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異世界酒場の自由すぎる日々  作者: 秋津 幻
二、女に台と書いて初めと書く
6/12

ドラゴンナイトゼロファイブ

来てしまった。

遂に来てしまった。

死に物狂いでヒールは覚えたけど……役に立つんですかねえ。

「さて始まるわ!久しぶりのでっかい依頼ですわ!がんばりますわよ!」

でっかい依頼に私のような素人を連れてきて本当にいいのか。それにその背中に背負っているやたらでかいマスケット銃はなんだ。フィナーレでもやるのか。

「この四人ならドラゴンくらい楽勝だけど、気をつけなさいよ?私の弟子だっているんだから」

「師匠……じゃあいらなくないですか私」

やっぱり私いらないって。先見のためとかいいって。

それより魔法の技術をあげた方が良いと思うのですが……

「ユリーカちゃん……俺もやらされたからしょうがないんだよ……伝統みたいなものだし」

伝統ってなんだよ……この酒場どのくらい長く続いてるんだ。そんな伝統になるほど続いているんですか?いや知らないけど。

「レオナルド君……いくつくらいの時にやらされた?」

「13歳くらいかなあ」

「……」

生まれた時から魔法の修練してるだろうからねえ。

来て二日や三日でこんなことやらせるこの人たちの方がおかしい。そういうことにしたい。

単純にちょっと負けた気がしただけだ。私も昔からこの世界にいれば……とか思っちゃうのはどうなのだろうか。

いや無理だから。無理に決まってるから。

「じゃあ行きましょうか。僕が途中の敵とか視認するんで」

パーティは五人。ミレーヌさん以外武器をお持ちでないのですがよろしいのでyそうか。

師匠。ミレーヌさん。ツッコミ。ロリコン。そして役立たず私。

あーもうどーにでもなれ。


***


随分と進んできたようだが……疲れた。

一旦群れを倒し終わったので休憩する。

ツッコミのレオナルド君が近くに来て話しかけてくる。

「私、役に立ってますかね?」

「大活躍だよ。というかいつの間にこんなの覚えたんですか……?」

「ん?逆ヒールのことですか?」

逆ヒール。ヒールとは簡単に言うと再生速度を早める魔法である。

HPなどが現実に存在するわけもないのでヒールの向上するポイントとしてはその速さを早めることくらいなのだけれど、最初の頃はそのあたりが苦労と失敗の連続だった。最初の最初はかかったのかかかってないのかわからなかった。「か」多すぎじゃないですかね。

その失敗の一つが、自然治癒よりも速度を遅くする、と言う事である。マイナスに速度を加えてしまうのだ。

使い方として今ドラゴンの巣に向かう途中で猪のような動物やら植物動物みたいなのがあるのだが、それに誰かが攻撃を加えた後、私が逆ヒールを放つ。

こういうことで敵はその傷の痛みが残ったままになるため、動きにくくなるのだ。

簡単に言えば何かが当たったときの痛み、それは徐々にひいていくのだが、それがいつまでたっても残っている……と言った所だろうか。

他のメンツが倒しきれなかったところを無力化していく。そういう戦いからだった。

べつに倒したからって経験値がたまるわけでもないのでこうやって敵を無力化させながら目的地へと向かうのがベストなのだろう。

それにしてもこのメンバー脳筋すぎる。背後を振り向けば光の矢で穴の開きまくった植物動物に刃物のようなもので切り付けられた猪やら熊やら。グーの形にへこんでいる動物とそれの衝撃でへこんだ木、マスケット銃から発せられた大きな鉛の下敷きになっている物も少なくない。

