第29話・新学期!
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夏休みの間…俺は随分と変わった様な気がする。
先ず身長が伸びた…。
更に声も変わった。
そして…何より変わった事…。
それは、天野晶さんと…世間一般で言う所の恋人同士っていう関係になった事だ…。
正直、余りピンと来ないんだ…。
自分の死を悲しませない為に他人と、深く付き合わず今まで生きて来た。
でも…晶さんは俺に教えてくれた…。
こんな…人殺しの俺を…その…好きだと、言ってくれた…。
こんな…俺を受け入れて包み込んでくれた晶さんの事が…。
晶さんの事が好きだ…。
夏休みの間…俺は、ゼクロスのメンバーに正式に登録され皆と、共に鍛練した。
何故かは知らないが戦闘講師となった俺は、皆に俺の持つ戦闘技術を叩き込む様に大悟さんに言われた時は驚いた。
正直、言うと…。余りのレベルの低さに眩暈が、したのは内緒だ(笑)
よく今日まで生き延びたものだ…。
徹底的に鍛えてやったがな…。
口々に、文句を言う皆に俺は言った。
総一郎
『鬼や悪魔で結構だ…。俺は、お前達を死なせない為なら鬼にでも悪魔にでも、なってやる…』
そう言うと皆、何故か?固まり顔を背けられて、俺は首を傾げた。
その後は文句を言う事も無くなったが何故か俺と組み手をしたがるし…。
晶さんと恋人同士になった事で視野が広がり更に命の大切さを思い知らされた…。
っと…ボンヤリ回想している暇は無いな…。
今日は9月1日。
そう…今日から又…学校が始まる…。
身長が急激に伸びた為、制服を亜依さんが何時の間にか用意してくれていた…。
制服に着替え財布と携帯電話、ソウルクリスタルを持ち電気、ガス、水道戸締まりを確認して家を出た。
実は、俺の家は青嵐学院高校から結構、近い。
徒歩10分程の距離なので、ギリギリ出ても間に合う。
オートロックを外し外に出た瞬間、固まる。
晶
『………』
マンションの直ぐ近くの公園のベンチに腰かけて小説を読んでる晶さんが居たからだ…。
銀色の髪が朝日を浴びてキラキラ輝き数秒見惚れる…。
すると…視線を感じたのか?
彼女は顔を上げ俺を見た瞬間、何時もの無表情が嘘の様に…。
華が咲いた様な笑顔を、俺に向けて言った。
晶
『おはよう…』
総一郎
『っ!お…おはようございます…』
俺は晶さんの笑顔を直視出来ず視線を、少しだけずらし挨拶した。
彼女の通学路の途中なので、新学期が始まったら一緒に学校に行きたいと晶さんの方から、言われ俺が快諾。
晶
『どうかしたの?』
晶さんは、穏やかな瞳をこちらに向ける。
総一郎
『いや…何でもありませんよ…学校に行きましょうか?晶さ…いや…天野さん…』
危うく晶さんを、名前で呼び掛けそうになる…。
晶
『………』
何故か微妙に悲しそうな瞳をする晶さんに、首を傾げる。
しかし…直ぐに晶さんが何故悲しそうにするのか理由が分かったものの…こればかりは…どうしようも無い事だ…。
総一郎
『すみません…』
しかし…幾らどうしようも無い事でも彼女を傷付けてしまった事に変わりは無い…。
謝る俺に晶さんは微かに驚いた表情をしたが…。
晶
『うん…。大丈夫だよ…総…ううん…井上君…』
総一郎
『何か…昨日まで名前で呼んでたから苗字で呼ぶのに違和感が…』
晶
『そうね…でも…』
総一郎
『でも?』
晶
『私は貴方が居てくれたら…それで…』
晶さんは微かに頬を赤く染めて言うから…。
総一郎
『うぐぅ…』
俺まで赤面したのは言うまでもない…。
俺と晶さんは世間話しを しながら登校して居るんだけど…。
晶
『井上君…何だか私達…注目されてる?』
総一郎
『天野さんも…気付いてましたか…どうしたんでしょうね?』
晶
『さあ?』
総一郎
『ううん〜。まあ…考えても仕方ないですし…。早く行きましょう…』
晶
『そうね…』
俺と晶さんは靴箱に向かって居ると…。
総一郎
『やっぱり視線を感じるんだが…』
晶
『そうね…』
擦れ違う男子や女子が、何故か俺や晶さんをチラチラ見てる…。
おや?あの後ろ姿は河野先輩だな…。
俺と晶さんは河野先輩に近付き挨拶する。
晶
『おはようございます…河野さん…』
総一郎
『おはようございます〜河野先輩…』
舞
『ああ…おはよ…えっ?何?えっ?貴方…誰?』
河野先輩は振り返り俺と晶さんに、挨拶しかけて俺を指差し聞いてくる。
晶
『河野さん?』
晶さんは怪訝そうな表情をして河野先輩を見る。
総一郎
『あの…河野先輩?何を言ってるんですか?』
舞
『いや…本当に貴方は、誰?』
おかしい…幾ら河野先輩といえど…これは有り得ない…。
もしや…本気で俺が分からないのか?
