落ちてきた流星
ある日、世界で四つの流星が落ちた。
何か予兆があったわけでもない。いきなりそれは落ちた。
その流星はどこの町からも見ることが出来た。
旅人の交錯するこの町、ナリアミアにも。
ナリアミアの酒場、エキセントリックからもその流星は見えていた。
「そ、そんなことよりあれ見てみてください!」
その酒場で窓を見てその流星に気付いた少年がいた。
「ただの流星じゃない?……後で調査に行かされるかもね」
普通の旅人の服の大きいとは言い難い胸に輝くバッチをつける女がいた。
「それにしてはゆっくりではありませんか?」
ボロボロに汚れた高い服を着る豊満な胸の目立つ女がいた。
「わあ……すごい」
その流星をみて目を輝かせる幼女がいた。
「ハニー、君の瞳の方がきれいだよ」
流星を見ずに隣の幼女を口説く男がいた。
「……」
黒ずくめの服で一言もしゃべらずにワインを飲むいかつい男がいた。
「おいお前らーうちは天文台じゃないぞーさっさとこのさっき作った店主オリジナルジュースを飲め」
流星を見ずに色鮮やかなジュースを作るマイペースな店主がいた。
大きな流星は彼らを気にも留めず、地面に落ちた。
一つの星は一人の王が君臨し、人族しか住むことを許されない町、アイに。
一つの星は有力な商人が集団で政治をする海の近くの商人の町サチアリに。
一つの星は伝説と呼ばれる妖精族住む隠れた町ヤヘエクに。
そしてもう一つの星は。
***
目が覚めたら、そこは一面緑の草むらだった。
そこに一人横たわる私。
広く広く緑が続き、その先には森が円形状に覆っていた。
その広さ事。その静けさこと。まるでこの世界に私しかいないようだった。
風が音を立てて吹き、とても良い寝心地である。
二度寝した。
***
「この辺りかしら……」
「やれ、なんで君なんかと組まなきゃいけないんだい?」
「ロリコンは黙りなさい。ギルドの命令なんだからしょうがないでしょう?」
森の中、昨日に落ちた流星について調査をすることになった二人がいた。
「それにしてもずいぶん遠くにまで来たんじゃない?こんなところ来たことないわよ……」
貧乳で高名な魔道士である彼女が言う。
「誰が好きでこんなところに入ってくるんだ、まあ任務だから我慢したまえ」
ロリコンでまあまあ有名な冒険者である彼が言う。
彼ら二人は五本指に入るギルドの同僚であり、帰りに行きつけの酒場に行くくらいの仲は良い。ただ性癖の違いで恋仲になるとかは絶対にありえないのである。
「文句があるとかそういうのじゃないわよ。たださっきから大量の魔物を倒さなきゃいけないから面倒だって話」
「この森は弩級の危険地帯だからね。ハニーが『りゅーせーのあと!じゃありゅーせーのなみだをひろってきてちょうだい!』なんて言われなかったら僕も来てないよ」
「流星の涙って宝石の別名じゃない……この先その宝石があるって言うんだったら心も弾むかしらね」
「君も欲しいのかい?君の給料なら楽々買えると思うけど」
「どーせ宝石なんて買ってもいつも冒険服着ている私たちには関係ないでしょう?任務で貰えるんだったら欲しいってだけよ」
「あったとしてもギルドの収入行きだろうけどね」
と、その時大きな音を立てなにかが近づいてくることを察知した。
二人が立ち止り、その音を聞く。
「またオークかしら?」
「正解。良くわかったね?この僕より早く気付くだなんて」
「さっきからオークしか出てこないじゃない……さすがに肌の色までは分からないわよ?」
「肌の色は薄い青だ。そんなことよりオークと言えば最近町でオークと女騎士の物語が流行っているらしいよ?」
「町人はのんきねえ。町人からしてみればモンスターなんてそんなものと思っているのかもしれないけど……」
オークは彼と彼女の捕捉できる位置まで近づいた。まだ遠く離れていたが一般人の目でもはっきり見える一であった。
その大きさは三メートルにはいかないかもしれないがもはや巨人と言ってもいいほど。人間とは全く別種の動物である。
彼女は背中の入れ物から矢を取り出し今しがた作り出した光の弓に番える。
「さーてもう一仕事しますかね?」
「まだまだ仕事は残ってるけどね」
「どういうことかしら?」
「悲報だ。あと十匹くらい来てる」
「ありんこじゃないんだからもっと単独行動しなさいよっ!」
弓を引き終えた彼女は、光を込めた矢の照準を正確につけ。
手を放した。
矢を放ち終わった彼女の手から弓は消え、その矢の行方を見守っていた。
大きな音がする。
その光の矢は輝きを増しながら大量のオークと木々をを一度になぎ倒した。
その矢は森を抜け空に消えていった。
「全部倒したかしら?」
「さすが月下の帝国とまで呼ばれる君だ。脳筋戦法で全部なぎ倒すとは」
「その名前かっこ悪くて嫌いなんだからいうのやめてよ……隻眼の高貴さん?なにか他に見える?
