表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

エナの独白

作者: 談儀祀
掲載日:2011/12/13

「ねぇ、セナ」

 ぶぉん、と竹刀を振り下ろしながらわたしは言う。

「? なに?」

 セナは不思議そうに首を傾げる。父がいないとはいえ、道場内で話しかけたことはなかったからだろうか。セナも竹刀を振る腕は止めずに返事をくれる。まだまだ始めたばかりだからか、セナの竹刀はすぐにぶれてしまって、姿勢を直そうとする様子が見なくてもわかる。

「ううん、なんでもない」

「……そう?」

 結局、何を言うつもりだったのかは忘れてしまった。忘れたのではなく、言いたくなかったのかもしれない。どちらにしてもわたしが何を言おうとしていたのか、セナが知ることはないことに変わりはない。

 セナの腕はまだまだ未熟だ。もう少し大きくなれば冒険者や傭兵、戦士や騎士として活躍することができるだろうし、ルクレールの家に生まれた者にとってそれは何事にも代えがたい名誉であるはずだ。

 だけどセナにはまだまだ修行が足りない。声をかけられたくらいで剣筋を乱してしまうなんてその証左だ。父、ギー・ルクレールがそれを見たならば怒りだしてしまうだろう。だから声をかけるときは、父がいない時にしようと決めていた。セナが怒られてしまわないように。

 ……嘘だ。

 わたしは言おうとしていたことを父に聞かれたくなかった。それだけだった。

 だから忘れてしまったなんて言うのも嘘だ。結局わたしには言う勇気がなかったのだ。言う勇気がないから、これからも言うことはないだろう。これから、なんて長くはないだろうけど。

 

 そう、わたしはきっと明日、死ぬ。

 願わくばセナが、わたしの可愛い双子の弟が。わたしと同じ病で死んだりしないことを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