目を覚ますと。
目を覚ますと、私は、病院のベッドの上に居た。
規則的に響く時計の音が、妙に冷たい。
体をおこそうとしても、体が動かない。声が出ない。
私は、力を振り絞り「あ……」と小さな声を出した。
すると、ベッドの右前方から、やさしげな声が聞こえてきた。
「あら?一花ちゃん。おなかへった?」
なんだか、聞き覚えのある、どこか懐かしい声。
その人のほうをなんとか見ると、そこには、背の低い、白髪のめがねをかけたおばあさんが座っていた。
「だ…れ?」
私がやっとの思いできくと、おばあさんは、少し残念そうな顔をしたが、また、ぱぁっと表情を明るくしてこういった。
「あなたのおばあちゃんよ?覚えてないかしら?それより、一花ちゃん、おなかへったんじゃない?」
「おばあ…ちゃん?」
「えぇ。あなたのお母さんのお母さんが私。
あなたのお母さんの桜が亡くなってから、もう、10年もたつわねー。
元気だった?」
「あ…、はい。児童保護施設で中学生まですごして、高校に入って、援助金でマンションに住んでいましたから」
だんだんと体が動くようになってきた。
「そうかい、そうかい…」
おばあちゃんは、私の顔を見て、少し涙ぐんだ。
むりもない。一人だけの孫娘が自殺をしようとしたのだから。
「一花ちゃん」
「え?あ、はい」
「うちへおいで」
「うち、ってどこですか?」
「なぁに、いいところだよ。空気はおいしい、野菜もおいしい、おばあちゃんのうちはね、花屋なんだよ。いろんな花を育てているんだよ。とぉっても綺麗だよー?」
おばあちゃんは、そういって目を伏せた。
なんだかよくわからないが、自分がなんというべきなのかは、本能でわかった気がした。
「はい。行きます。おばあちゃんの家に」
6月6日、誕生日よりは1日送れだったけど、
たしかに、私は変わることができたようだった。