第21話・夏休み編。その9
サンダーリキッドの必殺技『サンダーボール』が晶に襲い掛かる!その時総一郎は再び金色の龍を身に纏う!
総一郎
『おい!俺の事は良い!早く逃げろ!』
雷の球体が迫る中、俺は必死に、天野さんを説得するが無言で、首を横に振り聞いてはくれない。
駄目だ!死なせない!
俺の目の前で、死なせてなるものか!
この人を…。俺みたいな奴を、信じてくれた天野さんを助ける為にも…。
総一郎
『死ねないんだ!この人を、守れる力が欲しい!大切な人を、守る為に!ウオオオオ!エボリューション!』
そう叫んだ瞬間、ソウルクリスタルが強烈な光を放ち痛みが、嘘みたいに消え身体の奥底から力が湧き出てくる。
それに身体が羽みたいに軽い。
すっ!と俺は天野さんの前に出ると襲い来る雷の球体に視線を向ける。
左手を前に、突き出すとあれ?左手に、ある筈のソウル・クリスタルが、無いぞ?
何時もの様に左手に意識を集中すると左手に光が集まり縦横2メートル程の巨大な光の壁が現れて雷の球体が、ぶつかったかと思うと光の壁により掻き消され光の壁が放電を起こす。
壁が壊れ光の粒子が俺の身体に集まり出した。
途端に、物凄い力が湧き出てくる。
訳がわからんがどうやらさっきの光の壁が、雷の球体のエネルギーを吸収して吸収したエネルギーを、俺に上乗せしたみたいだ。
身体から時々、放電してるからな…。
総一郎
『少しだけ待っててくれ無いか?直ぐにアイツを片付けるから』
此処から晶視点に変わります。
全身の殆どが金色の鎧に変わった井上君は穏やか声で、私に振り向いて、そう言った。
圧倒的な威圧感と存在感そして何よりも神々しいと呼ぶに相応しく溜息が漏れる程に美しい姿。
それは、まるでお伽話に出てくる黄金の騎士。
或いは神話に、出てくる軍神?
言葉に出来ないとはこの事だと私は思う。
それにさっきまで赤い眼だったのに今の彼の眼は突き抜けた青空の様に、綺麗な青い眼を、している。
何も言えず、頷く事しか出来なかった。
サンダーリキッド
『馬鹿なぁ!何故、あの御方と同じくエボリューションが出来るのだ!』
エボリューション?直訳すると進化よね…。
一体、この人の身に何が起こったの?
総一郎
『ペラペラ喋ってる暇は無い…。一気に、決めさせて貰うぞ!』
此処から、総一郎視点に変わります。
何故、少し前まで、どんなに頑張っても出来なかったエボリューションが突然出来るようになったのか?
分からなかったが今は、アイツを倒すのが、先決だろう。
この前の、クリムゾン・ヘッドとの戦いの最中に進化したが、相変わらずエボリューションのコントロールが出来ない。
それに必殺技の使い方が分からない!
こうなれば自分で新しく必殺技を、作るしか無いな…。
意識を、集中して自分が思い描く必殺技を、イメージする。
頭の中に、思い描く俺にとって初めてとなる必殺技。
父さんに、教えて貰ったスターライト・ブレイクスターライト・ランスとは、違うオリジナルの、必殺技。
長年、暖めながらもエネルギー不足で出来なかったが今なら…。
総一郎
『きっと今なら出来る!ウォォォォ!』
意識を集中して、エネルギーをチャージ。
右手に、全長2メートル程の光の球体を作り出しサンダーリキッドに投げつける。
サンダーリキッド
『ふん!そんな攻撃など当たらんよ!』
サンダーリキッドは素早く横に避けたが甘い!
総一郎
『今だ!バースト!セット!』
右手を頭上に、振り上げパチン!と指を鳴らすと光の球体が破裂して無数の光の槍に変化する。
半分は、サンダー・リキッドの周りの地面に突き刺さって、もう半分は、身体に突き刺さり地面に突き刺さった光の槍は、さながら結界の様に雷を発生させサンダーリキッドの動きを止める。
サンダーリキッド
『ぐっ!何だ!これは?くっ!出られん!』
さて…。やっと俺が考えうる必殺技の半分が出来たぞ。
更に意識を集中し…エネルギーを高める。
総一郎
『ムン!ハァァァァァァァァ!!』
極限にまでエネルギーを高めてイメージを具現化させて、光の龍を身体に纏わせる。
総一郎
『これで終わりだ!これが、俺の新必殺技!』
そう叫び光の龍を纏って上空へと飛び上がり怪物に、向かって新必殺技の名前を叫ぶ!
