第24話・少年の思い。
今回は、シリアスになる予定だったんですが…。何だかラブコメになった気が(苦笑)
私は井上君に連れられて井上君の家へ。
総一郎
『そう言えば…。初めてだな…他人を家に呼ぶのは…』
そんな、井上君の言葉に私は嬉しくなる。
晶
『そうなの?』
私の問いに井上君は苦笑しながらも、ハッキリと言った。
総一郎
『ああ…。初めてだよ…何か緊張するな…』
そう言いながら、マンションのオートロックを、外しエレベーターへ。
その間、私と井上君は、無言だったけど手は繋いだままだ…。
エレベーターを降り井上君は無言のまま歩く。
そして、1番奥の部屋の前で立ち止まりポケットから、鍵を取り出し鍵を開けると井上君はスッと私の手を離した。
総一郎
『どうぞ…』
そう言いつつ井上君は、ドアを開け中へ。
晶
『おっ…お邪魔します』
私は緊張しつつも靴を、脱ぎ井上君の部屋へ。
これが…井上君の家なんだ…。
私はキョロキョロと部屋を見渡す。
そんな私を見て井上君が苦笑しながら…。
総一郎
『まあ…。適当に座って待っててくれ…今、飲み物持ってくるから…』
そう言うと井上君は奥の部屋へ。
私は、ふと壁に貼付けてある写真を見る。
柔和な笑顔を、浮かべた女の人と井上君そっくりの男の人、その間に立つ小さな男の子がVサインをしながら写ってる写真だった。
晶
『もしかして…井上君の家族の写真?』
そこで、ふと横を見ると仏壇に写っていた写真の女の人と男の人の遺影を見て私は愕然とした。
井上君は…もしかして、御両親が…。
そういえば結構前に風邪を引いた私のお見舞いに来てくれた時、私の両親を見て一瞬、切なそうな表情を浮かべたのを思いだし私は悲しくなった。
こんな広い部屋で一人っきりで生活してるの?
総一郎
『アクエリアスしか無かった…って、どうしたんだ?何か泣きそうだぞ?何か合ったのか?』
井上君は私の様子に首を傾げつつ、ジュースを、持って来ながら言った。
晶
『あの…井上君の御両親は…』
総一郎
『ああ…。母さんは俺を産んで5年後、亡くなって6年前、父さんは病気で亡くなった…。その後マスターの家でお世話になってたが一年前に家を出て一人暮らしだ…』
あっさりと、言いながら井上君はアクエリアスを私に手渡すと私と正面に座って言葉を紡ぐ。
総一郎
『天野さん…前に大事な話しがあると言ったの…覚えてますか?』
晶
『ええ…覚えているわ』
頷く私に井上君は真剣な表情のまま話し始めた…
総一郎
『もう…知ってると思うが…俺は人殺しだ…例えそれが…。どうしようも無い事だとしても…』
私は黙って井上君の言葉を聞く。
総一郎
『だから…俺は、ずっと自分なんて死んでも良いと思ってた…』
悲しそうに笑う井上君に私はグッ!っと拳を握り締める。
総一郎
『人を殺しておいて自分だけ生きようとか幸せになるとか…。そんな自分勝手な考えを、否定していた…』
井上君の独白に私は何も言わず、ただ黙って耳を傾ける。
総一郎
『でも…。クリムゾン・ヘッドとの戦いで、生まれて始めて死にかけて…その時、天野さん…君の顔が脳裏に過ぎった…』
優しく笑いながら、言う井上君に私は体が震え出した。
総一郎
『その時、気付いた…。天野さんが好きなんだとね…』
晶
『っ!』
頭が真っ白になって呆然とする私に井上君は微笑んだまま更に言葉を続ける…。
総一郎
『この事を君には、一生言うつもりは無かった…だけど…もう君を傷付けたく無いし…。君に嘘をつきたくない!』
晶
『井上君…』
井上君は、照れながらも私の瞳を見て言った。
総一郎
『俺は天野さん…君が…好きだ…ずっと側に…』
もう…限界だ…私は井上君に抱き着いた。
力一杯井上君を抱きしめ井上君の胸に、顔を埋める。
井上君は一瞬、体を震わせたけど井上君は優しく私の背中に、腕を回して私の頭を撫でる。
私は嬉し過ぎて泣き出してしまった。
総一郎
『っ!天野さん…泣かないでくれ…。好きな人に泣かれたら…どうしたら良いのか分からない…』
晶
『ヒック!い…井上君…うう…井上君!井上君!好き…ヒック!大好き!井上君…井上君!』
此処から総一郎視点に、変わります。
鳴咽を、漏らしながらも好きだと、言ってくれる天野さんに気恥ずかしさと、嬉しさが込み上げて来る。
総一郎
『天野さん…泣かないで天野さん…』
俺は堪らず、そっと天野さんの涙を拭うと、天野さんは益々、泣き出してしまった。
俺は泣いている天野さんを幼子の様に、あやしながら思う。
きっと父さんも母さんにこんな思いを抱いたのだと…。
柔らかくて暖かくて抱きしめたら俺の腕が余る程に華奢な天野さん。
俺は、押さえ付けて居た天野さんへの思いが急激に、溢れ出して行くのが分かり焦る。
このまま彼女を押し倒してしまいたい…。
そんな思いを何とか理性が辛うじて抑えて居るがかなり危険だ…。
このままでは絶対ヤバイって!
