まったその種を「うんしょ、ポイッ」と細心の注意をはらい、とげの部分が残らないように取りまくった。


 この種が大きいのが幸いしてこつをつかめば、簡単にとれる。


 いや、だって大きさはあれだけど、とっても可愛いいんだもの、赤ちゃん。


 まして、「ミュー」だよ、「ミュー」


 私は頑張ってここの草原に倒れてるほかにもいた赤ちゃんを一匹一匹助けていった。


 最後の方の赤ちゃんに取りかかった時、群れの一部が戻ってきた。


 母親たちかなあ、子供が大きな声で呼んでいるもの。


 一旦はじめたんだからと開き直った私は、心ではちょっとまずいなあ、とは思っても、大人の首長竜もどきがじっとしているのをいいことに、ただしその視線を圧力として感じながらも、最後までやりとげた。


 「ドヤっ!」と思ったと同時にどうしようとも思った。


 私の前に動き出した大人の振り上げられた足で暗くなる視界の中、いざとなればみどりちゃんでバーストして逃げるぞと思ったのに、その足はそのまま子供のそばに降ろされただけだった。


 この時、胸のタトウが親にもあるからとってやれ言うので、ふだんさんざん無視してやっているんだが、その助言に従い、その大きな指にゆっくりよじ登って、私悪い事しないよー、と今思えば黒歴史のジェスチャーをして親を見上げ、その指の間から、例の種を一つ取り出してみた。


 それ以来私はこの群れで自称ちっさい看護士さんとして暮らしている。


 移動する時は赤ちゃん達の中で、一番小さな個体の苜のところに捕まって移動し、寝る時はなるべくその近くで蔓にくるまって寝ている。






 その私が、なぜ必死に冒頭のようにかけているかというと食べ物だ。


 私には草をはむはむして全ての栄養をとるというスキルはない。


 で、いつもの餌場に向かう途中、みどりちゃんが反応した。


 で、逃げている。


 「ほれ、飛ぶのじゃ!」


 飛べって、あんた、私に何を求めてんのよ!


 「あんたこそ、たまには少しは役にたちなさいよねっ!」


 私は苦しくなった息の中、奴に悪態をついた。


 「わし、嫌じゃもん。疲れるもん」


 もんもんうるさいわ!役立たず!こいつこそ私の胸に描かれた東洋の竜のタトゥー。


 「じじい」、名前をつけろとうるさいから、つけた名前が「じじい」だ。


 あっ、助かった。


 「しろ~」


 呼んだ私に嬉しそうによってくる「しろ」


 私が一番最初に助けた赤ちゃんだ。


 大きくなるのが早くて今は2階だてくらいの大きさがある。


 私を追ってきたコオロギもどきは「しろ」をみて逃げていった。


 ふふん、ざまあみろ!


 首を優しく下げる「しろ」に乗せてもらって、せっかくの果汁からとった水分が、無駄に汗となって消えていくむなしさに私はがっかりし、胸のじじいに腹いせにデコピンする事を繰り返し憂さ晴らしした。


 そんな私をみどりちゃんがすっ~と優しく癒やしてくれた。


 ありがとう、みどりちゃん。


 ブツブツ文句を言うじじいに「私はかよわい女の子なの、何で飛べとかいうのかなあ、本当あんたって信じらんない。ね~、みどりちゃんもそう思うよね」


 そう文句を言った私に奴は軽く言った。


 「じゃなら、描いて呼べばよかろ」と。


 えっ、何?描いて呼ぶ?なんのことよ!


 「じゃから、わしらのように呼べば・・・」


 その後私がじじいをしめたのは悪くないと思う。

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