総一郎
『ファイナル・ドラゴンブレイカー!』
名前を、命名しつつ光の龍は槍に吸い寄せられる様に光速の早さで近付きながら、仮面ライダーの様に飛び蹴りをサンダーリキッドの胸板に、叩き込んで、光の龍は光の槍ごと、サンダーリキッドに巻き付き怖い位、吹き飛びながら、大爆発を、起こす。
サンダーリキッド
『グアアアアアア!』
サンダーリキッドは叫びバタリと倒れる。
殺気や闘気は完全に消え戦闘が終わったのを感じたが、気を緩めたりは、しない。
サンダーリキッドはヨロヨロしながら立ち上がり言った。
サンダーリキッド
『ぐっ…。流石はクリムゾンヘッドと引き分けた男よ…。だが!貴様が、如何に、強くなろうとも世界中に無数に散らばる我々の同士達に適う筈も無い!』
サンダーリキッド
『全人類抹殺計画は着々と進められているのだ!貴様達に、未来は無い!くっくっくっくっ!あっはははははぁ!』
高笑いと共に、サンダーリキッドは自爆。
ちっ!相変わらず反吐が出るな…。
うっ!頭がクラクラしやがる。
それにしても何で、この前まで出来なかったエボリューションが出来たんだ?
ぼんやりと、考え込んでいると…。
深雪
『ちょっと!何なのよ!あの怪物はぁ!それに、アンタは一体、何者なのよ!』
一之瀬さんの声に思考を中断せざる終えなかったが、今、やっと天野さんだけじゃなく一之瀬さん達が居る事に内心舌打ちした。
舞
『それに全人類抹殺計画って何なのよ!』
河野先輩は微かに身体を震わせて青ざめた表情で話し掛けて来る。
総一郎
『アンタ達には関係ない事だ…。それと今、見た事、聞いた事は全て忘れるんだ…』
そう言うと…。
深雪
『良いから!答えなさいよ!あの化け物が言ってた…全人類抹殺計画って何なのよ!』
一之瀬さんは、叫ぶ様に言い俺は、あからさまに大きな溜息を、漏らしながら…。
総一郎
『言葉通りだろう?その名の通り全人類を、抹殺する計画だろう…』
総一郎
『奴らの目的は世界征服じゃない…。全人類の、抹殺だ…』
総一郎
『これで、満足か?知った所でアンタ達には何も出来はしない…何の力も無いアンタ達に戦闘員や怪人は倒せはしない…。倒せるのは…』
俺やゼクロスの奴らしか居ないと言い掛けて俺は止めた。
無闇に情報を与えるのは良くない。
総一郎
『それじゃあな…』
それだけ言うと俺は皆を無視して走りだした。
もう、エネルギーも残り少ない。
転身を維持出来るのも、後、数分位しか出来無さそうだ。
俺は誰も周りに居ないのを確認してテトラポッドの中へ。
奥の方まで行き俺は何時もの様に…。
総一郎
『封身!』
して元の姿に戻り俺は、テトラポッドに仰向けで寝転がる。
左手に着けてあるソウルクリスタルを、見つめながら…。
そう言えばクリムゾン・ヘッドと戦ってる最中にエボリューションした時天野さんが頭に浮かんで死にたくないと、思った時に出来たんだよな?
っとすると…。もしかすると、エボリューションするには大切な人を守りたいだけじゃなくて…。
自分自身も、生きたいと強く思わないと出来ないのか?
もし、そうなら俺には、エボリューションはマスター出来ないな…。
俺にとって自分の命なんて、その辺の道端に転がっている石ころ位の価値しか、無いと思っているしな…。
何とかエボリューションを、マスターする方法は無いのかな?
次にゼクロスのメンバーに会ったら聞かないと…そう思いながら俺は睡眠不足と、戦闘の疲れが、重なり何時の間にか眠り扱けて居た。
此処から深雪視点に変わります。
全人類抹殺計画…。何て事なの!
