第13話・文化祭!前編。
何とかクリムゾンヘッドを退けて、総一郎は学校へと急いだ。
文化祭まで後二日。
今回は晶視点で話しが進みます。
昨日は、井上君に家まで送って貰い母さんに冷やかされたのには参った。
その後、テレビに写った映像を見て私は驚いた。
クリムゾンヘッドと名乗るゼノンの幹部に、彼が挑まれた。
私は井上君の携帯に電話をかけたが出ない。
っと、言う事は転身して居る可能性が高い。
私は気になり余り眠る事が出来ず翌朝初めて遅刻をしてしまった。
私が校門まで来ると生活指導の田辺先生が居た。
田辺
『全く!どうせ、夜更かしでもしたんだろ!それにその髪!何だ。その髪は!あ〜ん!』
そう言い嫌な笑みを浮かべ私の肩に手を置こうとしたので避けた。
はっきり言って、気持ち悪いので…。
空かされた田辺先生は、顔を赤くして居る。
晶
『すいませんが文化祭の準備で忙しいので…』
私は田辺先生に目もくれず教室へ向かおうとすると…。
田辺
『待て!話しは終わって無いぞ!』
そう言い私の手首を掴み睨み付ける。
私は痛くて顔を顰める。
すると、井上君が走って来るのが見えた。
彼は私が田辺先生に絡まれて居るのを見て止まり田辺先生の手首を掴んで私の手首を、開放させると、井上君は笑いながら言った。
総一郎
『田辺先生ぇ〜しつこい男は嫌われますよ〜』
田辺
『なっ!井上!』
田辺先生は痛いのか顔を顰めている。
総一郎
『女の子相手に、凄んでどうするんですかねぇ?先生?まさかと思いますけど、その竹刀で、女の子を叩いたりしませんよね?』
井上君は顔は笑って居るけど凄い威圧感を発して居る。
井上君は田辺先生の手首を放して…。
総一郎
『天野さんは初めて遅刻したんだから許してあげて下さいよ。その替わりに、僕が罰掃除しますから…』
そう言い私の手を、握ると井上君は急いで校門を抜けて靴箱まで行く。
突然手を握られてしまい私は混乱した。
頭に血が昇り胸が、ドキドキして、必死に冷静になろうと努力した。
総一郎
『あっ…』
っと、呟き私の手を放すと…。
総一郎
『ゴメン…』
そう言い謝ったが、私は別に嫌じゃ無かった。
井上君の手は、見た目に反してゴツゴツしてる。
多分、手の平に蛸が出来ているんだと思う。
晶
『別に、謝らなくても、良い…』
そう言うと井上君は不思議そうな顔をして居る。
私も井上君も無言で靴箱から上履きを取ると履き替えクラスに急ぐ。
私は彼の手の感触を思い出し赤面してしまった。
総一郎
『おはよう!』
っと、元気良く井上君は挨拶しながら、教室の中へ。
私は少し後から入る。
深雪
『全く…相変わらずね。少しは成長したら?』
っと一之瀬さんに言われた井上君は、笑いながら言った。
総一郎
『昨日…。用事があって行って来たんだよ…』
深雪
『へ〜。何の用事?』
そう言い一之瀬さんは、井上君を見る。
総一郎
『いや〜。ちょっとデートして来て、そのまま朝帰りなんですよ…』
っと言い大袈裟に溜め息を漏らした。
一之瀬さんは絶句しクラスの皆も、キャーキャー騒いで居る。
私は呆れて何も言えなかった。
彼がシャドウブレードである事を知って居る人なら嘘だと分かるけど知らない人ならその言葉通りに受け止めてしまう。
事実、一之瀬さんは井上君を睨み…。
深雪
『最低ね…』
っと冷たい声で言いソッポを向く。
井上君は笑いながら…。
総一郎
『あのね…僕がモテない事を、知ってるでしょ?何を…本気にしてるんだか…』
そう言うとクラスの皆も『確かに!』とか『まあそんな事だろうと思ってたよ』
とか、口々に言って一之瀬さんは漸く笑い溜め息を漏らした。
険悪だったムードも和らぎ皆で、文化祭へ向けて最後の追い上げを、始める。
