第21話・夏休み編その12。
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総一郎と晶が人の気配が余り無い場所に移動する少し前まで時間が巻戻ります。
此処から深雪視点に変わります。
あれ?総一郎と天野さん何処に行くんだろ?
それに総一郎と天野さんが、手を繋いでる!
その瞬間、胸がモヤモヤした。
そして…。私は反射的に総一郎達の後を追ってしまった。
私は一体、何がしたいのか?
自分でも訳が分からないわ…。
あの時、怪物と、戦っていたシャドウ・ブレードが、総一郎かも知れないと考え私は恐怖に身震いした。
あんな化け物が世界中にそれも無数に居る。
それだけでも絶望的なのに更には全人類抹殺計画とかを、企てている悪の親玉の存在。
もし万が一、総一郎が、シャドウ・ブレードだったら私は総一郎を止められるのだろうか?
止めた所で、じゃあ総一郎の代わりに誰があんな化け物達と戦うの?
多分、十中八九、総一郎がシャドウブレードだと思う。
何せ総一郎のお父さんがシャドウブレードだったんだから…。
きっと総一郎にシャドウブレードに変身する力を授けたに違い無い。
晶
『別に怖くは無いわ…。だって…。あの人が人を傷付ける筈は無いし…』
晶
『あの人が、怪物の攻撃から私を庇ったのを見たでしょ?』
晶
『それに、さっきも言ったと思うけど、私はあの人を信じてるわ…だから怖くない…』
天野さんの言葉を思い出して私は、ピン!っと、閃いた。
そうよ!どうして今まで気付かなかったの!
総一郎が遅刻して来たり授業中に居眠りして居るのを見て天野さんが心配そうな瞳を向けているのも…。
総一郎の事をとても信頼して居るのも…。
総一郎がシャドウ・ブレードだとすれば、説明は付くわ。
これで90%、総一郎がシャドウ・ブレードだと確定したわ…。
でも、もしそうなら何故総一郎は私に自分がシャドウブレードと言わないんだろう?
その時、私は総一郎が、戦って居た怪物を、思い出し直ぐに納得した。
総一郎は言わないんじゃなくて、言えないんじゃ無いの?
もし、自分の正体がバレたら自分だけじゃなくて家族や友人とかに迷惑が掛かると思って黙ってるんじゃ…。
何時も、一人で居るのも写真を撮られるのを極度に嫌がるのも他人に壁を作って友達を作らないのも、万が一自分の正体がバレても、私達に被害が向けられない様に…。
そんな訳無いわよね…。総一郎がそんな事を考えて居る訳…。
晶
『確かに貴女は、きっと私より井上君の事を知っているのかも知れない…でも、やっぱり貴女は、井上君の事を分かっていない…』
晶
『ううん。違う…。貴女はわかって無いんじゃない…分かろうとさえしてない…そんな貴女がどうして井上君を馬鹿にした様な発言をするの?』
晶
『はっきり言って、不愉快だわ』
っ!もし…天野さんの、言ってる事が本当なら…総一郎が本当にシャドウブレードなら…。
海岸でシャドウブレードが血を吐いたのに立ち上がって怪物に立ち向かい怪物の攻撃から天野さんを庇って倒れてそれでも立ち上がろうとする。
もし…それが本当の総一郎だったら…。
きっと誰でも多分、私も好きになると思う…。
はっ!ちょっと何考えてんの!
未だ総一郎が、シャドウブレードだと決まった訳じゃ無いんだから…。
ただ…。そう言う可能性があるだけ!
なのに…。なのに…どうして、こんなに胸がドキドキすんのよ!
