第21話・夏休み編その5
漸く、更新出来ました。まだまだ、駄文ですが、これからも宜しくお願いします。
その頃、総一郎は、魚の頭と尻尾と内臓を綺麗に取り除き、川の水で中を洗い血を落とす。
金属製の棒に捌いた魚を刺して枯れ枝と木の葉を集めて、手頃な石を二つ手に持ち素早く石と石を擦り合わせて、火を起こした。
小さい頃から、父である修司に、サバイバル術を叩き込まれている。
その為、総一郎は、自給自足の生活は得意。
パチパチパチと音を立て枯れ木が燃える。
火が、消えない様に注意しながら魚を焼く。
そろそろ家に戻って風呂に入らないとな…。
彼此、5日程、総一郎はエボリューションだけ、では無く、寝て・起きて食べて・鍛練以外して、居ない。
かなり汗臭く衣類も汚れている。
着替え位、持ってくれば良かったと軽く後悔した総一郎だった。
普段なら夏休みの間中はこの場所で寝て・起きて食べて・鍛練だけの生活になる。
勿論、夏休みの宿題は、終わらせてからである。後々、宿題に追われては落ち着いて、鍛練に集中出来ないからだ。
総一郎は、一度見た事、聞いた事は忘れない。
何せ、総一郎の知能指数180なのである。
最も総一郎は自分は天才だとは、知らないし勉強自体が嫌いな為、何時も平均点位しか取れないが勉強さえすれば東大さえ余裕で合格出来る頭脳はある。
最も、勉強に時間を裂くよりも鍛練した方が自分の為になる。
相手は、殺す気で戦いを挑んでくるのだ。
手加減したら、こちらが殺される。
そんな事を考えているとふと焦げ臭い匂いがして我に返ると、魚が焦げていた。
総一郎は慌てて魚を取り魚を食べる。
何時もより美味しくなかったが、そこらへんは、愛嬌だろう。
総一郎は魚を胃に納めて家に戻る準備を始めた。
此処から総一郎視点に、変わります。
何時もなら誘われたって絶対に行かない。
この前の、遊園地だって無視すれば良かった。
今回だって、今からでも予定が、出来たと言って断る事だって出来る筈なのに…。
なのに俺は何で家に帰る準備なんかしてるんだ?遊んでる余裕なんか無い筈だろ?
海に、行ったって人前で泳ぐ訳にはいかない。
全身傷だらけだし見せる訳には、いかない。
見せたら俺がシャドウ・ブレードである事がバレるかも知れない。
いや…。確実にバレる。やっぱり、行かない方が良いのかも知れないな。どちらにしても家に戻るしかないな…。
誘いを、断るにしても、携帯は家に置きっぱなしだ。
大きな、青いリュック・サックとナイフはツリーハウスに置いておく事にした。
此処から通常視点に変わります。
総一郎は、家に戻る為に走り始めた。
既に陽は沈み辺りは暗くなり始めていた。
総一郎は、夜の闇に溶け込む様に走る。
荷物を、背負って居ない為、1時間も掛からずに自宅に、着き鍵を開けて中へ。
総一郎は、風呂を沸かし汗と汚れの付いた衣服を脱ぐ。
っと、まるで計った様なタイミングで、総一郎の携帯の着メロが鳴り響き総一郎は慌てて誰か確認せずに電話を取る。
総一郎
『もしもし。どちら様ですか?』
深雪
『アンタね!どちら様って、私よ…。深雪だけどアンタさ…。何やってたのよ。全然、繋がらないじゃない。携帯持ってる意味あんの!大体さ…。アンタは…』
っと、小言になりそうだったので総一郎は話題を変える為に…。
総一郎
『それで用件は何?』
総一郎に、とって深雪は大切な人である。
しかし…。だからこそ、総一郎は、深雪に冷たい態度を取らなければならない。
そんな総一郎の気持ちを知る由も無い深雪。
深雪
『アンタねぇ!人が折角電話したのに…』
総一郎
『あのな…用事が無いんなら切るぞ。俺は忙しいんだよ。さっき迄バイトしてて疲れてるんだ…』
総一郎
『早く風呂に入って寝たいんだよ。悪いけど明日にしてくれる?明日朝一に電話するから!じゃあな!お休み!』
そう言い総一郎は一方的に電話を切り深雪は少しの間、茫然とした。
もう一回、電話をしようとしたが止めて置いた。しつこくする様な事でも無かったし明日になれば総一郎から電話を掛けると、言ってたんだから、っと思い深雪はべットの上に、仰向けに寝転がり溜息を吐いた。
此処から深雪視点に変わります。
私にとって総一郎は一体何なんだろう?