「ん?この森の先は開けているみたいじゃないか」
「へえ……そんなところあったのね。この先に流星が落ちたのかしら」
「行ってみないとわからないね」
二人は光の矢によりぽっかり空いた穴を走る。
その先にあったのは開けた草むら。広く、広く続いていた。
「広いわね……そんで綺麗」
その広さに圧巻される二人。風は草むらをなびかせ、色が黄緑から濃い緑へと変わっていく。
「なにかある?」
「……あれは人か?」
「え?本当?……本当だ」
目を細めながら見るとその草むらのど真ん中に人影があるのを見つけることが出来た。
駆けだす彼女。それについていく彼。
そこに倒れていたのは、一人の少女だった。
***
「というわけで連れてきたのよ」
彼女は酒場に戻り店主にそう言った。
「ここは託児所じゃないぞ、元あった場所に戻してきなさい」
店主はそっけなくカクテルを作りながら答える。
「まあまあお父さん、ペットくらいいいじゃない。僕は良いと思うよ」
ロリコンこと彼は酒場のカウンター近くの椅子を動かしながら言った。
「そんなこと言っても……二人とも毎日世話できないわ」
カウンターの席に座っていたお姫様のような格好をする彼女は胸を揺らせながら諭した。
「でもおかーさん、わたしもいっしょにせわするから……」
同じくカウンターの席に座っていた幼女はオレンジジュースをカウンターに置きながら語った。
「駄目なものは駄目だ。そもそもお父さんは動物があまり……」
「何だこの茶番」
飽きれたように突っ込む貧乳魔道士。彼女は連れてきたまだ目覚めぬ少女を椅子を並べて寝かせた。
その少女は誰も見たことのないような恰好をしていた。
「まあ茶番は終わりにしてあげますわ。それならギルドで引き取ればいいと存じますが?」
「いや、この酒場に女性店員を増やしてあげてくれとさ。それに今いる行方不明者とも一致しなかったし身寄りもなさそうだし……」
「ねーろりこんさん、りゅーせーのなみだもってきた?」
「あめちゃんもってきたよーあーん」
「わーい」
「いきなり店員にしろっていわれてもなあ、この酒場の雰囲気にあうかどうか……そういやツッコミ担当は今日は来てないのか?」
「誰がツッコミ担当だよ……」
酒場の扉が開き、一人の少年が現れる。当然店主が言っていたツッコミ担当とは彼のことである。
慣れたもので彼は適当な椅子を引きずり話に入れる程度の場所に配置して座る。
「で、おっさんその少女はなんですか。まさか娘でもあるまいし」
「娘ならいるよ?冒険者になったらしいけど一度も来てくれないだよなあ」
「まじすか、冗談で言ったのに……どこから拾ってきたんですか」
「正真正銘実の息子だよ、嫁には先立たれちゃったけど」
酒場の窓から遠くを眺める店主その眼は特に悲しそうでもなかった。
「もしかしたらそのよめとむすめというものはくうそうじょうのものではないのでしょうか」
「ちなみにその娘と言うのは何歳くらいで?」
「そこのツッコミ担当と同じくらいだよ」
「ちっ」
彼のストライクゾーンは4歳から12歳までである。店主の言った彼はだいたい16歳くらいなので見送らなければいけないのであった。
「店主さん、もてないからって嘘をつくのはいけないと思いますわ」
「そんなことよりこの子のことは良いの?」
飽きれたような顔をして胸たいらが話を出す。
「それでこの子はなんなんです?俺話聞いてなかったんですが」
「じつはかくかくしかじかなのですわ」
省略。
「はあ……当人に許可をとれよ」
「そのあたりは脅し騙くらかしてだな……」
「てんしゅさんもろりこんだったの?」
「確かにそうですわ……うちには変態ペドがいるけどこのくらいの年齢だったら世間的にはロリの範疇にはいる」
「店主さん、あなたも同士だったのですね」
「おーい店主も店主だがこの店にこれ以上ロリコンが来られても困るんだよ」
「とにかく起きたらすこし試したいことがだな……」
と、その時。
「ん……ふぁ」
少女が起きた。
店主がそれを見て駆け出し、叫ぶ。
「おいマリア!こんなところで死んでどうするんだ!?君には故郷の夫がいるんだろ!?」
子芝居を始めたのであった。
少女は力なくめを開けこういう。
「ジョニーさん……私なんかにかまってちゃだめ……魔王バーンはすぐそこよ、グハッ!」
「マリー!駄目ですわ!魔王を倒すためにはあなたの力が……」
「おねえちゃん!」
「みんな……」
遠巻きから眺める貧乳とツッコミ。
「……全会一致で採用だろうな」
「目覚めた瞬間にあのノリについていけるあたり有望ね」
この酒場はとてもフリーダムだった。
ちゃんとギャグになってるか心配。