文化祭に怪物が乱入して辺りが騒然として総一郎が目茶苦茶、真剣な顔をして走り去った後、シャドウ・ブレードが現れたのを思い出した。
あの時は、気にもしなかったけど、あの表情は、恐怖に駆られて走ってたんじゃない。
あの表情は、香澄さんが私を守る為に怖い人達の前に立ち塞がり戦う決意を固めた時の表情と酷似していた…。
そう言えば、香澄さんが総一郎と初めて会った時香澄さんが、いきなり…
香澄
『私と御手合わせお願いしたい!』
っと、言った時は呆れたけど…。
よくよく…考えてみたら香澄さんって武道を習っていて目茶苦茶、強いのよね…。
そんな香澄さんが総一郎を見て戦いたいと思わせた…。
香澄さんは嘘とか、冗談とか大嫌いで絶対、言わない…。
益々、総一郎=シャドウブレードだという図式が成り立っちゃう!
そう言えば、総一郎って寝てる時に近づこうと、するとイビキ掻いて寝てる時でも一瞬で目を覚まして跳び起きるわね。
誰かが戦士にとって寝るという行為は最大の隙を作る。
それ故、余程信頼した者以外は微かな変化すら、敏感に、感じ取り瞬時に目を覚まして漸く一人前だと…。
もう!考えれば考える程総一郎=シャドウ・ブレードにしか思えない。
んっ!何か話声が聞こえるわね…。
中庭の方だわ…ちょっと気になるわねぇ!
私は、野次馬根性&知的好奇心から声のする方へ向かった。
総一郎と天野さんを追う事をすっかり忘れて…。
でも、結局二人は見つかるんだけど…。
私は、見てしまった…。
総一郎と天野さんが抱き合ってるのを!
天野さんは、女の私から見てもドキっとする位、幸せそうな笑顔を浮かべ総一郎を、抱きしめ頭を撫でて居る!
総一郎は総一郎で穏やかな表情で天野さんの胸にその…何て言うか埋めて安心しきった様に、天野さんの頭を撫でる行為を受け入れて居るし!
空を見上げれば、満天の星空。
月明かりに、照らされた二人は、まるでお姫様と黒い騎士といった感じに見える!
天野さんは壊れ物を扱う様な優しい手つきで…。
総一郎の頭を撫で続けている。
私は何を思ったのか二人の前に飛び出し反射的に叫んでしまって居た。
深雪
『ちょ!ちょっと!天野さん!総一郎!なっ何で二人が、抱き合ってるのよぉぉぉぉ!』
此処から、総一郎視点に変わります。
ううん…。何だ?何か…そう温かくて優しい気配に夢現のまま辺りを見渡す。
晶
『おはよう…井上君…』
えっ!いや!ちょ!ちょっとタンマ!
天野さんの声に僕は瞬時に目を覚ました。
今の状況確認、何故僕は天野さんに抱きしめられてんの?
ってか目茶苦茶柔らかいその…何て言うか…。
ええい!誰か状況説明を求める!
深雪
『良いから天野さんからさっさと離れなさいよ!馬鹿総一郎!』
総一郎
『ぐぇ!何だぁ!』
突然、誰かに襟首を凄い力で引っ張られて…くっ首が首が絞まる!
総一郎
『ちょ!ちょっとどちら様!って…一之瀬さん!なっ!何で一之瀬さんがってか何か怒ってって…ぐぇ!』
深雪
『全く何やってんのよ?大体…』
お説教を始めようとする一之瀬さんの言葉を遮る様に天野さんが言った。
晶
『一之瀬さん…別に井上君は悪い事なんかしてないわ…』
晶
『ただ…。井上君が足を滑らして私が抱き留めただけよ…』
此処から深雪視点に変わります。
深雪
『えっ?だって…』
さっきは明らかに、おもいっきり抱きしめあってたんじゃないの?
晶
『それに別に嫌じゃ無かったし…』
総一郎は聞こえなかったみたいだけど私にはバッチリ聞こえた。
深雪
『あの…天野さん?』
私は唖然として天野さんを、見て更に天野さんは言った。
晶
『私は、井上君に大事な話があるの…。邪魔しないで…井上君…行きましょう?』
総一郎
『えっ?あっ…うん…。そうですね…すみませんが、そう言う事なんで、それじゃあ…』
天野さんは総一郎の手首を掴むと引っ張って歩き去った。
私は、唖然として去って行く二人を見て胸が痛んだ。
どうして…こんなに胸が痛いの?