総一郎
『俺ですよ…井上総一郎ですよ…』
舞
『はい?』
晶
『河野さん…。この人は貴方の知ってる井上総一郎君…』
舞
『…………えっ?嘘ぉ!ええ!何で?だって…。井上君なの?』
んっ?何故…そんなに、驚いてるんだろう…。
総一郎
『河野先輩…本気で分からなかったんですか?』
舞
『ぽ〜!はっ!え?何?何か言った?』
晶
『………』
何か…晶さんの機嫌が、微妙に悪い様な?
総一郎
『そんなに変わりましたか?まあ…僅か一月程で背も伸びたし声変わりもしましたが…』
舞
『いやいや…変わり過ぎでしょ!』
ビシ!っという様な効果音がピッタリのツッコミを入れられた。
総一郎
『う〜ん…自分では良く分からないんですが…』
晶
『………鈍感…』
総一郎
『あの?天野さん?何か言いました?』
晶
『何も言って無い…』
だから…何故不機嫌そうな表情で言うんですか?
舞
『あの…。本当に井上君なの?』
総一郎
『全く…。本当ですよ…ってか…そろそろチャイムが、鳴りますね…それじゃ又…』
そう言って未だに微妙に不機嫌な晶さんに、振り返り言った。
総一郎
『天野さん…早く行きましょう…遅刻すると田辺先生が煩いし…』
晶
『あっ…うん…』
あれ?さっきまで微妙に不機嫌そうだったのに…今は微妙に、嬉しそうだな?
考えても、分からないし気にする必要も無さそうだ…。
河野先輩がジッ!と俺の背中を、見てるのに全く気付かなかった…。
ガラガラ!
俺と晶さんが教室に入った瞬間…。
何故か、ざわつくクラスメイト達。
まさか…このパターンはさっきと同じか?
俺は先手を打つ!
総一郎
『僕は井上総一郎だからな?転校性でも、不審者でも無いぞ…』
その瞬間…。
クラスメイト全員
『ええええええええ!』
教室の窓が割れてもおかしくない様な叫び声を、上げるクラスメイト達に呆れながら晶さんは言った。
晶
『驚き過ぎ…』
総一郎
『全く…何なんですか?一月半、見なかっただけで僕は忘れ去られる様なチッポケな存在ですか…そうですか…』
うなだれる俺に晶さんは励ます様に、ポンポンと左肩を叩き言った。
晶
『大丈夫…(私にとって貴方はチッポケな存在なんかじゃないから…)』
っと、ポツリと俺にしか聞こえない様に言われて一瞬固まる。
深雪
『皆〜おはよ…ってか…アンタ…もしかして総一郎?』
総一郎
『もしかして…僕が分かるんですか?』
深雪
『ええ…。ちょっと自信無かったけど…』
総一郎
『ありがとう!俺と会う殆どの人間が俺だと気付かなかったから!』
俺は、感動の余り一之瀬さんに詰め寄る…。
深雪
『うっ///』
総一郎
『?』
深雪
『まあ…何て言うかさ…その…背も伸びてるし…声とかも変わってるから一瞬、誰だか分からなかったけどね…』
何故か一之瀬さんはチラチラこちらを見てるが…どうしたんだろう?