総一郎
『あの…天野さん?』
晶
『何?』
漸く泣き止んだ天野さんが、俺の胸に顔を埋めたまま問う。
総一郎
『出来れば…』
離してくれるかなと言う前に天野さんは俺の考えを読んでいたのか?
拗ねた様に一言。
晶
『嫌…』
総一郎
『天野さん?あの…』
離して下さい、と言う前に…。
晶
『やっ!』
っと幼稚園児の様な天野さんの返事に焦りながら言った。
総一郎
『あの…本当に離して…下さい…』
晶
『井上君は私の事…嫌いなんだ…』
上目使いで某金融CMに出て来るチワワも、ビックリの潤んだ瞳で見つめて来る天野さんに、俺は、しどろもどろに、なりながら言った。
総一郎
『いや…その…嫌いな訳無いじゃないか…』
晶
『本当?』
潤んだ瞳のまま問う天野さんに俺は頷いた。
その瞬間、華が咲いた様な満面の笑顔を浮かべる天野さんに俺は、そっと天野さんの両頬を両手で押さえて顔を近付ける。
俺が、何をしようとしているのか?
察した天野さんは一瞬、驚いた表情を浮かべたものの、抵抗する様子さえ見せず瞳を閉じる。
頬を、赤く染め緊張しているのか?
天野さんは、微かに体を震わせながら呼吸を完全に、止めている。
そして…俺と天野さんの唇が、触れ合おうとした瞬間、まるで謀った様なタイミングで…。
♪〜♪♪♪〜♪〜♪♪!
はい!お約束!俺は天野さんと、抱き合ってなければ飛び上がる程、驚いていただろう…。
心臓が止まるかと思う程驚いた。
晶
『………ジ〜………』
俺の携帯から流れる着歌が部屋に響く中、何故か不機嫌な表情をして俺の顔を無言で、ガン見する天野さん。
視線がビームの様に俺の顔に突き刺さる。
そんなに見たら穴がホゲるよ?天野さん?
因みに『ホゲる』っとは何処かの方言で、あくと言う意味らしい…。
はい!目茶苦茶どうでも良い知識!
総一郎
『あの〜天野さん…電話鳴ってるんで、取っても良いですか?』
無言で、ガン見してくる天野さんに恐る恐る問い掛けると…。
無言でプイっと横を向き頬を膨らませる。
その様子に俺は苦笑しつつも、そんな天野さんが可愛いと思うのは可笑しいだろうか?
うん…きっと今、俺は…可笑しくなってるんだろうな…。
総一郎
『はい…もしもし…』
俺は天野さんの頭を撫でながら片手で器用に携帯電話を使う。
亜依
『総一郎君?未だ掛かりそうなの?病院は?』
晶
『っ!』
亜依さんの言葉に、天野さんは弾かれた様な動きをして、こちらを見る。
総一郎
『ええ…ちょっと検査に時間が掛かるそうなんですみませんが亜依さん…明日でも良いですか?』
亜依
『それなら仕方ないわ…じゃあ…明日は必ず来てね…。晶ちゃんと一緒にね♪』
ハイ?イマ…ナントオシャイマシタカ?
無言で固まる俺に亜依さんは笑いながら言った。
亜依
『あらあら♪今、晶ちゃんと一緒でしょ?総一郎君♪』
総一郎
『なっ!何を根拠に…そんな事を!』
ちっ!しまった!焦って吃った!これじゃ肯定したのも同然じゃないか!
きっと今の俺は顔面蒼白だな…。
亜依
『うふふふ♪あ・し・たしっ…かりと、聞かせて貰うわね♪総一郎君♪』
うわぁ〜亜依さん楽しそうですね〜行きたくねぇ本気で行きたくねぇ〜。
変な汗を垂らしながら…
総一郎
『あの…』
それは無理ですと言う前に亜依さんは笑いながら言った。
亜依
『因みに、ブッチしたらさっきの総一郎君と晶ちゃん主演のラブ♪ストーリー♪の一部始終を納めたビデオテープを、青嵐学院高校の生徒集会で、大画面のパノラマで放映するから♪』
総一郎
『ちょ!ラブストーリーって!て言うか…見てたんですか!それにビデオカメラで、写してたんかい!』
ビシ!っと、ツッコミを入れつつヤバイ…。目茶苦茶、恥ずかしいんですけど!