私はこの時、もっと自分の気持ちに正直になってたら未来は変わっていたのかも知れない。
でも、この時の私は自分の気持ちに気付かず又、素直にもなれなかったのよね…。
きっと恋愛はタイミングとか結構、大事な要素なんだと思う…。
私は、そのタイミングを自ら無自覚に無駄にして結局、私は失恋してしまったのだ…。
総一郎を、好きだと自覚した時には…もう遅すぎたんだよ。
まあ…今となっては良い思い出なんだけどね。
此処から、総一郎視点に変わります。
天野さんに手首を掴まれ僕は引っ張られて行く。
何だか様子がおかしい…っと言うか…何だか雰囲気が、変わった様な気がする…。
天野さんは無言のまま、人の居ない方へ、居ない方へと進んで行く。
天野さんが急に立ち止まり前に躓き掛けて何とか堪えた。
天野さんは、背を向けたまま無言…。
何だか空気が重たい様な気がする…。
少しの間、僕と天野さんは無言のまま時間だけが無意味に過ぎて行く。
どうでも良い事だが…。因みに手首は掴まれたままだ。
総一郎
『あの…天野さん?一体どうしたんですか?』
此処から晶視点に変わります。
戸惑った様な、井上君の声に私は井上君の手首を掴んだままなのを、思い出し慌てて、手首を離して言った。
晶
『ごめんなさい…手首…痛くない?』
結構、力を込めて握ってたから…。
しかし、井上君は笑って言った。
総一郎
『いや…大丈夫だよ…。それよりも…。どうしてさっき天野さんは怒ったんですか?』
井上君の言葉に私は唖然とした。
晶
『井上君…貴方は、どうして私が、怒ったんだと思う?』
私は再び込み上げて来た怒りを抑えて問う。
総一郎
『………』
井上君は無言のまま考え込んでしまった。
晶
『どうして?どうして…分からないの…』
怒りを通り越して悲しくなった。
此処から、総一郎視点に変わります。
天野さんは、悲しそうな表情で見つめて来る。
幾ら考えても答えは出ない…。
まるで解けない方程式の様に…。
晶
『井上君…貴方に言っておかなければ、ならない事があるの…』
そう言われて僕は思考を中断し天野さんの言葉に耳を傾ける。
晶
『私も、貴方と共に戦うわ…』
その言葉に、僕は何故か嫌な予感がして反射的に叫んだ!
総一郎
『駄目だ!大体、天野さん!君には、奴らと戦う力は無い!』
その言葉に、天野さんは微かに笑って言った。
晶
『ええ…確かに今までは無かったわ…でも…』
そう言って、天野さんは一旦、口を閉ざした。
僕は、今まで生きてきた中で最大級の嫌な予感に襲われた。
晶
『でも…。私にも奴らと戦う力があるわ…貴方と同じ力が…』
そう言って天野さんは、シオンさんが持っていたソウルクリスタルを手に持っていた。
総一郎
『駄目だよ!天野さん!それを、今すぐ僕に渡してくれ!』
晶
『嫌よ…この力があれば奴らと戦える…それに…私は…』
最後の方は聞こえなかったが、そんな些細な事は気にしてられない。
総一郎
『駄目だ!今すぐそれを渡すんだ!』
何とか天野さんを説得しようとするんだけど…。
晶
『嫌よ!』
っと即答されて僕は益々焦り…。
総一郎
『渡せ!』
っと、強く言ってしまいビクン!っと天野さんは体を震わせた。
晶
『嫌…』
それでも…。天野さんはソウルクリスタルを渡そうとはしない。
総一郎
『頼む…天野さん…お願いだから、それを俺に、渡してくれ…』
晶
『嫌よ…』
しかし…天野さんは悲しそうな表情のまま首を、横に振った。