晶
『………』
此処から晶視点に変わります。
私は総一郎君の鈍感さに呆れ半分怒り半分…。
一之瀬さんだけじゃなくクラスメイトの女子が、総一郎君をチラチラ見ているのに、彼は全く気付いて無いわね…。
総一郎君は気付いて無いけど…総一郎君は益々、恰好良くなっている。
だから…注目されるのは当然…。
正直、余り良い気分じゃない…。
でも…総一郎君の本当の姿を知ってるのは、この中では私だけ…。
一之瀬さんも、知らない事を知っている…。
優越感を感じる…。
私は歪んでるのかも…。
ちょっと…へこむ…。
晶
『………』
私は、無言のまま総一郎君を見つめる。
背が、随分と高くなって声もシャドウブレードの時の声に似て来た。
少年から青年へと変化し始め精悍な顔付きに変わってる…。
相変わらず、ニコニコと作り笑いをする総一郎君に全く気付かないクラスメイトや幼なじみの一之瀬さん…。
やっぱり一之瀬さんは…総一郎君の事を何も分かってない…。
総一郎
『あの〜天野さん?早くしないとチャイムが鳴るよ?』
その言葉に、私は無言で頷き授業の準備を、始め一之瀬さんが怪訝そうな表情をして居る事に気付かない振りをする。
私にとって一之瀬さんが何を考えて居ようと何の関係も無い…。
正直言ってしまえば私は一之瀬深雪という人物を余り好意的には、見ては居ない…。
何故なら彼女は総一郎君を無意識の内に傷付けて居るから…。
彼女は総一郎君にとって大切な幼なじみであり…護らねば、ならない人の一人。
その事に関して私は…。とやかく言わない。
でも…総一郎君を傷付ける言動だけは許せない…総一郎君の思いを知ってからは特に…。
だから…私は一之瀬深雪という人物を余り好意的には見ては居ない…。
此処から深雪視点に変わります。
私は先ず驚いた…。
総一郎の身長が、かなり高くなっている事に…。
声もシャドウブレードに似て居る…。
そして何より驚いたのは総一郎が、他の人に声を掛けた事だ…。
総一郎は…どちらかと、言うと、余り他人に声を掛けたりしない…。
声を、掛けられたら話すけど基本的に総一郎から話し掛けるのは少ない。
少ないと言うよりも…。総一郎のお父さんが亡くなってからの6年間…。
総一郎が他人に話し掛けるのを見たのは数える程しか知らない…。
天野さんに、声を掛けた時に見せた笑顔と声は、私を含めたクラスメイト達に、見せる笑顔と声が違った様な気がする…。
それに天野さんも変わった気がする…。
基本的に夏休み前と変わらない無表情だけど…。
何だか、良く分からないけど変わった様な気が、する…。
それが何なのかは分からないけど…。
晶
『一之瀬さん?私の顔に何か?』
何時もの無表情で、私に問う天野さんに…。
深雪
『ううん…何でも…』
晶
『そう…』
それだけ言うと天野さんは私から視線を外し授業の準備を再開。
私は何故か溜息を漏らした…。
此処から総一郎視点に、変わります。
キ〜ン!コ〜ン!カ〜ンコ〜ン!
