第7話・異世界アース中編。
ワーウルフとドラゴンを苦戦の末、倒した総一郎は残り2個の鍵を求めてティアラと共に鍵を守護するモンスターに会いに行く。
今回は、ティアラ視点で話しが進みます。
総一郎
『なあ…。ティアラ』
静かだけど辺りに響く様な声が私に届いて私は、少なからず緊張を強いられる。
ティアラ
『何?』
私は緊張を悟られない様に彼に言葉を掛ける。
総一郎
『やたらと、不気味な所に来たな…』
そう言いながら彼は辺りを警戒する様に見渡す。
今、私達は墓場に居る。
此所に鍵を守護するモンスターの一匹。
ボーン・プリズナーが、待ち構えて居る。
ワーウルフと、ドラゴンを打ち負かしたとは到底思えない人だ。
夜の闇を、思わせる様な黒い髪と目を持ち変わった服を身に着けて居る。
人の良さそうな顔立ちに小柄な体。
正直、最初は大丈夫なのかコイツは?
っと、思ったけど直ぐに私の心配は払拭された。
ワーウルフとの戦いも、ドラゴンとの戦いも私はコッソリと見て居た。
危なくなったら助けようと思った。
でも彼は、どんな状況下でも冷静さを失わず逆転の一手を考える事が出来る事を知った。
優しさと強さを持つ事も知った。
ボンヤリして居ると急に彼の顔が、目の前にあり私は固まった。
総一郎
『さっきから、僕の顔をずっと見てるけど僕の顔に何か付いてる?』
彼は、不思議そうな顔をして私の顔を見ている。
ティアラ
『別に…。それよりもうすぐ鍵を、守護するモンスターが見える筈よ…。精々、頑張りなさい』
私は、それだけ言うと姿を消す。
勿論、他の人には完全に見えないし、触れる事も出来ない。
彼は真っ直ぐ堂々と歩いて行く。
何時もの、穏やかな年相応の顔は、なりを潜めており今の彼は、戦う戦士の顔に変わって居る。
眉が、吊り上がり以外と鋭い目を、前に向けて、居る。
彼は突然、立ち止まる。
総一郎
『そこに、居るんだろ?出てきなよ…』
そう言いながら、身構えている。
すると物陰から全身骨のモンスターが現れた。
6本の腕に、剣や槍に斧などを持っている。
鍵を守護するモンスターであるボーン・プリズナーは、体を左右に揺らしながら、彼にゆっくり、近付いて行く。
総一郎
『転身!』
叫ぶと全身が輝き全身が漆黒の鎧に包まれる。
突然、プリズナーが雄叫びを上げながら彼に襲い掛かって行く。
6本の腕を時間差で少しづつタイミングをずらして攻撃を繰り出す。
あらゆる猛者達を、倒し退けて来た連続攻撃を、アッサリと、躱した彼は一気に間合いを詰める。
両手でプリズナーの体を掴んで一気に上空へ放り投げる。
プリズナーは悲鳴を上げ彼も追い掛ける様にジャンプして上空で再び組み付いた彼はそのまま回転しながら落下して行く。
ドゴン!
そして凄まじい音とプリズナーの悲鳴が辺りに、響き私は目を瞑った。
土煙が舞い散り私は咳き込んだ。
ギャアギャア!っと鳥達が騒ぎ飛び立って行く。
流石のプリズナーも彼の敵では無いのかも、知れない。
しかし彼は慌てた様子でプリズナーから離れた。
総一郎
『見掛けに依らず頑丈なんだな…』
彼は呆れた様な関心した様なそんな微妙な声音を出した。
彼が倒した筈のプリズナーは、平然と、立ち上がって又、不気味な動きをしながら彼に向かって、行く。
連続攻撃を、躱しながら彼は何故か攻撃せずに、プリズナーの動きを見ている。
私は攻撃が当たらないかとヒヤヒヤしながら見守って居た。
そんな、私の心配は直ぐに消える。
彼は、プリズナーを蹴り飛ばして左手に光が集まって行く。
あのドラゴンを倒した技を繰り出そうとしているのが分かった。
どんどん光が集まり全身が発光し始めて居る。
明らかに、エネルギーの溜め過ぎなのでは?っと思ったが彼は構わずチャージしている。
プリズナーは起き上がり彼に、向かって突進して行く。
彼は横に大きくステップして突進を躱しチャージを続ける。
次第に、光が螺旋を描き彼の全身を覆う。
総一郎
『食らえ!スターライトブレイク!』
光が尾を引き地面を抉りながら、プリズナーに、向かって凄まじい速度で近付いて行く。
プリズナーは、まともに彼の技を食らって跡形も無く消え去った。
突然、光が発生して銀色の鍵が、彼の目の前に現れて、彼は鍵をしっかり握り締めた彼は、変身を解いた。
彼は急にフラつくと片膝を着いて肩で、荒い息をして居る。
私は慌てて姿を表して彼に近付く。
ティアラ
『大丈夫!』