普通なら電波話しでしか無いけど、怪物と戦っている人を、見ている限り映画の撮影じゃなさそうだし、現実に目の前で、起こった事なのだと…。
総一郎かも知れない人が怪物に殴られて、ぶつかり壊れたテトラポッドが語っている。
夢でも幻でも無い現実なのだと…。
香澄
『とにかく…。助かって良かったと、思うべきでしょう…。深雪お嬢様、早く此処から離れましょう…』
香澄
『警察の方に説明を求められても本当の事は言えませんし…』
香澄さんの声には安堵感が、ひしひしと伝わって来る。
舞
『正直に言うと、かなり怖かったわ…』
河野先輩は、未だに顔面蒼白。
深雪
『それにしても…。天野さん!貴女は何を考えてるの!一歩間違えれば、死んでてもおかしく無い状況だったのよ?』
私が、そう言うと…。
晶
『ごめんなさい…。でもあの時はあの人を助けたかったの…』
晶
『私には何の力も無いけど、それでも…。私はあの人を守りたかった…それに私は…。あの人を信じてたから…』
天野さんは、頭を下げて呟く様に言った。
シャドウブレード=井上総一郎かも、知れないと思っている今、私は正直あの怪物よりも総一郎が怖い。
余りにも、普段の総一郎とは、ギャップが有り過ぎる。
自分が、傷付く事すらも恐れずに目の前に、立ち塞がる敵を躊躇いも無く殴り蹴り壊していく総一郎は、まるで戦闘マシーンの様で怖い。
深雪
『貴女は、怖くないの?アイツが…』
堪らなくなって天野さんに問う。
天野さんは、一瞬だけ、怪訝そうな表情を見せたが、何時もの様に無表情のまま…。
晶
『別に怖くは無いわ…。だって、あの人が、人を傷付ける筈は無いし…』
晶
『あの人が、怪物の攻撃から私を庇ったのを見たでしょ?』
晶
『それに、さっきも言ったと思うけど、私はあの人を信じてるわ…だから怖くない…』
天野さんは無表情だけどその瞳は私を責めている様な気がする。
まるで、当たり前の事を言わないでと言う様に…そんな事を、考えていると…。
隆司
『お〜い!皆〜!』
っと言う田中くんの声が聞こえて、私は声のした方向へと顔を向ける。
深雪
『良かった…。無事だったのね…。ねぇ!総一郎は見た?』
隆司
『見てないよ?井上の奴何処、ほっつき歩いてるんだか…』
呆れた様に田中君は言い何処かに電話して居る。
隆司
『ちっ!電話は鳴るけど出やがらねぇ…』
携帯を見ながら呆れ声でそう言った。
隆司
『これから、どうするかは井上を見つけてからにしようぜ』
その言葉に、私を含めて全員が、同意した。
隆司
『っで?皆で、固まって探すか?それとも、バラバラになって探すかな?どうする?』
田中君の言葉に…。
晶
『固まって探すより散らばって探した方が効率は良いと思う…』
晶
『幸い皆、携帯を持って居るし…井上君を見付けたら連絡すれば、良いと思う…』
天野さんが、言い私達はバラバラに総一郎を探す為に行動し始めた。
此処から晶視点に変わります。
私は、井上君を探す為に電話を鳴らしながら井上君が走り去った方向へと歩きだした。
それにしても一之瀬さんは、何故、井上君が怖いんだろう?
深雪
『貴女は、怖くないの?アイツが…』
どうして…。そんな事を言うの?
井上君は私達の為に必死に戦って居るのに…。
私は井上君が怪物の攻撃を受けてテトラポッドにぶつかって口から沢山、血を吐いたのに…。
それでも井上君は必死に立ち上がって怪物に立ち向かおうとした時は…。
怖いと思うよりも心配だった。
どうして…。どうして!其処までするの!
そう叫びたかった…。
誰に、感謝される訳じゃない。
お金が、貰える訳でも、ない。
なのに…。どうして其処まで出来るの?
メリットなんて、皆無に等しい。
デメリットは掃いて捨てる程にある…。
総一郎
『俺にとって大切な人達を守る為に戦って居るんだ。別に、その事で感謝されたいなんて思った事無いし気にする必要も、無い』
少し前に屋上で井上君が言っていた言葉を、思い出し私は切なくなった。
井上君に、とって大切な人達を、守れるなら別に守った人達に、感謝されなくても良いし気にしなくて良いと言って居る気がする。
どうして井上君は、そんな事を言うんだろう?
井上君は何か大事な事を隠しているのかも、知れない。
それが何なのかは分からないけど…。
とにかく、井上君を見付けてから考えよう…。
私は携帯を鳴らしながら歩き続ける。
♪…♪♪…♪♪♪〜♪!
