第7話・異世界アース後編。
4つの鍵を全て揃え『試練の塔』に、足を踏み入れた総一郎。
此所で、彼は最大の試練を受ける事になる。
総一郎視点で、話しが進みます。
塔の中へ足を踏み入れた途端、地響きが起こって危うく転びそうになる。
振り向くと、扉が消えており僕は、前へ進むしか道が無かった。
辺りは全面ガラス張りでシオンさんに、託された鍵で入った部屋に驚く程良く似ている。
そう言えば学校とバイトを無断で一週間近く休んでいるな…。
後で上手い言い訳を考えておかないとな…。
皆、元気にして居るだろうか?
ゼノンの事も気になる。
早く試練を、終わらせて元の世界に帰らなきゃならない。
僕は、ひたすら前に進んで行く。
中は、まるで迷路の様に曲がりくねって居る。
少しの間、歩いて居ると巨大な銀色の門が見えて来た。
僕は扉に触れると、ギギギギ!っと扉の軋む音と共に扉が開いた。
中に入るとやっぱり全面ガラス張りで僕の目の前に、巨大な鏡がある。
この世界に来た時も巨大な鏡が、在った事に気付いたのだが一体、この鏡が何なのか?見当も付かない。
突然鏡が光を放って僕は眩しさの余りに目を閉じてしまった。
光が収まって目を開けると僕は唖然とした。
多分、今の僕の顔は相当間抜けな顔になって居る筈だ。
何故なら今、目の前に、居る人物はどう見ても、天野さんにしか、見えない。
幻覚か?夢なのか?
僕は頬を抓ったり叩いたり瞬きしたりしたが目の前の人物はジッ!っと僕の顔を見て、その存在が消えたりはしなかった。
晶?
『お前が、試練を受けに来た者か?』
天野さんの声なのに奇妙な威圧感を感じる。
僕は無言で頷くと…。
晶?
『では、お前に問う…。何の為に力を求める?』
その質問に、僕は自分の本心を伝える事にした。
総一郎
『人の為に…。っと言いたいけど正直、他の人達が生きようが死のうが、どうでも良い…。自分にとって大切な人達を守れる様になりたいから力が欲しいんだ』
僕はハッキリと宣言する
晶?
『では…。己の心の闇と向き合い剣を納めて勝利を得るが良い…』
それだけ言うと、跡形も無く消え去った。
僕は、剣を納めて勝利を得よと言う言葉の意味を考えて居た。
だが、答えが出せないまま試練が訪れようとして居る事に僕は気付かなかった。
僕は視線を感じて前を、見ると僕の姿が、映って居たが鏡に映った自分が動いて居ないのに、ドンドンこちらに、向かって来る。
そして…。僕の姿が完全に、鏡から抜け出た時、ソイツは口を開いた。
???
『さて…。お前を殺してお前に成り代わり殺戮の限りを尽くしてやる!』
邪悪な笑みを、浮かべたソイツは淡々と僕に話しかけて来た。
総一郎
『お前は誰だ』
そう聞くとソイツは信じがたい言葉を口にした。
総一郎?
『俺はお前だよ…。井上総一郎…。尤も俺はお前の中の負の力が具現化しただけださ…。死ね…。総一郎!転身!』
そう言うと奴の体は黒い光に包まれて中から黒に所々、赤い色の線みたいな物が浮き出ている鎧を身に着けて居る。
僕の姿に似ては居る。
僕も転身して防御の体勢を取る。
総一郎?
『死ね!総一郎!』
ソイツは左手に黒い光が集まり全身が黒く光る。
次の瞬間、黒い光の塊がソイツの左手から、飛び出し直撃を食らった。
一瞬、意識が、飛びそうになったが、何とか堪え次の攻撃に備える。
???
『己を見つめる事が出来ぬ者に、そして…。己を超える事が出来ぬ者には人に、打ち勝つ事は出来ない…』
突然、頭の中に声が響き僕は驚いたが今は、気にして居られない。
又、ソイツは黒い光の塊を放ち僕は、防御したが吹き飛んで壁に激突して一瞬息が詰まった。
???