大体の飾り付けを終わらせ皆、満足そう…。
ふと、井上君を見ると頭を右手で掻きながらメモ用紙に何か書いて居る。
何時もの穏やかな顔では無く、真剣な顔をして、居る。
その顔は正直に言うと、格好いいと思う。
事実、何人かの女子が、見惚れて居る。
井上君は、そんな視線に気付く事無く何かを書いては、消しゴムで消して書いて居る。
晶
『何、書いてるの?』
総一郎
『えっ?ああ…文化祭のメニューを、考えていたんですよ。』
井上君はそう言いながらメモ用紙に書いて居る。
晶
『どんな、メニュー?』
総一郎
『いや…。未だ、決めて無いんですよ。低コストで、旨い物を作るとなると…』
井上君は又、考え込んで居る。
晶
『焼き飯系の物かトースト系の軽い物の方が良いと思う。他のクラスとかも食べ物関係を出店して居るから…』
そう提案すると…。
総一郎
『焼き飯系もトースト系も予算内で何とか、なりそうだな…。皆!今回は軽食系で行くから各自、皿を、2枚ずつ家から、持って来てくれ!』
井上君がそう言うと…。
クラス全員
『任せといて!』
っと返事をした。
その後皆は最後の点検をしワイワイ騒いで居る。
井上君は、コッソリ教室を出るのを見た。
深雪
『ねぇ…。天野さん』
一之瀬さんに声をかけられ振り向く。
晶
『何?』
深雪
『昨日の夜、変な映像が流れたの知ってる?』
晶
『ええ…知ってるわ…。私も見たし…』
深雪
『もしかして…。この前の遊園地の奴等かな?』
一之瀬さんは、不安そうな顔をして言う。
晶
『多分…。そうだと思うけど、シャドウブレードが、居るんだから大丈夫だと思うわ…』
井上君が、ゼノンに負けるとは思えないし。
私がそう言うと…。
深雪
『ゼノンって、一体何が目的なのかな?』
晶
『さあ…。どんな目的があるにしても、私達には知りようが無いわ…』
そう言うと一之瀬さんは何か考え込んで、居る様だった。
晶
『まさかとは…思うけどゼノンの事を調べようと思ってない?』
そう言うと一之瀬さんは一瞬驚いた顔になった。
晶
『止めておいた方が良いと思うわ…』
もし調べるとなると彼の事まで知ってしまうかも知れない。
そんな事になったら大変だし危険過ぎる。
私は話しを変える為に、言った。
晶
『去年の文化祭は周れたの?』
深雪
『うん…。一時間位は、周れたんだけど、気になって教室に戻ったら忙しそうで途中で切り上げて店に戻って手伝った位』
一之瀬さんは苦笑をして溜め息を漏らした。
深雪
『去年の文化祭の売り上げ金額10万超えた位だからね…』
晶
『そんなに…』
私が、絶句して居るのを見て…。
深雪
『今年は…多分、大丈夫だと思うけど』
女子
『一之瀬さん〜。ちょっと来て〜』
っとクラスの女子に呼ばれ…。
深雪
『分かったわ!すぐ行くね!』
そう言うと、一之瀬さんは走って行った。
隆司
『あれ?井上は?』
田中君が、教室に入って来て言った。
晶
『田中君…。どうかしたの?井上君なら、居ないわよ?』
隆司
『いや…。調理器具とかの準備は、どうなってるのか聞きたかったんだけど…井上が何処に居るのか知らないし…』
田中君はそう言い終わると教室を出て行った。
私は井上君を探しに教室を出た。
多分、屋上に居る筈。
昨日、戦いに行って居る筈だから寝てる可能性が高い。
辺りには蝉が、地中から這い出て鳴いて居る。
日差しも強くなり完全に夏真っ盛りである。
私は何時もの様に屋上へ行くと扉を開けた。
穏やかな風が私の体を、吹き抜けていく。
辺りを見渡しても、彼は居なかった。
横の梯子を昇ると給水塔の影で丸まって寝て居る井上君を見つけた。
風通りがかなり良く彼は熟睡している。
私は井上君を起こす為に近付くが、目を覚まさない。疲れて居るかな?