文化祭の時に見せた何時もとは違う真剣な表情。
触れれば、切れてしまいそうなナイフの様なイメージ。
総一郎のお父さんがシャドウ・ブレードであった事。
そして、怪物達と戦っている謎の存在。
頭が変になりそうだわ!こんな話しなんて、誰も信じる筈無いわ。
漫画や小説じゃあるまいし…。
真実は小説より奇なりと言うけど、その通りなのかも知れない。
私は溜息を吐きダブル・ベットに意味も無くゴロゴロと左右に転がる。
何で私がアイツなんかの為に悩まないと、いけないよ!
ああ!もう!この事は、考えない!
そう思っても、総一郎が頭から離れない。
もし…。総一郎が、シャドウ・ブレードだったらアイツは7年前から今迄ずっと一人で戦っていた事になる。
もし…。負けたらアイツどうなるんだろ?
その考えに、私は背筋が震えた。
私はその考えを振り払う様に目を閉じ深い闇の中へと落ちて行く。
翌日私は護衛の香澄さんに起こされた。
香澄
『おはようございます。深雪様。今日も良い天気ですよ』
香澄さんは私から見てもとても綺麗な女の人だと思う。
艶やかな黒髪なのに適当にゴムで縛っている。
均整が取れた体付きだし多分、見た目ではSPだとは分からない位。
私が黙っていると…。
香澄
『どうか致しましたか?私の顔に、何か着いてますか?』
っと聞いてきたけど私は笑って誤魔化す。
深雪
『そう言えば、香澄さんは…』
っと言ったら香澄さんは私の言葉を遮る様に…。
香澄
『お嬢様…。私は貴女様の護衛です。敬語は使わなくて、構いません…。更に言わせて頂きますが私は貴女様と同じ歳ですので…』
香澄さんは穏やかにハッキリと言う。
その言葉を聞き私は何時もの様に…。
深雪
『貴女が敬語を止めたら呼び捨てにするわ』
そう言うと決まって香澄さんは慌てた様に…。
香澄
『その様な事は出来ません』
っと言うのは分かり切っている。
だから私は、わざと悲しそうな顔をして、言うのだ。
深雪
『そう…。そんなに私の事が嫌いなのね?そうなのね?』
そう言う私に香澄さんは普段の冷静な顔を崩して言った。
香澄
『いえ!決して、そんな事はありません!』
っと珍しく、慌てた顔のままの、香澄さんの顔に私は、笑いを堪える事が出来ずに吹き出した。
茫然とした顔をした香澄さんが、徐々に自分が、からかわれていた事に、気付き恨めしそうな顔をして私を見る。
完全に、拗ねてしまった香澄さんは、部屋の隅に行って、私に背を向けて小さく丸まって、地面に字を書いている。
そんな、香澄さんが余りにも、可愛くて笑ってしまい香澄さんは益々拗ねモードだ。
香澄さんは普段、かなり大人っぽいし大人顔負けの強さもある。
昔の侍みたいな性格なのだ。
生真面目で、優しいけど只、優しいだけじゃなく厳しい。
私にとって、香澄さんは母であり姉であり友達なのだ。
私は香澄さんの事を護衛役なんて思わないし思いたくも無いわ。
だから私は、こう言うのだ。
深雪
『ほら!何時までも拗ねて無いの!』
私は笑いながら香澄さんに抱きついて言うの。
っと、穏やかなシーンに私の携帯が鳴る。
私は着信を見ると総一郎からで昨日、総一郎から掛かって来るのを忘れていた。
私は慌てて電話に出た。
総一郎
『もしもし?一之瀬さん昨日はゴメンね。っで、どうかしたの?』
総一郎が聞いて来たので私は…。
深雪
『実は明日、海に行く話をしたじゃない?でね…その話を聞いた河野先輩と、香澄さんが行きたいって言ってるんだけど…別に問題ないよね?』
此処から総一郎視点に、変わります。
っと聞かされて僕は嫌な予感が的中した。
こういう時は悲しい位に良く当たる感だ。
総一郎
『それは、僕よりも田中に言ったら?』
そう言いながらも、内心田中に同情した。
えっ?何故かって?それは、田中が一之瀬さんに惚れてるからだ。
多分、奴のシナリオは、こうだ。
先ず4人でと言ったのは男女でペアに成れる可能性がある事。
田中ならクジに細工位、やる。
そこで田中は一之瀬さんと、ペアになり良い感じになろうとしてる。
僕は、応援してはいるが天野さんと二人っきりになるのは辛い。
自分の気持ちがハッキリした今、二人っきりは、正直に言うけど無理だ。
コラ!そこ!ヘタレとか言うな!
俺の立場になって考えてみてくれ!
俺は、確かに天野さんの事が好きだよ?
