6話 変態は止まらない
そう考え、窓を開けようとした夜宵だったが、やはりびくともしない。
「やっぱりこれしかないかー」
部屋の隅に移動し、助走をつけて――。
パリンッ。
窓ガラスを蹴破り、地面へ軽やかに着地する。
振り返ると、家の外壁に玄関と同じ模様が描かれていた。
夜宵はインク瓶を取り出し、模様に塗り広げていく。
模様が見えなくなるまで塗りつぶすと、家の周囲をくまなく捜索。
さらに二つの模様を見つけ、同じようにインクで消した。
部屋へ戻ると、化け物がしゅーしゅーと煙を上げ、膝にはレイナが横たわっていた。
そのとき、レイナが目を覚ます。
「えっ? なになに? どういう状況?」
立ちこめる煙に困惑したレイナは、後ろを振り返る。
「おばあちゃん! 大丈夫、おばあちゃん?」
レイナが肩を揺らすと、煙を上げる老人がゆっくり目を開き――。
「ちぇーーい!!」
レイナの手を振り払った。
「えっ!?」
レイナは驚き、夜宵は小声でぼそり。
「この世界の老人は肩が弱いのか?」
老人は肩を押さえてうめく。
「あっ、そうだ。おばあちゃんの肩を掴んじゃ駄目だった……」
「なんじゃ小娘! 私の肩を掴むとは!」
「おばあちゃん! 私だよ、レイナだよ!」
「なんじゃレイナか。なんでここに? それにその女の子は?」
レイナは事情を説明する。
おばあちゃんが化け物になっていたこと、夜宵に退治を依頼したことを。
「そんなことがあったのか。迷惑をかけたねぇ」
「おばあさん、外に変な模様が描かれていたんですが、身に覚えは?」
「そんなものが? わしゃ知らんねぇ」
犯人がいることは確かだが、夜宵にはまだ手がかりがない。
「とりあえず、今日泊まっていかない? セレナ」
「セレナ?」
「うん。セレトナより言いやすいし。泊まってもいいよね、おばあちゃん」
「もちろんじゃよ」
――帰るのも面倒だし、泊まるか。
夜宵は了承した。
夕方。
夕食はおばあちゃんが作ってくれることになり、二人は近くを散歩していた。
周囲は一面の草原。心地よい風が吹き抜ける。
そんな住みやすそうなのだが、家がただ一軒ぽつんと建っているだけだ。
「やっぱり犯人のこと、気になる?」
考え込む夜宵に、レイナが声をかける。
「うん、まあ。レイナは心当たりある?」
「確信はないけど、私みたいな庶民が領主の息子と仲良くしてるのを、快く思ってない人は多いだろうね」
――レイナに直接手を下さず、親族を化け物にして心に傷を?
「まあ、犯人を見つけたら私が一発殴ってあげるよ」
「犯人、ポックリ逝きそうなんですけど……」
そんな会話をしながら歩き、大きな池にたどり着く。
そこでレイナが唐突に言った。
「あ! セレナ汗かいてない? 水浴びしたら?」
「いや別にかいてないけど」
「いやいやいや、水浴びしようよ!」
肩を掴み、妙に力が入っている。
夜宵はすぐに勘づいた。
「なんでそんなに水浴びしてほしいの? この間も視線を感じたし。もしかして……」
「あー、そういえばこの池、魚がたくさんいたっけなー。ここじゃ水浴びできないし、もうすぐ夜になるし帰ろうか」
あからさまに話をそらすレイナに夜宵は。
「そうだね、帰ろっか」
見事に引っかかった。
「この子、大丈夫かな……」
家へ戻ると、夜宵は大事なことを思い出す。
「ところで、化け物退治の報酬は?」
「おばあちゃんを元に戻しただけで、退治してないよね?」
お金にがめつい夜宵は引き下がらない。
「化け物がいなくなったんだから、実質退治と変わらないでしょ?」
「退治と元に戻ったのだと大違いがあると思います」
化け物退治では報酬がもらえないと悟った夜宵は。
「じゃあ……パイタッチ代は?」
レイナは即座に金貨を取り出し、夜宵に渡した。
夜宵は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
夜。
おばあちゃんの手料理を食べたあと、夜宵は風呂に入る。
湯船に浸かっていると、扉がノックされた。
「お加減はいかがですか? お背中流させていただきますね」
レイナの声とともに扉が開かれた。
夜宵は慌てて閉めようとするが、興奮気味のレイナと力が拮抗する。
「お客様のお背中をお流しするのが我が家のしきたりです! 大人しく流されてください!」
「そんなしきたり知らんわ! お客様の言うことを聞け!」
「しきたりを拒むお客様はお客様じゃありません! 強行突破させていただきます!」
鼻息荒く扉をこじ開けるレイナを、夜宵の異常な力をもってしても止められない。
浴室に入るなり、レイナは夜宵を押し倒し馬乗りになる。
「それが狙いかー! 早く降りろ!」
「お背中だけでなく全身を洗い流させてちただきますので、抵抗しないでくださいね」
夜宵のタオルに手をかけた瞬間――
夜宵は近くの石鹸をつかみ、レイナの頭に投げつけた。
「カハッ」
石鹸が直撃し、レイナはその場で気絶。
夜宵はとりあえず脱衣所にあったインク瓶で、レイナの太ももに漢字を一文字書いた。
数分後、目を覚ましたレイナは、自分の太ももに何かが書かれていることに気づくが、漢字が読めないので効果は無かった。
「洗っても洗っても全然落ちないよぉーー!!」
――少しは効果があったらしい。
「面白かった!」
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