私は起こすのが忍びなくなり井上君を見る。
井上君は夏なのに夏服を来て居ない。
青嵐学院高校の制服は、上下青色の、ブレザーである。
井上君は寝息を立て未だに熟睡中。
ガチャリ!っと大きな音が鳴った途端、井上君は突然目を覚ました。
晶
『おはよう…』
そう声をかけると…。
総一郎
『えっ!天野さん!』
っと心底驚いた顔をして言い私は、無言で井上君を見る。
総一郎
『あの…。何か?』
井上君はそう言いながら私から視線をずらす。
何時もなら真っ直ぐ私を見るのに…。
悲しくなったが、顔には出さずに…。
晶
『田中君が貴方を探してたわよ…』
そう言うと井上君は欠伸を一つすると…。
総一郎
『田中は、何て言ってたの?』
晶
『調理器具が、どうなってるのかが知りたいって言ってたわ…』
総一郎
『ああ…。それなら大丈夫だよ…。今日、青空に取りに行くから…』
晶
『青空?』
総一郎
『僕の働いてるバイト先の名前だよ…。』
私は彼の言葉に驚いた。
総一郎
『天野さん…。今日暇?ちょっと頼みたい事が、あるんだけど…』
井上君は申し訳無さそうに言い私を見る。
晶
『頼みたい事って何?』
私がそう言うと…。
総一郎
『調理器具を車に乗せるの手伝って、くれないかな?それなりに、御礼もしますから…』
晶
『分かった…手伝う…』
っと即答した。彼の頼みを断ったりはしない。
総一郎
『ありがとう…。本当にゴメンね…』
申し訳無さそうに言う彼に私は…。
晶
『貴方は、気にしなくて良いわ…』
っと呟く様に言うと私は彼の横に座った。
井上君は何も言わず眠たいのか目がショボショボして居る。
彼は、大きな欠伸をすると…。
総一郎
『おかしいな…。僕は、人が近くに居ると眠れないのに…』
そう呟く様に、言い彼は目を閉じる。
少しすると彼は規則正しい寝息を立て始めた。
穏やかな風が吹いて私も目を閉じ風を感じる。
私は隣りで寝て居る井上君を見つめる。
男の子の割に眉毛が長く顔の線も細い。
パッと見は女の子に間違えられそうだけど…。
でも…。本当は何者にも負けない強さと優しさを持って居る人…。
彼が私の目の前で、転身して必ず守るからと言ってくれた時から私は…。この人に惹かれたのだ。
私は正直、彼には無理をして欲しくない。
私に出来る事は、少ないけれど、力になりたいと思う…。
彼の負担が少しでも和らぐのならそれだけで嬉しいから…。
でも、そんな事を本人には言えそうに無い…。
私は知らず知らず溜め息を漏らした。
私は彼を起こさない様に立ち足音を消して梯子を降りる。
扉を開けて階段を下りると、一之瀬さんが階段を上がろうとして居たので私は…。
晶
『井上君なら居なかったわよ…。他の所じゃないかしら』
そう言うと、一之瀬さんは驚いた顔をして…。
深雪
『何で私が総一郎を探してるのが分かったの?』
晶
『何となくね…。それよりも、田中君を見なかった?』
そう言うと、一之瀬さんは首を横に振り…。
深雪
『さあ?でも多分、総一郎を探してるんじゃないの?』
晶
『そう…』
私は田中君が何処に居るのか?考えて居ると一之瀬さんが私の顔を見てるので…。
晶
『何?』
そう聞くと一之瀬さんが真剣な顔をして居る。
晶
『どうかしたの?一之瀬さん…』
そう聞くと一之瀬さんは一瞬、表情が歪んだ様に見えた。
深雪
『ううん…。何でもないの。それじゃあね…』
そう言うと一之瀬さんは走って行った。
結局、井上君は授業には出て来なかった。
最後の授業が終わり私は屋上へ足を運ぶ。
外は既に夕暮れで、横の梯子を、昇ると給水塔の影で、丸まって寝て居る井上君を発見。
私は井上君に近付き体を揺すると井上君は、目を開けた。
晶
『井上君…もう夕方よ。青空に行くんでしょ?』
総一郎
『えっ!もう…。そんな時間なのか!』
そう言って井上君は体を起こした。
晶
『良く寝てたわね…』
そう言うと井上君は目を擦り背伸びをした。
彼は微かに笑うと…。
総一郎
『久しぶりに、熟睡したよ…』
晶
『それよりも貴方…出席日数は大丈夫なの?』
彼は近頃、ゼノンとの、戦いや、バイトで忙しいのか殆ど学校に来て居ない。
晶
『このままだと留年するわよ…』
私が心配して言うと井上君は笑いながら…。
総一郎
『その事なら大丈夫…』
総一郎
『それじゃあ一緒に行きますか』
そう気楽言うと井上君は梯子を降りる。
私は井上君の後ろをついて行く。
階段を下り下駄箱へ…。
でも少し気になる事が、ある。
それは彼の態度がよそよそしい事…。
本当に微妙な変化だけど私は直ぐに分かった。
この前までは目を見て話していたのに今は視線をずらして居る事。
話し方も丁寧になり他人行儀になって居る事。
何か気に触る様な事をしたのかな?