正直に言おう…穴があったら入りたい…。
亜依
『じゃあね♪』
ご機嫌な声音で、電話を切られて、うなだれる。
まあ…。あんな人通りの多い所であんな事をしてたら、そりゃあ見られるわな(汗)
っ!待てよ…まさか…。いや…無い!無い!
そんな事は無い…筈だ…多分…。
しかし…そんな俺を嘲笑う様に鳴り響く携帯!
♪〜♪〜♪♪〜♪♪!
携帯電話が、鳴ってるのだが電話に出るな…何故かは、分からないが俺の本能が教えてくれる…。
って言うか…この展開は有りがち過ぎるだろ!
出たら…死ぬ様な気がする…。
主に俺の精神と学校での立場が…。
未だに鳴り続ける携帯と相変わらず不機嫌そうな表情をして、俺を無言でガン見してる天野さん。
だから…そんなにガン見しないで下さい…。
晶
『電話に出ないの?』
不機嫌そうな表情のままこれまた、不機嫌そうな声で問う天野さん。
総一郎
『ああ…何故かは分からないが俺の本能が教えてくれる…この電話に出たら、俺の精神と学校での立場が死ぬとね…』
そう言いつつ俺は携帯の画面を見ると田中からの着信…。
はい!死亡確定!
げんなりする俺を、見て天野さんは、心配そうな表情をして見る。
晶
『どうかしたの?』
総一郎
『いや…。何でもないんだ…それより離れてくれないかな?』
晶
『嫌!』
1秒も掛からず即答!
絶対、離さないと言わんばかりに抱きしめる力を強くする。
いや…あのですね…天野さん?正面から抱き着かれるとですね…。
貴女の…そのぅ…。アレがね?押し付けられるんですよ…。
天野さんって、やっぱり胸…ゴホン!ゴホン!
今のは失言だ…妄言だ…戯言だ…読者の方もスルーする事をオススメするよ…。
って言うかスルーして!お願いだからスルーして下さい!お願いします!
総一郎
『天野さん…お願いします…離して下さい…』
そう言って、優しく天野さんの腕を解く。
晶
『っ!』
もの凄く傷付いた表情をする天野さんに罪悪感で死にそうになりながらも言う事がある…、
此処から晶視点に変わります。
井上君は、私の腕を外し真剣な表情をする。
私は、ウザがられたのだろうか?っと思い寒気がした。
井上君に嫌われたら…。
そう思うだけで、恐怖で体が震え自然と涙が零れそうになる…。
しかし…。井上君は私の予想を斜め上を行く言葉をくれた。
総一郎
『あのね…。はっきりと言わせて貰うけど俺だって男なんです…好きな人に抱き着かれて嫌な訳が無い…。だけどね?天野さん…』
そう言って一旦、言葉を切り恥ずかしそうにしながらも井上君は更に言葉を続ける。
総一郎
『理性がね…。ブチ切れそうになるんだよ…』
晶
『っ!』
私は絶句してしまい井上君の言葉の意味に気付き私は、心臓が早鐘の様に動き顔が熱くなっていくのを感じた。
総一郎
『正直…今もね…天野さん…君を今すぐにでも…押し倒したいって思ってるんですよ…』
井上君の真剣な瞳に男を感じて、ゾクリと背中が歓喜で震える。
心臓が壊れるんじゃないかと、不安になる程に、高鳴り井上君に、鼓動を聞かれて、しまっている様な気がして益々、混乱してしまう。
総一郎
『でもね…。天野さん…それ以上に君が大事なんですよ…』
晶
『えっ?』
総一郎
『俺だって男ですから…そういう事に興味が無い訳じゃ無いんですよ…。でも…』
晶
『………』
総一郎
『俺は別にそういう事がしたくて天野さんに自分の気持ちを伝えた訳じゃ無いんだ…』
晶
『井上君…』
総一郎
『俺の家系は代々、悪の秘密結社…。真なる悪と呼ばれる存在と戦い続けている…俺の祖父も父もそして…勿論、俺も…』
晶
『………』
総一郎
『俺はね…。天野さん…父さんが死んだ日、ある決意と覚悟を決めた…』
そう言って井上君は穏やかな表情をして微笑む。
とても、優しくて悲しい瞳をしながら…。
井上君は語り始める…。
自らの心に刻んだ悲しいまでの決意と覚悟を…。
そして誓いを…。
次回予告!総一郎は晶に語る…己の決意と覚悟をそして誓いを…。漸く…3分の2は書けました。そろそろ…この物語も、エンディングへ向けて、全力疾走を始めます!