っと声を掛けたけど彼は無言で私の顔を見たけど目が虚ろで焦点があって居ない。
総一郎
『ちょっと、無茶しただけだよ…』
っと、明らかに、無理して居るのが分かる。
総一郎
『少し眠れば治るから…大丈夫…』
それだけ言うと彼は鼾を掻いて寝てしまった。
まだあどけない顔をして彼は眠り続けて居る。
少しすると彼は目を覚まし起き上がった。
彼は頭を数回振り両手の手の平で頬を叩き気合いを入れた。
総一郎
『アイツを、倒す為にはそれなりに溜め撃ちしないと復活して来そうだったからね…』
彼は、そう言うと欠伸を一つした。
余りに普通な態度に私は怒りを通り越して呆れてしまった。
ハッキリ言って心配して損した…。そんな気分だよ…。
尤もこんな事は口が裂けても言わないけど…。
彼は、そんな私の気持ちに気付きもしない。
総一郎
『最後の鍵を探しに行こうか…』
っと言って来たので私は怒りを押さえつつ言う。
ティアラ
『さあ早く行くわよ…』
っと言い後ろを振り向かず前に進む…。
最後の鍵を、守護するモンスターは、他の3匹のモンスターなんて、問題にならない程に強い…。
圧倒的なパワーとスピードを誇りその体は、あらゆる攻撃を弾き返す。
私は彼に、その事を伝えると彼は…。
総一郎
『ふ〜ん』
っと言っただけだ。
それ以外、彼は何も言わず黙った。
此所からだと、どんなに急いでもゴーレムの居る場所に辿り着くのに3日は掛かる。
もうすぐ、夜明けが近付き眠くなって来た。
総一郎
『そろそろ休もうか?』
彼に提案されて内心驚きながらも肯定し食料調達を彼に任せ私は薪の準備をする。
幸い近くに木々があるので簡単に薪が集まった。
暫くすると彼は果物を、抱え込む様に、持って来た。
持って来てくれた果物を食べながら、火を起こして火が消えない様に注意して見る。
上を見上げれば吹き散らした様な、星空が綺麗で前を見れば彼が居る。
彼は、果物を両手に持って食べまくって居る。
さっきまでの表情は完全に消えて幸せそうな顔をして居る。
戦って居る時の彼と普段の彼とが余りにも印象が違う。
戦って居る時の彼は冷静沈着で触れれば切れそうなナイフみたいな感じの印象を受ける。
普段の彼は穏やかで太陽みたいな印象を受ける。
だから、どっちが本当の彼なのか?
演技をして居るのかな?と思う事も、あるけど、正直分からない。
どっちでも、彼は彼なのだから…。
彼は、食べ終わると眠たくなって来たのか?
時々、大きな欠伸をしては首が上下している。
ティアラ
『眠たいなら寝たら?』
総一郎
『おやすみ…』
そう言うと草むらに寝転がり、暫くすると微かな寝息を立て眠り始めた。
余りの寝付きの良さに、呆れながらも、それだけ体が疲れて居るのだろうと、私は思った…。
私も眠くなったので休む事にした。
翌日、私が目を覚ますと彼の来て居る茶色の上着が、上から被せられて、居た。
私は起き上がって辺りを見渡したが彼の姿は見えない。
一瞬、不安に襲われたが直ぐに彼は戻って来た。
長さ50センチ程の四角い箱を抱えて…。
ティアラ
『それは?』
私は彼の持って居る箱を指差し問うと彼は言う。
総一郎
『水筒だよ…』
水筒?聞き慣れない単語が出て来て戸惑った。
総一郎
『水筒って言うのは水を汲んで水を持ち歩く事が出来る道具だよ…』
彼はそう説明すると私に水筒とやらを手渡した。
総一郎
『喉が、渇いたら飲んで良いよ…。そうそう…。中身が空になったら言ってくれ…』
そう言われ私は首を縦に振るのが精一杯だ。
酷く緊張を強いられる。
胸が苦しくて顔が熱いし切ない…。
こんな感情を人に抱いた事は一度も無い。
理解不能の感情…。
私は必死に二転三転する思いを押し殺して彼の前を行く。
私も彼も殆ど会話も無く黙々と前へと進む。
ティアラ
『この山を越えた所に、最後の鍵を守護するモンスターが居る筈よ…』
総一郎
『そうか…もうすぐなんだな…』
彼は少し嬉しそうに呟き歩調を早める。
この森を抜けると、ゴーレムが居る。
ティアラ
『もうすぐ…最後の鍵を守護するモンスターが、見える筈よ…』
総一郎
『ああ…行って来る!』
それだけ言うと彼は振り向きもせず歩き出した。
私も姿を、消しつつ彼の後を追う。
辺りは所々に石柱が建ち並び地面は石で敷き詰められてある。
彼は、辺りを警戒しつつ歩き続ける。
ふと彼は立ち止まり突然横に大きくステップして叫ぶ!
