真っ白い世界
俺は暗闇をふよふよ漂っていた。足元には冷たい母さんとチビがいて、冷たい目でただ俺をじっと見ていて…………
「うわぁぁぁあ!!!??」
「ふをぇぇぇぇ!!!??」
俺は大声を出して飛び起きた。そしたら隣にいた奴まで驚かせてしまったらしい。
「あれ、ここどこじゃ……?」
俺はいつの間にか白いベットの上にいた。全体が真っ白い部屋で、消毒液の臭いが鼻をつーんとさせる。そして目の前にはふわふわとした髪の毛をした小学生に見える男の子。
「ここは医務室だよ。肺や喉は痛くないですかにゃー?」
「あ?あぁ………あんまり……。」
そういえば、ずっと痛かった筈の肺や喉が、多少のズキズキはあるものの吐き気や殴られてるような強烈な痛みは感じられない。
「そうか!!いやーよかったよかった!それにしてもあの状況で助かってるなんて奇跡に近いにゃ!!」
バシンバシンと凄い力で背中を叩かれた。そのせいで肺が痛くなったが、ここは我慢するのが男ってもんさ。
「あ、あとルクナ医師がお話聞きたいって言ってたから呼んでくるにゃー!ちょい待っとれ!!」
ビシィッ!という効果音を自分で言って、奴は走って出ていった。
どっ……と溜まっていた疲れが一気に出てきた。あのハイテンションにもついていけないし、夢にチビと母さんが出てくるし…………。
「そうだ母さん……!!」
その瞬間ガラガラガラとドアが開いた。外からはあのハイテンション野郎と、真っ白な白衣を纏っていて、ベルトみたいなチョーカーつけてて、黒ぶちメガネをかけた男の人が入ってきた。
「はいはーい!!こちらがルクナ先生だにゃ!!気持ち悪い医師だよ!!」
「うっせぇくそが!!えぐるぞ!!」
バシィ!と頭を叩かれて、「はぁい……」とハイテンションな野郎はしょぼんとなった。
「改めまして初めまして。ルクナです。好きなことは解剖。嫌いなものは解剖できないものとピーマンです。」
「よろしく」とにこやかに出された手にはハサミが握られていた。
「うをぉあぶねぇ!!!なにハサミむけてんすか!!」
「いやぁだってあの状況で生き残った身体なんて興味深いじゃないか………?ねぇ………ちょっとだけえぐらせて………?だめぇ………?」
「ダメに決まってるにゃー!!」
あのハイテンションな野郎が止めに入ってくれたお陰で命は助かった。
ルクナって奴はメガネをかけ直し、「ゴホン」と咳払いをした。
「気を取り直して、君の名前を教えてくれるかい?」
「ま………真斗………だけど……」
「真斗か。じゃあ真斗。君は身体に何か異変が起きる前に、特殊な薬を飲まされていたとか、ウイルスなどに特別強い体質だったとか、そういう事はあったかい?」
「異変………?あぁいや、特にそういうのは………。風邪をひいたことがないって位しか……。」
「うーん………。家族に何かされたとか、特殊な場所にいたとか、少しでも変わった事はなかったかい?」
変わった事……?そう言われて俺は時間を遡って思い出してみた。
変わった事………変わった事………変わった事…………。
「あ!!!!」
「何か思い出したかい?」
「そいや俺、気絶する前に母さんに思いっきり抱きしめられました!!こーんなでかい体に頭ぶっ!!て押さえつけられて……息ができないくらいでしたよ!!」
身ぶり手振りで母さんの大きな体を表現した。そいや母さん、なんであんなことしやがったんだ?
「……………なるほど。君のお母さんは素晴らしいな。」
「は?なんでっすか」
ルクナの言ったことがよく分からない。今の話のどこでそう思ったんだか。
「きっとそれは、君にガスを吸わせない為だ。………うんうん。それで君のもともとウイルスに強い体質もあって助かったんだな。ほー、そういう事だったのかー。」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまって下さい?意味がわかんないっすよ?ちゃんと説明ぷりーずぷりーず。」