普通の高校生なら速攻で告白は…出来んな。
自分の立場を、弁えなければ、ならない。
俺は昔も今も、そして、これからも戦闘員や怪人を、倒し続けなければ、ならない。
奴等が、居るかぎりな!奴等を、倒さねば何時までも、俺の戦いは終わらないんだ。
話が逸れたな。さて…。こうなると、行かないとは、言いずらいな。
河野先輩と香澄さんか…最強タッグだな。
そんな事を考えてると…
深雪
『何で田中君に言うの?あっ!そうか!田中君が発案したのよね』
って的外れも良い所だ。田中よ…。奴は、お前の気持ちに、気付いてないみたいだぞ。
他人事ながら、同情するぞ。
???
『お前の方が、鈍感だろうが!』
あれ?何か聞こえたな。いかん。幻聴か?
まあ良いか。そんな事よりも…。
総一郎
『分かっていると、思うけど僕は泳げないんだ。だから…。海に行っても意味が無いんだけど?』
一応、言っておく事に、した。
皆には井上総一郎=カナズチで通している。
何故なら、そうしないと全身に刻み込まれた傷が皆に、バレるからだ。
見せても構わないがハッキリ言うが精神衛生上、余り宜しくない傷だ。
子供が見たら間違いなく泣き出す様な傷だ。
えげつない程の傷なのだ自分でさえ眼を避けたくなる程だぞ?
人が見たら、百人中百人気分が、悪くなると断言出来るね。
そんな傷を見せる訳にはいかない。
説明するのも、面倒だしするつもりも無い。
ほら!アレだ!知らぬが仏って奴だ。
深雪
『それなら…。別に泳がなきゃ駄目って事は無いわよ?海に、行ったからって、泳がなきゃ死ぬ訳じゃないし…』
あれ?おかしいな?何時もなら絶対、泳げ!っと言うか、コーチングまですると言いだすのにな?
この時、僕は一之瀬さんが、前のシャドウ・ブレードが父さんである事を知ってるなんて、思いもしなかったからラッキー位にしか思わなかったんだ。
総一郎
『なら…。良いけど…』
此処から深雪視点に変わります。
明らかに、安堵した様な総一郎の声に私は益々、総一郎=シャドウ・ブレードでは?っという考えを持った。
そんな考えを、振り払う様に努めて明るく…。
深雪
『っで、アンタは、参加するんでしょ?』
その質問に、総一郎は、微かに考え込んだ後。
総一郎
『ああ…。行くよ』
っとだけ返し私は何故か気まずい雰囲気に包まれた。
深雪
『じゃあね。あっ!そうそう、待ち合わせ場所は朝の9時に駅前の噴水がある所よ!忘れたり遅れたりしないでよ?』
そう言うと…。
総一郎
『分かってますよ。朝の9時に駅前の噴水がある所ですね?じゃあね』
此処から総一郎視点に、変わります。
そう言って僕は、電話を切った。
切った後、僕は溜息を、吐いた。
布団に寝転がり結局断る事が出来なかったな。
僕は意思が弱いのかな?親しくして、どうする?僕が、死んだ時に親しくして悲しませない様に、する為に人と接するのを止めたのに…。
天野さんに出会ってから僕は…。
駄目だ!考えたら、限りない。
一先ず、僕は布団から、起き上がり米を炊く事にした。
今は朝の9時だ。そう言えば冷蔵庫の中は空だったな。
後で、駅前のデパートで買い物でも、するかな?確か今日は玉子と鶏肉が安かった筈だ。
家からだと業務用のスーパーの方が近い。
しかし、今日は月に一度の御奉仕セール。
生活費が残り少ない今は切り詰めて行くしかないのだ。
炊飯器の電源を入れ僕は戸締まりとガスの元栓を確認して服を着る。
財布に携帯、ソウルクリスタルも忘れずにポケットに入れ僕は家を出た。
今から行けば大丈夫だろうと、思っていたが甘かった。
駅前に到着した時には、既に、駅前のデパートの前は、かなり混雑していた。
買えるか?いや…。買える!買えないでは無い!買うのだ!買わねば俺に明日は無い!
此処から通常視点に変わります。
ちょっと、いや…かなり大袈裟な事を考えながら総一郎はデパートが開店するのを待つ。
開いた瞬間、雪崩の様に動く人波を総一郎は避けながら走る。
その姿は獲物を見つけて追い掛けて行くチーター顔負けだ。
何時もの様な笑顔は消え真剣な顔である。
そして…。10分後
総一郎は、悠々と勝利の凱旋を行ったのは、言うまでも無いだろう。
何時もより、3割増しの笑顔で、駅前の商店街を歩いていると銀色の髪をした少女が、本屋で立ち読みをして居た。
声を掛けようか?迷った総一郎だったが、邪魔をするのも、悪いなと思いそのまま通り過ぎようと歩いていると視線に気付いたのか?
