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ヒキコモリなのにアイドル  作者: ゆりや
鬼姫の憂鬱
12/19

さあ、お仕事へ行こう

ジリリリリリリリ


 いつもの目覚まし時計の音で目が覚める。ん、なんか布団が固い。手を伸ばして、いつものように目覚ましを止めようとするが、いつもの場所に目覚ましが無い。


ジリリリリリリリ


 アラームは鳴り続ける。そういえば、いつもより聞こえ方が少し小さいような。


 目覚まし時計はベットの枕元においてある。そうか、昨日は三心がそのままベットを占領したので、俺は諦めてソファーで寝たんだった。通りで、布団が固いわけだ。


 俺は身体を起こし、三心の寝ているベット付近へ近づいた。


ジリリリリリ リ


 目覚まし時計の上部分の出っ張りをポンと押し、音はようやく止まった。

 ベットの中の三心はいまだ目がさめる気配は無く、気持ちよさそうにすやすやと寝ている。結局朝まで泊まらせてしまったみたいだ。家への連絡などは大丈夫だったのであろうか。


「おい、起きろ」


 肩を叩き、声をかけてみるが、返事は無い。まあ、頭の上で大音量で目覚ましがなっていたのにも関わらず起きなかった三心だ。少し声をかけて起きるとは思ってはいなかった。

 しかし、彼も高校生とはいえ、アイドルという仕事をしている社会人。このまま寝させていては仕事に遅刻させてしまうかもしれない。それくらい管理しろと言いたいところだが、昨日話した彼の性格からすると、そこまで期待するのは酷な気がした。

 少し暴力をふるってでも起こすべきであろう。

 

 ゆさゆさと彼の身体を揺する。

 三心が起きる気配は全くない。


「これでもダメか」


 布団をめくりあげる。

 少し身体を丸めたが、そのまままた心地良い体勢を見つけたのか、起きてはこなかった。


「すまんな」


 謝りつつ、彼をベットから蹴飛ばす。ゴロゴロと気持ちいいくらいに転がり、三心は壁に激突した。


「いったぁー。なになに?何が起こったの?」


 頭を抑えながら、三心は起き上がる。俺を見つけると、あー、といいながらうんうんと頷いている。どうやらあのまま泊まったことを思い出したらしい。


「朝」


「えーありがとー。何時?」


「今6時30分」


「あー、よかった8時TOTOKOスタジオ集合なんだよね」


 8時にTOTOKOスタジオなら、俺の家から車で30分で着く。余裕で行けるだろう。


「シャワー借りるね~」


 そのまま、家主の許可無く、三心は風呂場に行ってしまった。芸能界の先輩とはいえ年上の家。最近知り合ったやつなのに、なんとも度胸があることだ。


 そういえば、彼は8時にTOTOKOスタジオといったか、なんとも聞き覚えがある。そういえばと思い、ふと昨日マネージャーから来たメールを確認すると、俺の携帯にも8時にTOTOKOスタジオの文字が。この偶然は、今日の仕事は三心と一緒の可能性は高い。しかし、いままで三心と単独で一緒に仕事などしたことがなかった。こんな偶然はあるものか。


 とりあえず、台所に立ち、朝ごはんの準備をする。それほど凝ったものを作る時間も無いので、簡単に卵と玉ねぎを炒めるチャーハンだ。食べるかどうかは分からないが三心の分も作り、ラップをかけておいた。

 そうこうしているうちに、三心がシャワーから上がったようだ。


「ありがとー」


「朝飯食ったらマネージャーに連絡いれといたら?俺も8時にTOTOKOスタジオいくから、俺のマネージャーに乗っけてもらったらいいだろ?」


「え!まじか。まさか一緒の仕事なのかな」


「かもな」

 

 何故か今度こそ負けねーと気合を入れている三心。また言っていると呆れながらも、俺も支度を整えるためにシャワーを浴びに行くことにした。




 ◇◆◇




 予定通りに7時30分に俺のマネージャーが迎えに来た。チャーハンを食べ終え、そのまま、また布団へ潜っていた三心を叩き起こす。


「おや、珍しい組み合わせだな」


 珍しい組み合わせもなにも、俺の家から三心以外の誰かが出てきたことなどないのだが。


「同じ仕事場らしい。一緒に送って行ってくれないか?」


「おー。いいぜ」


 マネージャーに頼むと快くオッケーがもらえた。いつも通りに後部座席に乗り込む。


「お願いしまーす」


 三心も俺の隣に乗り込んでくる。頭を下げ、遠慮がちに挨拶をしている。この遠慮が俺に対してもあったらいいのだが。

 しかし、車を出発させ、しばらく俺のマネージャーと会話を交わすとマネージャーの気さくさに慣れてきたのか三心も饒舌になってくる。


「お前のマネージャーゴリラみたいだな」


「聞こえてるぞ」


 一応、忠告したが、確かに姿形がゴリラに似ているのは否定出来ない。マネージャーは三心のゴリラ発言が聞こえていただろうが、ガッハッハと笑うばかりで注意はしない。「よく言われるぞ~」とか言い出す始末だ。


「今日、三心さんと仕事現場も時間も一緒なんだけど、今日何の撮影なの?」


 マネージャーに今日の撮影内容を聞いてみる。TOTOKOスタジオであることから、雑誌の撮影かなぁと予想はつけていたが、三心と一緒となるとまた音楽雑誌だろうか。


「おー今日しょっぱなはBiBiってファッション雑誌だぞー。」


「BiBiってまじか!すげー」


「うるせぇ」


 三心が車内にも関わらず大声で叫ぶ。そして俺に向かって、三心さんって俺に呼ばれるのが気持ち悪いから涼と呼べと言ってきた。昨日先輩だからとそれでキレてたのはもういいのだろうか。


「え。でもREIは分かるけど、俺もBiBi?まさかね~」


 BiBiはファッション誌の中でも20代前半から後半にかけてをターゲットとしている少し大人の女性目当てで売り出しているものだ。三心のイメージとはかけ離れている。


「確かそうだったと思うよ」


 事務所が一緒なため、MOONLIGHT付きのマネージャーでもある程度他のチームのスケジュールも知っているようだ。


「まじかぁ。ああ、緊張してきた」


「どうせガキ枠だろ」


「ガキじゃねえし、彼氏にしたいアイドルNO1三心涼。っとかいう特集だ」


「あほか」


「がはは、REIがこんな喋ってるの始めて聞くなぁ、仲いいなお前ら」


「仲良くねぇ」


 すかさず三心が、マネージャーに向けて、REIとはライバルだ勝負だなんだかんだの説明を始めて、またマネージャーは豪快に笑っている。

 このマネージャーはMOONLIGHTが結成されすぐチームにつけられたマネージャーなので、半年近い付き合いになるのだが、これほど話をしたのは始めてかもしれない。





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