#10
卒業してから数日後のある日、親と共に説明会に出ています。
何の説明会かと言うと…
先生「えー。お集まりありがとうございます。今から風間中学通信科入学説明会を始めたいと思います。では、資料に目を通してもらっていると思いますが…」といいことで、中学の説明会です。
学校としては、普通科に移動して欲しいらしいですね。通信科の人数が少ない方が学校の評価も上がりますしね。
さてはて、どうしたものか。遠矢君には同世代の(私以外の)友達をつくって欲しいんですよ。色々な人とふれあってこそ世界が広がって楽しいことが多くなりますから。そろそろ私も、遠矢君に頼らない生活を。遠矢君離れしないとダメですしね~。
でも、学校生活。特に集団生活が嫌いな私にとっては、ストレスになる可能性がある場所には近寄りたくない。このまま、小物作りしながら生活していっても良いかな?と思っていたりするんですよ。そうすると遠矢君だけ普通科を
「行かないからね。春佳が行かなかったら」と人の思考を読んだかのようなツッコミが隣に居る遠矢君から…
「何で?友達が沢山できるよ?色んな世界が広がっているのに、一つに固執していいの?それって、君の遠矢君の為にならないよ?」と聞いてみると
「それでも」と手を握ってくれる優しい遠矢君
「私は大丈夫だよ。一人で平気。わかってるよね?外は怖いかもしれないけど、歩いてみたら?色んな事がある。それが遠矢君の力になるって思うし、力に出来るって信じてるよ。何も全てじゃない。たかが数時間じゃない。私が居なくても頑張れるって、私も遠矢君が居なくても頑張ってみるから」ねっと顔を見るとどうするか思案気味。
多分というか絶対に同世代の友達が欲しいだろう遠矢君。もう1押しかしら?
「そんなに心配ならお守り作る?私が危なかったり遠矢君が危なかったりしたらお互いに解るやつ」と聞いてみると頷く遠矢君。
「それなら離れていても大丈夫だよね」と親に聞いてみると
「そうよね。それなら安心だよね」と頷いている。
「遠矢。それなら安心して普通科に変更できるよな?」と叔父。
遠矢君の両親は、出来れば普通科に通って欲しいのだろう揺らぎ始めた遠矢君を説得し始める。
そんなことを想定しているのか学校側が「家族でご相談されたい方は」と別室を用意していた。それを聞き移動する数組の家族。それを見ていると「春佳はいいの」とお母さん
「いや。知っている通り集団が嫌いなんですよ。何を好んで自ら殴られたり恐喝されたりする場所に行かねばならないのでしょうか?私はそう言う趣味趣向は無いですよ」と笑うと絶句している両親
「遠矢君は…」
「彼は大丈夫。いじめられないし虐められたらやり返しますよ。ま、そんなことをされそうになったら介入するでしょ親が」と大丈夫。大丈夫と言い安心させる。
「春佳がそうなっても介入するよ?いってみれば?」と進められるも頑として首を降らない私。
だって面倒臭いじゃん学校ってさ。些細なことで揚げ足とる餓鬼達がいて。あんな狭い世界で優劣競って暴力沙汰なんて体力と精神の無駄遣いじゃね?と言うのが私の持論ですから。
そんなことを言う私を見て「昔とは違う出会いがあるかもよ?」と言い募る両親。今も昔も学校に良い記憶無いんだよね~と眉間に皺を寄せながら昔の記憶を思い出す
「学校か~。昔の記憶で悪いんだけどね。中学・高校に夢を抱いて行ったさ。蓋を開けたら言葉尻を弄られてしかも、授業中には消しゴムが後ろから集中豪雨。プリントは私のみ配布されず、それを学年担当に言ったら“ああそう?”でおわり。極めつけには、貴ちゃんが対象になって荷物を隠されたり?で、不登校になったらなったで、言われると。一度食ってかかったら“私が”指導を受けたんだっけ。あと、死ね死ね言われたから死んでやるから刃物持ってこいやって騒いでも無関心だったね~。せっかく目の前でやったのに。高校の時はストレスでリスカ。分かりやすく言えば自傷行為で手首ボロボロだったね」と懐かしがっていると手首を捕まれた。
「今じゃない。昔の記憶。だから学校行かない」と笑うと両方から抱き締められた。
「だから」
「今じゃなくても、痛かっただろうし苦しかったでしょ?現に今だって」と涙を掬われてしまう。
私の蓄積記憶。この体では体験していないけど“私”は体験している。それを癒そうとしてくれる両親には感謝するしかない。
「ありがとう。でも、忍耐強くなったよ?」と笑うとそっかと抱擁をといて撫で撫でしてくれる。
「で、どうなったの?」と両親とラブラブしていた間に帰ってきた遠矢君家族に聞いたら「普通科で頑張ってみる」との答えが。うん。いいことだ。
「ダメなら。変更できるから無理しないでね」とエールを送り説明会を終える。
遠矢君は家族会議がまだあると言うことなので、両親と帰宅。
私は両親と別れて“自分の家”に帰宅となる