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ハッピーバースデー。

 その日も、いつもと変わりない1日だった。

いや、そのはずだった。

でも、私は、その”いつもどおりの日”を、いつもどおりではなくしたいと思った。

私が、生まれて16年たった日を、今までとは違うものにしたかった。

一人は、嫌だった。




昼休みになり、私は購買へとむかった。

たくさんのパンの中から、クリームパンをひとつ手に取る。

いつもどおりの、購買のおいしいクリームパン。

代金を購買部の嶋谷さんに渡して教室へと向かう。

「これが…最後だ」

クリームパンをつかむ手が、かすかに強くなった。




教室に戻り、席に着く。

一緒にお昼を食べる友達なんて…いない。

寂しくなんてない。今までずっとそうだったから。

クリームパンのクリームが、いつもより少し苦い気がした。




昼食を食べ終えると、私はトイレへと向かった。

手前から3番目の個室に入り、鍵をかける。

鞄の中からカッターナイフを1本とりだす。

手が震えだした。

(私はもう、今までの私じゃない。)

(私は、強くなるんだ。)

(強く…なるんだ…。)

カッターナイフを握り締めて、刃をカチカチと出す。

銀色に光るこの金属が、

私を、楽にしてくれる。

もう、寂しくなくなる。

私にいろんなことをしてきたクラスメイトへの復習にもなるだろう。


「ハッピーバースデー…… 一花……」


私は、傷だらけの左手首に新しい、大きな傷をつけた。

制服のワイシャツが赤く染まって、

視界がかすんでいくのを感じた。


バイバイ、楽しくなかった人生。

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