第10話 決闘
ずっと…ずっと耐え忍び修行に明け暮れ早5年の月日が経ったが、そろそろ限界だ
家の中でできることとできないことがある――大型魔術の練習だ
初級魔法の“火”の先の“炎”までは家の中でも上級魔法の“黒炎”の発動は師匠のもとでなら発動を許されている
他の上級魔法も人前では発動しないように言われてしまった なんでも上級魔法は殆どの人が覚えることができないらしい
悪い方に目立ちすぎてしまうのだそうだ
また、無属性魔法も幾つかできるようになって、主にテレポートやポート、アポートの3種が増えた
予め断っておくが、俺は約束事は絶対破らない主義だ
テレポートを使って家の外に出ることもできたが、約束だからな使用は家の中で誰も居ないところへの移動で修練度を上げた
初めて覚えた時は出れるぜひゃっほー!と思ったが、すぐに冷静になったね
バレたら洒落にならんしな!
その後ミーナにただのチキンですわねと言われたが俺は慎重なだけでチキンではない!
上級魔法は軽々覚えれたが問題は魔法以外の自衛手段だ
はじめは剣を使おうかと思ってたんだが、剣道とか全くしたこともないし、魔法使いだから剣持たないしな…
魔法使いが持っていてもおかしくない武器といえば…杖、か棒かな?
まぁ杖も棒も似たような感じだし、魔法使いと思ってきた相手に杖で攻撃してきたら相手も驚くだろうと思って毎朝120cmくらいの棒みたいな杖を持って素振りしてるわけだ
正直剣でやることを杖でやってるわけだからなぁ、じゃあ剣にしろよと言われてもしょうがないんだが、まぁいいだろ
明日で8歳になるわけだが、並みの8歳には負けない…と思うが、まわりがどんな感じかわからないまま鍛えていたからなぁ
村を走り回ってる方が体力もあるだろうし、毎日鍛錬は欠かせないよな
今年は勝負の年だからな、というのも貴族の子どもは9歳から学校にいくらしい
らしいというのも、師匠に聞いただけだからだ 両親に9歳から学校に行きたいというと
「俺に勝ってから言うんだな。お前が勝ったその時に考えよう。」
と父様が言っていた だから8歳の今年なのだ
自衛のための強さだからな 父様には申し訳ないが確実にかたせてもらうために色々仕込ませてもらうぜ
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明くる日、スキエの家の庭先にて
「では、決闘を始める。ルールは例年通り魔法使用不可で先に一本取ったほうが勝ちとする。双方用意はいいかの?」
「問題ない。」
「大丈夫です。」
「うむ、審判はワシ、アマナスが行う。アンチマジックフィールド展開!では…はじめ!」
始めの合図と同時に杖を両手に持ち父様からの攻撃を防御に専念する構えを取る
父様の武器はショートソード、長さではこちらが有利だからな、攻撃を放棄していれば何とか捌ききれる
いかに父様が強かろうと、いつか必ず隙はできし、疲労もする
疲労すれば動きは鈍くなり、反撃のチャンスも生まれるというものだ
去年は攻撃を考えながら防御していたのが反省点だと俺は思う
つまり穴熊戦法だな 去年と同じように戦うのならば
だが、俺は去年とは違うんだぜ?
「ふん、去年と同じだな。去年はそれでやられたのを覚えていないのか?」
「去年と違うところをみせますよ、父様。」
「おもしろい。見せてもらおうじゃない…か!」
喋り終わると同時に父様が突っ込んでくるが、狙い通り!
父様の戦法は基本的には殺られる前に殺るだ
確かに怒涛の攻撃の前では防御に専念するのも難しいだろう
が、しかし攻撃に入る前に攻撃をされたらどうするのだろうか?
そう、びっくりするよな?慌てるよな?方や慌てた状態、方や冷静に
そしてその結果が今の父様と俺の関係だ
「勝負ありじゃな。勝者!スキエ!」
遠くから見ていたアレットはなにが起きたのかわからなかった
一瞬アーロンがダッシュでスキエに向かったと思えばその場から本の2、3歩の場所で倒れこんでるではないか
「アマナスさん~一体どうなしてアーロンさんは倒れているんですか~?」
「ほっほ、アレットには見えんかったかのう。簡単に説明すると、超スピードでスキエはアーロンに向かい、棒で胸を一突きしたんじゃ。」
「さすが、師匠です。よく見えましたね。」
「ほっほ、誰の師匠じゃと思っとるんじゃ。仕込みはその杖かの?」
「はい。杖に“ジェット”を仕込んであります。アンチマジックシールドでも発動できるように中に魔水晶を入れてあります。」
「魔水晶なぞなにに使うのかと思ったら、それじゃったのか。」
「はい。これでジェットの力でアンチマジックフィールドから脱出するか、術者を倒し魔法を使えるようにします。」
「ふむ、見事な勝利じゃ。」
「ありがとうございます。師匠!」
そろそろスキエも忙しくなると思います。