そんな事を考えて居る内に小さなお店の前で井上君は立ち止まった。
看板には、『喫茶店・青空』っと書かれてある。
総一郎
『天野さん…此所です…まあ…。ちょっと小さい店ですけど…』
井上君は笑いながら言いドアを開ける。
カランカラン!っと鈴の音がする。
中に入ると、お店の中は落ち着いた雰囲気で辺りを見渡すとレコードが置いてある事に驚いた。
コーヒーの香ばしい香りがする。
総一郎
『マスター。何で、ニヤニヤしてるんですか?』
井上君は呆れた声を上げ声のした方を見ると明らかにヤクザなのでは?
っと、思う様な顔をした男の人が居た。
???
『お前が女を連れて来るとは、思いもしなかったのでな…。でっ!あの娘は、お前のコレか?』
っと、言い小指を立てて居るのを見た井上君は、珍しく慌てた様子になり言った。
総一郎
『あのな!そんな訳ないだろ!大体、天野さんに失礼だろうが!全くそうやって直ぐ人をおちょくるの止めて下さいよ』
井上君はそう言うと溜め息を漏らした。
私は、唖然として居ると井上君が言った。
総一郎
『ゴメンね…。この人…顔は怖いけどヤクザじゃないから…』
っと笑いながら言い…
???
『誰が、ヤクザだ!』
っと言われた井上君は、笑いながら言った。
総一郎
『アンタ以外に誰が居るのかな?』
???
『ほう〜この俺に喧嘩を売るとは良い度胸だ!』
総一郎
『最初に喧嘩売って来たのは誰だ!』
っと言い合いを始め辺りに居るお客さんも口々に煽り出した。
すると…。
???
『アンタ達!喧嘩をするなら外でやりな!』
っと、怒鳴り声が辺りに響き物凄い美人の女の人が、カウンターの中から出て来て二人を睨む。
物凄い迫力に二人は黙り込む。
そんな二人を見てその女の人は…。
???
『全く…。少しは他の人の…んっ?』
っと何か、言い掛け私の視線に、気付いた彼女は何故か井上君の方を見ると、笑い…。
???
『遂に、総ちゃんも漢になったのね…。お母さん嬉しいわ…』
っと言いポケットから、白いハンカチを取り出し目を拭く。
総一郎
『亮子さんまで…。何を言ってるんですか?それに、誰が誰のお母さんですか…』
っと呆れた顔をして言い溜め息を吐く。
晶
『この人達は?』
私が聞くと、井上君が何か言う前に…。
亮子
『私の名前は伊藤亮子』
修二
『そして俺が伊藤修二。気軽にマスターと呼んでくれて良い』
晶
『私の名前は、天野…。天野晶…。井上君には、何時も、御世話になっています』
そう言って頭を下げる。
亮子
『宜しくね…。晶さん…っと、そう言えば総ちゃんに、頼みたい事があるんだけど…』
申し訳無さそうに、言い井上君を見る。
総一郎
『何ですか?』
亮子
『ほら…。前々から頼んで居た新型の、コーヒーメーカーが出来たらしいの…。それを貰って来てくれないかな?』
総一郎
『分かりました。それじゃ行って来ます』
そう言い井上君は店を出る前に…。
総一郎
『すいません…。天野さん…。直ぐ戻ってきますから、ちょっとだけ待って下さい』
それだけ言うと店を出て行った。
修二
『しかし…。本当に珍しいな…。アイツが女の子を連れて来るとは…』
修二さんはそう言いカウンターの中へ。
亮子
『それじゃあ、ゆっくりして行ってね』
そう言うと、亮子さんはお客さんに呼ばれた方へ行ってしまい私は、時間潰しに本を読み始める。
熱中して居たのか?辺りを見渡すと私以外、誰も居なかった。
すると修二さんがジュースを、持ってカウンターから出て来た。
修二
『ほら…アンタの分だ…受け取れ』
そう言うとアップルジュースを私は頭を下げる。
亮子
『お疲れ様です!お先に失礼します〜』
そう言いながら亮子さんはお店を出て行った。
修二
『天野さんだったよな…君は総一郎が、シャドウ・ブレードである事を、知って居るね…』
いきなりそんな事を言われ私は驚いた。
そんな私を見て修二さんは笑い…。
修二
『総一郎を見て居れば、分かるよ…』
そう言った後、修二さんは真剣な顔をして…。
修二
『総一郎の事を、宜しく頼む…。初対面の君に
こんな事を言うのは…。非常識だと思うが…』
修二
『アイツが他人に対してあんなに心を開いて居るのを見るのは…始めてなんだ…』
修二
『アイツは、ゼノンと、戦い始めた時から…余り人と深く関わりを持とうとは、しなくなったからね…』