総一郎
『転身!』
全身が、輝いて彼の体は漆黒の鎧に包まれた。
次の瞬間、凄まじい地響きと共に巨大な黄土色の塊が落ちて来た。
その衝撃で、地面の石が破壊された。
その黄土色の塊が、突然光を放ちメキメキ!っと嫌な音を立てて、塊から太い腕が生え足も生えて来た。
彼は微動だにせず静観して居る。
徐々に骨格が出来上がりゴーレムが誕生した。
ゴーレム
『グオオオオオ!』
突然、ゴーレムは雄叫びを上げ彼に襲いかかる。
ゴーレムは、その太い腕を振り上げて、力任せに殴りかかる。
しかし彼は片腕でゴーレムの攻撃を受け止めた。
ゴーレムは素早い右回し蹴りを繰り出すがアッサリと片手で、受け止めて不敵に言った。
総一郎
『ふん!デカイわりにはパワーが無いな…』
っと、呟き彼は力ずくで振り解き右の蹴りを打ち込むがゴーレムは片手で防御したが、彼は瞬時に右足を降ろして左の蹴りをゴーレムの横腹に打ち込む。
ビシリ!
亀裂が、入りゴーレムは片膝を付いたが、左のパンチを彼の腹に撃ち彼は両足で踏ん張ったが数メートル後退した。
ゴーレムの横腹の亀裂がみるみる塞がってゆく。
彼もゴーレムも凄まじい攻防を繰り広げて居る。
両者共一歩も引かず殴りあう。
自分の倍以上は背があるゴーレムを相手に押して居る。
だが、ダメージを与えても直ぐに復元する相手に彼はかなりの苦戦を強いられて居る。
彼は大きく後ろにステップして、間合いを空けて呟く。
総一郎
『さってと…どうした物かな…』
今、彼はゴーレムの攻撃を躱しながら思考を巡らして居るのだろう…。
私は、彼の無事を祈る事しか出来ない。
その事がもどかしい。
彼は、ゴーレムの動きを観察しながら攻撃を繰り出す。
何度か同じ事を繰り返して居たが彼は何かを思い付いたのだろうか?
彼は凄まじい勢いで連打を放ちゴーレムの体に、無数の傷を付ける。
総一郎
『見つけたぞ!お前の、弱点を!』
そう言うと彼はゴーレムの中心部に渾身の一撃を打ち込んだ。
ゴーレム
『グオオオオオ!』
ゴーレムは始めて悲鳴を上げ必死に足掻くが無駄な抵抗だった。
彼は冷静に、ゴーレムの攻撃を躱し両手で、ゴーレムの腕を掴むと力任せに上空に放り投げる。
左手に光が集まりだす。
彼は左手を上に挙げ大きく円を描き巨大な輪が、彼の頭上に出来た。
彼の全身が輝き左手を輪の中に入れて叫ぶ!
総一郎
『喰らえ!スターライトランス!』
すると輪から無数の光の槍が、飛び出しゴーレムの体に突き刺さる。
次の瞬間、光の槍が爆発しゴーレムは跡形も無く消滅した。
彼は元の姿に戻ると同時に、光の中から、銀色の鍵が目の前に現れて彼はしっかりと鍵を握り締め私はホッ!とした。
私は姿を表し彼に言葉をかける。
ティアラ
『これで4つの鍵が全て揃ったわ…。でも、貴方は漸く、真の試練へ挑戦する資格を、得たに過ぎない…。気を緩めない方が良いわよ…』
私の言葉に、彼は無言で頷いた。
そう…。鍵を集めるのは言わば試練を受ける試験の様な物なのだ。
4つの鍵が光を放ち地響きが起こる。
地面から巨大な塔が突き出て来た。
鍵の力によって『試練の塔』が現れたのだ。
鍵は一際、光を放ち4つの鍵が一つになる。
彼は、呆然と立ち尽くして居る。
ティアラ
『その鍵で中に入る事が出来るわ…』
そう言うと彼は浮いて居る鍵を握りしめ言った。
総一郎
『今まで、ありがとう…じゃあ行って来るよ…』
そう言うと、彼は鍵穴に鍵を挿し込み回す。
すると門が開き彼は塔の中へ。
彼が、完全に入ったのを確認すると門が閉じ塔が地面の中へ。
私は、この数日間の事を思い出し突然悲しくなり嗚咽を漏らした。
私の中で彼の存在が、どれほど、大きかったのか確認した気分だった。
私は…。嗚咽を漏らしながらも彼の無事を、強く祈った。
漸く、第7話の中盤が終了しました。
大まかな流れは書いて居るのですが、修正しながら、書いて居ます。
相変わらず下手な文ですが見捨てず読んで、貰えると嬉しいです。
それでは、また…。