っと何処からか歌が聞こえてきてた。この歌は、もしかして井上君の携帯の着歌?
そう言えば井上君の着歌は、結構特徴的で良い歌だから、一度聞いたら、誰が歌っているのか?
凄く気になるのよね…。あっ!何時の間にか携帯が呼び出しを止めてる。
私は、もう一回だけ携帯を鳴らすと又、歌が聞こえてくる。
音の方向はテトラポッドが沢山、あるわね…。
でも…。どうやって井上君の所まで行こう…。
テトラポッドを攀じ登るのは危ないし…。
んっ?そうだ!何も攀じ登るだけじゃなくて少し遠回りに、なるけど迂回すれば、テトラポッドを攀じ登らなくても井上君を見付けられそう…。
私は迂回して、テトラポッドが、余り積まれていない所まで、行きテトラポッドに飛び移る。
私は電話を鳴らすと音が次第に、大きく音のした方へ目を向けると井上君が、大の字になって寝ていた。
此処から通常視点に変わります。
晶は、無事で良かったと思う半面、呑気に、寝ている総一郎を見て釈然としない物を感じていた。
その為、晶は憮然とした顔(表面上は、何時もの無表情)のまま総一郎に近付くと両手で総一郎の頬をつねった。
総一郎
『うう〜ん』
っと、呻き声が聞こえて晶は慌てて手を離し微かに頬を緩める。
総一郎は、晶に気付く事無く眠りについている。
睡眠不足と戦闘で受けた損傷と、不完全なエボリューションが、総一郎の肉体と、精神に無自覚ながらも確実に損傷を与えていた。
その為、総一郎の脳は、完全に生命活動が出来るギリギリまで脳の活動を鈍くしている。
簡単に言うと一種の冬眠状態と同じである。
今、総一郎は完全に無防備状態である。
普段は何時も気を張って居る為か、睡眠状態でも何か物音や、人の気配を感じると瞬時に、目を覚ます総一郎だが晶にだけは無意識だが気を許して居るので、総一郎の危機察知能力に反応する事は無い。
寧ろ、晶が居る事により総一郎の、精神は安定し脳は、リラックス状態となり徐々に、脳は活性化する。
脳の働きが、良くなれば新陳代謝や内臓の動きが活発化し老廃物や、悪玉コレステロール等の処理をスムーズにする。
総一郎にとって晶は下手なアロマテラピーよりも精神を、安定させるのである。
そんな事など分かる筈の無い晶であったが彼女は慈しむ様に総一郎の頭を撫で続ける。
愛しさと、切なさが晶の胸に沸き起こり彼女は、総一郎の頭を優しく撫で続けて居る。
他の人が見ると、完全に恋人同士がイチャついて居る様にしか、見えない空気だ。
二人の間に広がるピンク色の空気(笑)
ふと、晶は総一郎の左手に、着けられたままの、ソウルクリスタルが微かに、光を放ち続けている事に気付いた。
晶
『(そう言えば井上君がシャドウブレードに変身する時、必ず、この黒い水晶が付いた物を着けるわね…。もしかして…。コレが井上君を変身させる道具なの?)』
晶は総一郎を起こさない様に静かに移動し微かに光を、放ち続けるソウルクリスタルに、恐る恐る触れてみると暖かく晶は驚く。
晶
『(暖かい…。まるで、太陽の柔らかい陽射しのようね…)』
総一郎のソウル・クリスタルに、触れながら何の変哲も無い。
ただの黒い水晶にしか、見えないので晶は不思議だった。
何故、こんな物で、変身出来るのか?
常々、疑問だった晶。
ソウルクリスタルの事を知る由も無い晶にとって当然の疑問だった。
しかし…。総一郎にとって、天野晶は掛け替えの無いたった一人の大切な女性である。
ソウルクリスタルが下手すれば己の生命さえ縮ます程の危険な代物である事を告げる気は全く無く例え聞かれたとしても、答えるのは出来ないのは火を見るよりも明らかであろう。
飽きもせずに、総一郎のソウル・クリスタルに、触れて居た晶だったが、彼女も最近は余り眠れず総一郎の隣で微睡み始める。
晶も又、何時の間にか、眠り始めていた。
夏休み編は未だ続きますもう少しだけお付き合い下さい。次回はヒーローのソウルクリスタルと、必殺技、ウォーム別の、特殊能力とゼクロスの、特殊能力についてです。それでは…。