総一郎
『天野さん…。君は分かっちゃ居ないんだ…奴らと戦うと言う事が、どういう事なのか…』
此処から晶視点に変わります。
井上君は顔を俯け言葉を続ける。
総一郎
『君は分かってない…。ブレードになると言う事が…どういう事なのか…ソウルクリスタルを使うと言う事が、どういう事なのか…』
晶
『確かに…そうかも知れない…でも…私は…私は守りたい人が居るの…。自分の命より大事な人が居るの…』
私は溢れ出す思いを言葉にする。
晶
『その人は、凄く強くて優しくて…だけど…凄く悲しそうな瞳をして笑うの…』
晶
『どんなに苦しくても、どんなに悲しくても何時も笑ってる…見てる私が切なくなる位に…』
井上君は一瞬だけ表情を歪めたものの直ぐに何時もの笑顔に戻る。
晶
『だから…私はその人を守りたいの…私を守ってくれた様に…だって私は私は…』
此処から、総一郎視点に変わります。
天野さんは、微かに頬を染めて言葉を紡ぐのを、聞いて、僕は悲しくなった。
天野さん…君は気付いて無いかも知れないけど、今の君の表情は、恋する乙女の顔だよ?
自分の命よりも大事な人か…。
ズキズキ痛む胸を、無視した。
総一郎
『分かった…もう良い…天野さん…もう何も言わなくて良い…』
僕は天野さんの声を遮った。
天野さんは、驚いた様な表情を僕に向けた。
もう…聞きたく無い…。
女々しい奴だとは、自分でも分かってる…。
だけど…天野さんが好きな人を語る時の表情も、声も聞きたくない。
ああ…これが嫉妬なんだなぁ…。
晶
『井上君…聞いて…私は私は…』
はは…。残酷だな…天野さんは…いや…天野さんを責めるのは筋違いだ…
勝手に天野さんを好きになってしまっただけだ…天野さんに落ち度は全く無い…。
総一郎
『良いんだよ…天野さんもう…。君が奴らと戦う事に反対はしない…』
晶
『えっ?井上君?』
そうだよ…例え天野さんに好きな人が、居たって良いじゃないか…。
それで自分の天野さんへの思いが無くなる訳じゃない…。
これまでと変わらない…俺は天野さんを守る。
それだけで良いじゃないか…。
天野さんに微笑み掛けて言った。
総一郎
『どちらにしても一旦、戻りましょう…余り長い事、皆と離れてると心配しますし…』
此処から晶視点に変わります。
何時もの様に、井上君は笑うと歩き出した。
私は井上君に言いたい事があるのに…。
でも…。井上君の背中は私を拒絶している。
何故かは分からないけど井上君の考えを理解出来る。
もし…告白して受け入れて貰えなかったら?
そんな考えが頭を過ぎり私は怖くて言えない。
その後、私と井上君は、皆に何処で何をしていたのかと質問責めを受けて正直、疲れてしまった。
この日を境に私は井上君と同じ道を歩き出した。
怖く無いと、言えば嘘になる…。
怪物に、殺されてしまうかも知れないし井上君を助けるつもりが逆に足でまといに、なるかも知れない…。
それでも、私は井上君と一緒に居たい。
この選択に一片の迷いも躊躇いもありません。
私、天野晶は井上総一郎に一生着いて行きます。
うふふ…何だか結婚式の誓いの言葉みたいね…。
井上君…私は貴方を愛しています…。
何時か私の気持ちを伝えられたら良いな…。
必ず伝えるから…だから待っててね…。
次回予告!総一郎と共に戦う事を、決意した晶。晶を守ると決意を新たにした総一郎の身体に異変が!今回はちょっとシリアス入ってます。では…又…。