晶は本から顔を上げ横を向いて総一郎の居る方向に眼を向けた。
まともに、視線が合ったので、無視する訳には、いかず…。
総一郎
『こんにちは…天野さんは本でも買いに来たんですか?』
総一郎は若干、笑顔を、引き吊らせて問う。
自分の気持ちに気付いてしまった総一郎は何時もの様に、晶と接する事が出来ずに、あちこちに、視線を向け晶と眼を合わせない様にしている。
一方、晶は、そんな総一郎の、態度を見て内心、ショックを受けていた。
晶は余り感情を表に出さない分、人の感情を読み取る事に、敏感で自分の事を、どう思っているのか?
かなり正確に判断出来るのだが…。
総一郎に避けられていると、思ってしまった晶は無言のまま頷き本を見る事にした。
総一郎はホッとしつつも寂しく感じた。
気まずい雰囲気が二人の間に流れる。
何時もなら会話が続かなくても、焦る様な沈黙は無かった。
しかし…。今は総一郎も晶も内心、冷汗を掻いている。
総一郎は、そのまま無言で立ち去り晶は悲しそうな眼を、総一郎の背中に向け人混みの中へ消えて行く総一郎を見つめていた…。
お互いに思い合っているのに、二人の気持ちは、擦れ違い始めていた…。
大切だから、好きだから伝えない総一郎。
総一郎に避けられていると思っている晶。
その日、総一郎は、余り眠る事が出来ずにいた。原因は分かっている。
遊園地での観覧車の中で見た夕日に、照らされた晶の表情。
文化祭で、見た晶の嬉しそうな笑顔。
学校の第二図書室で見た冷たい眼。
そして…。駅前の商店街で見た悲しそうな顔。
多分、他の人から見たら同じ顔に見えるが総一郎は、微かに晶の表情が、変化しているのが、分かってしまった。
晶の些細な表情の変化でさえも分かる様になる程総一郎は晶を見ている。
その事に気付いた総一郎は、愕然とする。
此処から総一郎視点に、変わります。
このままでは天野さんに迷惑が掛かってしまう。
大切な人が、悲しんだり傷ついたり死んだりする事には耐えられない。
天野さんを死なせてしまったら、俺は…。きっと壊れてしまう。
もう…。冷たくしたり、無視したり出来そうにはない。
どうしたら…良いんだ?誰か教えてくれ!
此処から通常視点に変わります。
そんな事を、考えながら総一郎は、何時の間にか寝てしまっていた。
そして翌日、総一郎は、睡眠不足のまま布団から起きて昨日、準備をしておいた荷物を鞄に入れて戸締まりと、ガスの元栓を、チェックして家を、出た。
現在の時刻は8時40分である。
何時もより、少しだけ、早歩きで、駅前へ行くと既に全員、揃っていた。
総一郎は何時もの様に、作り笑いをしながら皆におはようございますっと挨拶する。
深雪は何時もの様に呆れながら…。
深雪
『総一郎…。後ろの髪が跳ねてるわよ?だらしないわね…』
っと言い隆司は、笑いながら…。
隆司
『井上…。もう少し早く来いよな』
っと言い…。
舞
『そうよ?女の子を待たすものじゃないわ』
っと隆司の言葉に肯定した。
香澄
『まあ、時間通りには、来ましたし…良いでは、ありませんか』
っと、総一郎をフォローしている。
唯一晶だけ無言で総一郎を見ているだけだ。
総一郎は、晶の視線に、気付き少しの間だけ視線を合わせた。
しかし…。直ぐに視線をずらして、隆司に近づき話し掛けている。
何時もなら視線が合えば総一郎の方から何か話し掛けて一言、二言会話が続くのだが…。
やっぱり避けられているそう思い晶は、悲しくなった。
突然、クラクションが、鳴り全員、音がした方へ顔を向ける。
大きな黒いキャンピングカーの窓が開き40過ぎの黒いスーツを来た男が人の良さそうな笑顔を、浮かべて見ている。
総一郎
『あれ?山村さん。もう腰は大丈夫なんですか?ぎっくり腰だったんですよね?』
総一郎が、そう言うと、山村と呼ばれた男は…。
山村
『ええ…。もう平気ですよ。さあ!皆様、乗って下さい』
そう言うとドアが自動で開きキャンピングカーに乗り込む。
こうして…。一行は海に向かった。
すみません。思ったより前振りが、長くなってしまい漸く海に向かう話が掛けました。今度こそ、海の話に、しないと…。それでは