『確かに負の力は…。悪の力は、絶大だが決して絶対では無い…。何時か敵だけでは、無く自分も大切な人や物も破壊してしまうだろう…』
又、聞こえて来た。
前を見るとソイツの黒い光が、少しずつ小さくなって居る。
黒い光の塊が、飛んで、来たが、両手で防御して耐える。
突然黒い光の塊が爆発し意識が飛びそうになり、一瞬だけ一人の女の子の顔が頭を過ぎった。
すると突然、体中に力が涌いて来た。
???
『どんなに力があり人々から、英雄と呼ばれてもそれだけでは、真の悪に打ち勝つ事は出来ない。大切な人や物を守ろうとする心がお前に無限の力を与えてくれるだろう。そしてその力こそ真の悪に対抗、出来る唯一の武器である事を忘れてはならない…』
又、声が聞こえて来た。
すると黒い光が、弾けて中から、黒と金色の鎧を身に着けた人が、立って居た。
その人は、僕が見ていた特撮ヒーローに出て来る主人公に良く似ている。
???
『総一郎…己を信じろ!未来を切り開くのは…。お前自身なのだ…』
そう言うと、その人物は光の中に消えて行った。
僕は目の前のガラスに眼を向けると先程まで見ていた姿に変身して居た。
突然、意識がブラック・アウトして、落ちて行く感覚に襲われて慌てて、目を開けると僕は全面、ガラス張りの部屋に立って居た。
一瞬、元の世界に帰れたのか?っと思った。
僕の目の前に、ある巨大な鏡に、文字が書かれておりその文字は…。こう書かれてあった。
『異界より帰りし、黒き戦士、金色の龍を纏いて真なる悪を、討ち滅ぼさん。世界は光に、包まれ生命は安息を得る』
相変わらず訳の分からない予言?みたいな感じを受けるが…。
後ろを見ると、扉が開いていたので、僕は慌てて部屋から出た。
どうやら元の世界に帰る事が出来たらしい。
僕は迷路の様な道を歩き何とかシオンさんの居る部屋に辿り着いた。
僕がノックする。
コンコン!
シオン
『開いてるよ!』
っと言われて僕は部屋の中へ足を踏み入れた。
シオン
『おかえり…無事に試練を乗り越えた様だね…』
シオンさんは、振り向き穏やかな笑みを浮かべて僕に話しかける。
総一郎
『まあ…何とか4つの鍵を手に入れて自分の悪と向き合いましたよ…』
そう言うと、シオンさんは驚いた顔をして言う。
総一郎
『君は今、何て言ったんだ?』
そう言われて僕は言う。
総一郎
『4つの鍵を手に入れて自分の悪と向き合ったんですけど…シオンさん?僕は何か変な事、言いました?』
シオン
『確か鍵を守護するモンスターが居た筈だが?』
総一郎
『ええ…。4匹居ましたが全て倒しましたよ…。苦労しましたけど…』
僕は、苦笑いしながら、そう言うとシオンさんは笑みを浮かべる。
総一郎
『シオンさん…お世話になりました…』
シオン
『気を付けて、帰りなさい…』
そう言われ僕は頭を下げシオンさんの部屋を出るとエンジェルが居た。
エンジェル
『無事に試練を乗り越えた様ですね…』
そう言われて僕は無言で頷いた。
エンジェル
『私に、ついて来て下さいね…』
そう言われ僕はエンジェルの後ろをついて行く。
少し歩いて黒い扉に辿り着くと言った。
エンジェル
『それでは、この扉を、開ければ貴方の家の近くに出られる筈です』
エンジェルは、そう言うと消えてしまった。
僕が、扉に触れると扉が開き外に出た。
辺りは未だ薄暗く携帯の時計を見ると朝の4時位で、僕は慌てて家に向かって走り出した。
やっと、第7話が終わりました。
次の話しはシリアスな話しになる予定です。
後書きまで、読んで頂き、ありがとうございます。