私がするフォロー何て小さい小さい。いやみんな突っ込んで行くから生傷がたえなく私のヒールは大活躍なのだけれど。

「たぶん俺の初陣よりも倒してるよ……ヒールで敵倒すって」

「でもすぐ立ち上がってきますし」

「それで十分だよ。どーせ爆風で全部吹っ飛ばされるんだし。

ヒールの効力もそんなに長くない。忘れていたが効力を長くすると言うのもヒールの向上ポイントの一つであろう。

まあ最初のクエストとしては活躍してる方なのかね。まあ満足満足。

でもレオナルド君の13歳の頃と比べられても困るんだけれど。

「本当にすごいわ。初めてのクエストなんて普通緊張しまくって怪我負いまくるのが普通なんだけど……」

師匠がそういう。褒められるのはうれしいですが私も小学生とかじゃないので。

「目的地までもうすぐだよ。スパートかけていこう」

「目的地……あー」

……ドラゴン忘れてた。


***


もうすぐといいつつ一つ崖を超えた先、洞窟を見つけた。

「この先ね……」

「一発撃っておきます?ミレーヌさん」

「了解ですわ」

ミレーヌさんが今まで使いまくった結果クレーターがいくつかできた産物であるマスケット銃を洞窟へと向ける。

「掛け声の提案はありますか?」

「ティロ……」

私が言いかけたところ、レオナルド君が間に入る。

「ストップ。さすがにストップ。ドラゴン希少種ですよね?それぶっぱしたらやばいじゃないですか」

そうだったんすか。知らなかったけれどそんな物の討伐任務何てとんでもないんじゃ……

「見つけたら即刻殺せと言われているので大丈夫ですわ」

「依頼主頭湧いてんじゃねえのかそれ!?」

「ギルドからも正式な命令出てるんですよ」

ロリコンさんが何かの紙を見せる。ギルド長の名前の横に指紋つき。

「本当に殺せって書いてありますね……いやいやいやいや」

「理由は何ですか?」

「近くの住民を襲いまくってるのよ……貴重とはいえこの種はそんなに守るほどじゃないし」

「凶暴なだけの雑種だよ。ドラゴンの中では安い方だ」

ドラゴンにも種類があるのか。なるほど。

「じゃあ撃ってください。どうぞ」

「行きますわよ~」

マスケット銃を本格的に構えて、引き金がひかれた。

「装填ですわ!……ファイヤー!」

洞窟の奥に銃弾が飛んでいく。銃弾と言うか鉛の塊だけど。

ズドーン。

「うわああああああああああああ!?!?」

洞窟から大量の煙が流れだす。もーこれ終わったんじゃないっすかね……

「ちょっとおおお!!?いいんでしょうけどダイナミックすぎい!」

レオナルド君がツッコミになっていないツッコミを入れる。

ミレーヌさんは煙が発生したのを確認しマスケット銃を背負う。

しかし、師匠は煙の先を見ていた。

「ちゃんと見てて!来るから!」

「え?師匠あれはもう死ぬんじゃ……」

そのとき、煙を突き破って何かが来る。

まあドラゴンなんだけど。

「でっか」

「ちょっとユリーカちゃん淡白すぎないですかね!?」

「いやいや驚きまくってますよ。驚きすぎて落着いちゃうくらい」

事実は足は震えまくって汗がだばだば出ている。

とりあえず後ろに引いていこう。

弓矢アロー!!」

リシェさんが光の弓矢をだし、弓矢を放つ。

一気に大量の矢が放たれ、ドラゴンの方向に集合する。

「あれで死なないとか今までとダンチの敵じゃないですか!?えっと……展開!」

ポケットの中から木の棒を両手いっぱいにだしその棒の色を変え、形状をとがらせ、その後突進していく。

木の棒は銀色に光り輝き鋭さをましていく。

「散開!」

その言葉とともに鉄の輝きを得た木の棒はドラゴンに突き刺さる。

弓矢と木の棒が刺さるのはほぼ同時だった。

「グギャアアアアアァァァ!!」

ドラゴンの叫び声。大きく響く声は山彦の様に反響していく。

「やっぱり一発じゃ駄目ですわね……飛出ブラストですわ!」

拳銃をどこからともなく二つほど取出しドラゴンに向け、砲撃した。

砲撃はドラゴンに動く暇もあたえず、ひるませる。

その隙に背中のマスケット銃を取り出す

「もう一度……装填セット!!」

マスケット銃の銃身の先端。白色の光が集まり……

発射ブレイク!!」

膨大な光が発射された。どちらかというと光は師匠の専売特許であり光でもなんでもないのは知っているが。

「僕もいきましょうか……序!」

オズバルドさんが手を後ろに引っ込め力を込める。

そして一気にドラゴンに突進し……

「破!」

放出した。

どうでもいいけど序・破・急っていうのは起承転結のようなものである……間違ってもあれが元ネタとか思ってはいけない。

ドラゴンに向けて放たれたその破はドラゴンをよろめかさせた。その程度ですむドラゴンは何者だ。

「急!」

破の反動で上にとんだロリコ……オズバルドさんは急を発動させることで再び突進していった。

そして再び勢いを込めた拳を放つ。

……魔道士じゃなかったっけあなた。

「私はヤム○ャかなにかか」

というか逆ヒールを打ち込む隙すらない。あの四人が絶え間なく撃ち続けている結果、私の介入する余地がないのである。

光の矢が舞い、拳銃の発砲音が響く。ドラゴンの身の鎧は破という叫び声とともにへこみ、銀色の短い槍が肌に刺さる。

冒険者だよね。サ○ヤ人とかじゃ……人間ですよね?