っと、学校のお馴染みの音が響いて待ちに待った昼休みだ…。
俺は一先ず購買へ向かいクリームパン、カツサンドに牛乳を購入し屋上へ向かう…。
屋上の扉を、開くと既に天野さんが待っていた。
俺は微かに驚きそれ以上に喜んでいる自分に気付く…。
総一郎
『早いね…晶さん…』
今は誰も居ない…だから苗字では無く名前で呼ぶと…。
晶さんは振り返り笑顔で言った。
晶
『そんな事無いよ…総一郎君…』
俺は、ふと晶さんの手に二つの袋がある事に気付いた。
総一郎
『晶さんって…確か…』
弁当持参だよな…っと、言う前に晶さんは微かに頬を赤く染めて言った。
晶
『あの…これ…』
晶さんは、青い袋を俺に突き出す。
総一郎
『???』
晶さんの意図が分からず首を傾げる俺に晶さんは珍しくモジモジしながら言った。
晶
『あの…これ…貴方に…その…』
総一郎
『っ!』
今、やっと気付いた…。
今が昼休みである事…。
晶さんが弁当持参である事…。
そして…袋が二つ…。
そこから、導き出される答えは一つしか思い浮かばない…。
総一郎
『もしかして…コレってその…俺の為に…作って来てくれたの?』
そう言うと晶さんは恥ずかしそうに頷いた…。
そこで晶さんは俺が既に購買で何か買って来たのに気付いた…。
晶
『あの…』
総一郎
『いや…コレは後で食べる…こんなのより晶さんが作ってくれた弁当の方が良い…』
今、絶対に晶さんはこう思った筈だ…。
何か買ってるなら弁当は要らないんじゃ…。
晶さんは優しい人だからね…。
総一郎
『まさか…俺の為に弁当を作ってくれるなんて…思わなかったよ…』
俺は晶さん作のお弁当を大事に抱え込む。
晶
『本当に良いの?』
総一郎
『大丈夫ですよ…俺って結構、食べますし…』
晶
『そう…』
総一郎
『じゃあ…食べましょうか?』
晶
『そうね…』
総一郎&晶
『戴きます…』
俺は、ドキドキしながらお弁当箱を開ける…。
総一郎
『おお…凄い…』
きちんとバランスの考えられたオカズに、御飯の分量も俺好みだ…。
晶
『………』
ふむ…先ずは玉子焼きから…。
パクリ!
総一郎
『うっ…』
俺は…俺は余りの衝撃に固まる…。
晶
『あの…総一郎君?』
不安げに見守る晶さんに俺は言った…。
総一郎
『うっ…美味い…』
晶
『あっ…』
総一郎
『凄いな…晶さん…料理の才能あるよ…』
晶
『ちょ//誉め過ぎだよ…総一郎君///』
赤くなってオロオロする晶さんは反則なまでに…可愛い…。
総一郎
『いや…モグモグ…これは…ガツガツ!本当に!美味いよ…』
夢中になって食べる俺を静かに見つめる晶さんは始終笑顔だった…。
総一郎
『はふぅ〜ご馳走様でした…』
晶
『お粗末様でした…』
俺と晶さんは屋上でボンヤリとする…。
穏やかな日常…こんな日が何時までも続けば良いのに…。
言葉にはしなくても…。
俺と晶さんの今の気持ちは一緒だと思う…。
総一郎
『晶さん…』
晶
『何?』
総一郎
『ありがとう…』
俺は色々な意味を込めて晶さんに御礼を言った。
晶
『こちらこそ…。ありがとう…総一郎君…』
総一郎
『っ!』
晶さんの笑顔は反則だ…直視出来ない…。
何時も無表情の晶さんが笑うと思わず抱きしめたくなる可愛さがある…。
晶
『何?』
総一郎
『いえ…何でもありません…』
晶
『そう…』
微かに首を傾げる晶さんに俺は思う…。
この人だけは絶対に護り続けると…。
総一郎
『あっ…』
俺は今、大変な事に気付いた。
晶
『何?』
総一郎
『次の授業…体育だ…』
晶
『あっ…』
青嵐学院高校では体育の時間の際、女子は更衣室に、行かなくてはならない…。
晶
『すっかり忘れてた…』
総一郎
『早く行きましょう!』
晶
『ええ!』
俺と晶さんは慌ててお弁当箱を片付け教室へ向かったのは、言うまでもないな(苦笑)
次回予告!付き合いだした総一郎と晶…ゼクロスメンバーとの交流…総一郎にとって護るべき者が増え益々、気合いが入る総一郎(笑)