そう言い修二さんは溜め息を吐く。
私はこの人は本当に井上君の事が大事なんだなと感じた。
晶
『心配だけど、彼なら…きっと…どんな危機も、乗り越えられると、私は信じてます…』
そう言うと、修二さんは笑い…。
修二
『君は総一郎の事が好きなんだな…』
そう言われて私は、顔が熱くなった。
晶
『………』
無言の私に、修二さんは笑って…。
修二
『しかし…アイツは鈍いからな…』
そう言われ私は、確かに鈍いと思った。
他の事は敏感なのに…。
そんな事を、考えて居ると…。
総一郎
『やれやれ…』
っと言いながら彼が帰って来た。
両手に、大きな段ボールを抱えて…。
総一郎
『お〜い!マスタァ〜!これ…。どうするんだ?って…何、ニヤニヤしてるんですか?』
井上君は訝しげな顔をして言う。
修二
『そんな事より、文化祭で調理器具を借りに来たんだろ?一応固めて置いたから後は、車に積むだけだ』
総一郎
『それじゃあ天野さん…ちょっと来て下さい』
そう言いながら彼はカウンターの中へ。
私は井上君の後をついて行く。
厨房の奥の方に調理器具が綺麗に、整頓され置かれてある。
総一郎
『取り敢えず天野さんはそっちの軽い方を御願いします』
そう言うと井上君は持って居た荷物を床に置き食器の入った段ボールを、持つと裏口のドアを開け外にあるトラックに積み始める。
私も、テーブルクロスやカーテンを車に積む。
私が2、3回往復して、居る間に彼は10回位は往復して居る。
息切れ一つせず、井上君は最後の段ボールを車に積むと…。
総一郎
『お疲れ様…。本当に、ありがとう…。助かりました…』
っと言い頭を下げる。
総一郎
『手伝ってくれた御礼をしたいんですけど生憎、手持ちが少ないんで僕の料理でも良いですか?』
っと言われ私は頷き…。
晶
『良いわよ…』
総一郎
『マスター!厨房を借りるよ!』
井上君が、そう言うと、修二さんは…。
修二
『ああ…。構わん!好きに使え!』
そう言われた井上君は、笑い…。
総一郎
『天野さん。直ぐに作るから少しだけ待ってて、下さい…』
そう言うと井上君は料理の準備を始める。
私が、戻って来ると修二さんは…。
修二
『アイツの料理は本当に美味いから、アイツが、店に居る時は何時もより客が多いから、大変なんだよ…。期待して待ってな…』
少しすると厨房から良い匂いがしてきた。
10分程で井上君は戻って来た。
総一郎
『はい…。お待たせしました』
そう言いながら井上君は厨房から出て来ると皿に炒飯を移す。
その動作に、無駄は一切無く私は見惚れる。
私は割箸を手に取り…。
晶
『頂きます…』
そう言うと一口食べる。
こんなに美味しい炒飯を食べたのは生まれて始めてかも知れない。
御飯は、硬過ぎず柔らか過ぎない。
味付けは塩と胡椒で具材の味を、生かして居るし卵は半熟。
晶
『美味しい…』
素直に、感想を伝えると彼は、一瞬、固まり視線をずらし…。
総一郎
『良かった…』
っと呟く様に言うと井上君は笑った。
その後、井上君は小さな白い箱を袋に入れて私に渡すと…。
総一郎
『後で家族と一緒に食べて下さい』
総一郎
『マスター。取り敢えず天野さんを家に、送ってから学校に向かうんで、先に行ってて下さい』
修二
『ああ…分かった。戸締まり宜しくな…』
そう言うと、修二さんは笑いお店を出て行った。
井上君は、カウンターの中へ入って行った。
少しすると、彼は厨房の電気を消して、そのまま外に出て看板を、片手で持ち上げて、中に入って来た。
晶
『御馳走さま…』
総一郎
『どう致しまして…』
そう言いながら看板を、床に置きテーブルの上にイスを置いて行く。
作業を、終わらせた彼と私は店を出る。
その後、私と井上君は、色々な話しをした。
友達の事や文化祭の準備の事。
あっという間に、自宅に着き井上君は…。
総一郎
『じゃあ…』
そう言うと走って行ってしまった。
その後、井上君から貰った物を開けて見ると手作りのプリンだった。
とても美味しかった。
やっと、文化祭の準備編が終わりました。
仕事の合間にちょっとずつ書いて居るので遅くなってしまいますが気長に待って下さい。
次は文化祭本番を書きますが、長くなりそうです。
それでは、また…。