***


弓矢アロー……シュート!」

多少の掛け声はどうにもならないらしい。

理由は脳の中に大量にある魔法式を選ぶ際、それを識別するための名前が必要になるためである。

それに中二な名前を付けている人もいれば、この人らくらいにとどめている人もいるようだ。

その気に慣れば脳内で詠唱すればどうにでもなるらしいが……こうすれば確実に発動するのだと言う。格好はつくし。

ついでにいうと普通の魔道士は魔道書とかいうのを持ち歩いてそれに魔法式を記録しているらしいのだが……この人たちは完全に何も持っていない。現場で構築とかいう魔道士らしかぬことをやりまくっているらしい。例外しかみてないからわからないが。

ミレーヌさんの場合は拳銃に魔道式が書いているので魔力を流すだけでいいとのことだが。まあそれでも色々な色の弾を出しているし多少は変えているのだろう。

つまり覚えられる程度の魔法式しか実戦投入していないと言う事だろう。私は全属性の技を使わなければいけないし、記憶力もそんなにないのである。

さらにまだヒールしか覚えてないし、ヒールの魔法式何てあってないようなものだが。

それにしても。

「ぐはぁ!」

「あーはいヒールですね……」

「ありがとう……もうすぐ倒れると思います」

ロ……オズバルドさんはすぐに突っ込んでいった。まあそれにしてもと言ったのは。

さすが今まで回復役がいなかったと言うだけあって、肉体が強靭すぎる。魔道士ってなんだっけ。

普通の魔道士は遠距離からビームをうつのが主流らしいが、この人たちはぶっぱなしとけりゃいいだろみたいなそんな思考が見て取れる。その量もおかしいし。

確かにミレーヌさんや師匠はビームを出していると解釈をしてもいいのだが……

師匠。弓は近距離で撃つものじゃありません。ミレーヌさんもそうですよ。特注なんでしょうその拳銃?直接それで殴ると痛みますよ。

あーもうなんというかこの臨場感が伝わらない。

「これで……とどめだあ!」

レオナルド君が今まで溜めていた棒を一つにまとめて長い槍にし、ドラゴンに突き刺す。

綺麗に突き刺さったその槍でドラゴンが雄たけびをあげ、倒れる。

空中戦をしていた四人は地面に着地する。

「やっと終わったわね……」

「それなりには強い敵でしたわ」

「中々の敵でしたが、まだまだですね」

「ぜーはー……いや疲れましたよ……あれだけやって息切れしてないって……ゼーハー……」

「あんたたち本当に人間ですか」

全員ぶっ壊れている。いろんな意味で。いい意味でも悪い意味でも。


***


「どう思いました?僕たちの戦いを見て」

「何度でも言いますよ。人間ですか?」

「ちょっと特殊な鍛え方をしているだけですわ」

何言ってるんだこの人たちは。

「この銃もすこし痛んできましたわね……調整しなければですわ」

ドラゴンにそれで殴ったのはどこのどいつだ。それで壊れたらもったいないと思わないのか。

とにもかくにもなんとかドラゴンは倒せたのだ。私は何もしてないけど最初だから仕方がないんだよ。良いわけじゃないよ。

「これから少しづつ僕たちみたいに戦えるようになれる用努力していくことが大切だよ」

「あんな人間ばなれした行動何てできる気がしないんですが……」

その時、オズバルド君が帰ってきた。今まで洞窟の中へ探索に言っていたのだが帰ってきたようだ。

「あの……これ」

師匠も一緒だったのだが……なにか手に抱えている。

ドラゴンの子供だった。

「あら、かわいい子供ですわ……」

「このドラゴンの子供でしょうか。生まれたてのようですね」

二人がそのドラゴンの子の所へ行き、話をしている。

私は今しがた討伐したドラゴンの所へ歩いていった。

何か、ドラゴンが少し動いた気がしたのだ

あの四人がその子を取り囲んでいる中、少し考えをまとめる。

この辺り、つまり洞窟の周りだけいやに動物が少なかった。

休憩地点からこの洞窟まで一キロはあった。また、一つ崖を乗り越えなければいけない。

子供のことを考えたら遠くには行けないだろう。しかし崖から逆に進めば村がひとつある。だから反対側から回り込んできた、らしい。

自業自得か、周りに動物がいなくなったが結果人里を襲うようになった、と言う事だろうか。

熊みたいな話だ。

ドラゴンが再び動いた気がした。心なしかその眼はあの子供たちをみていた……気がした。

私はそのドラゴンに魔法をかけてやる。せめて物のと思いながら。

ドラゴンはそれでも最後の気力を振り絞り子供の方を見て……動かなくなった。

あくまで気がしただけだが。

私もそのドラゴンの子供の方へと歩く。

「どうしたのでしょうか?」

「いや、なんでもないです」

「少し感傷に浸っていたんでしょう。ドラゴンを殺……倒したんだから」

師匠がそういう。

この人たちはある程度クエストに対する残酷さのようなものを持っているのだろう。

だから私も、少しは成長するべきだと思うのだった。

説明回はこのくらいにして日常回いきたい。

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