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4話 変な依頼と変態少女

 次の日、夜宵はいつものように八百屋のバイトを終え、屋敷へ帰ってきた。


「そろそろ掃除でもしようかなー」


 屋敷の中はクモの巣やほこりだらけで、かなり荒れている。一人で全部片付けるのは、さすがに骨が折れそうだ。


 夜宵はパンパンと両手を叩く。


 すると、それに応えるように、ドタドタと何かが近づく音が響き、屋敷がわずかに揺れる。廊下の奥から現れたのは、数百体にも及ぶ西洋人形たち。


「よし、各自必要な道具を持って、掃除開始!」


 夜宵の命令に従い、人形たちはぞろぞろと掃除道具を手に取り、屋敷中で作業を始めた。


「じゃあ、私は寝るか」


 自室へ戻ろうとした夜宵の服を、一体の人形がクイッとつかむ。

 夜宵が振り返ると、人形は小さく首を振った。


「ですよね〜」


――数時間後。


「みんな、お疲れさま! 解散!」


 その声を合図に、西洋人形たちは屋敷のあちこちへと霧のように消えていった。


 少し汗ばんだ夜宵が浴室に向かおうとしたとき――


「ピンポーン」


 チャイムが鳴った。しぶしぶ玄関を開けると、青みがかった緑髪を三つ編みにまとめ、宝石のような黄色の瞳をした十七歳ほどの女性が立っていた。


「すみません! あなたが聖職者の方ですか!」


「違います」


 夜宵は即答し、扉を閉めようとする。だが女性はドアノブをつかみ。


「ちょ、なんで閉めようとするんですか! せめてお話だけでも!」


「いや結構です! こういうときは面倒事に巻き込まれるのが定番なんですよ!」


 女性は扉に足をかけ、強引に押し開ける。


「ちょっ、この展開知ってるんですけど! てか力強っ!」


――結局、夜宵は話を聞く羽目になった。


「改めまして。私の名前はヘルヘイム・レアイナ。レイナと呼んでください。あなたのことは領主の息子さんから聞きました」


「何を聞いたんですか?」


「幽霊が住む屋敷に住んでいる聖職者がいるという噂を聞いた領主の息子から聞きました!」


「噂の噂を鵜呑みにするな!」


 夜宵のツッコミを無視して、レイナは続ける。


「そこで、私の実家で“化け物が出た”という話があり、実家に手紙を送っても返事がなくて……どうか退治をお願いできませんか?」


「無理です」


 即答。


「なんでですか!?」


「そもそも私、聖職者じゃないし、化け物退治なんて無理に決まってるでしょう!」


 レイナは黙って鞄から袋を取り出し、夜宵に中身を見せる。


「これは三十万セレス分の金貨です。依頼を受けてくれるなら今すぐお渡しします。退治に成功したら倍額を…」


 三十万セレス。日本円にして約百万円になる。当然、夜宵の反応は…


「分かりました。その依頼、受けましょう!」


 夜宵は金貨の袋を受け取り、ドヤ顔で言った。


「それでは出発します。セレトナさん馬車へどうぞ」


 外に出ると、木製ながら美しく整備された可愛らしい馬車が停まっている。レイナは御者台に座り、夜宵を隣に来るよう促した。


 夜宵がレイナに隣に座ると馬が歩き出す。


―――出発して数時間、あたりはすっかり暗くなった。


「まだ着かないんですか?」


「あと一日はかかります」


「この辺りに街は?」


「ありません。今夜は野営です」


「いーーやーー! 野営はいやーー!」


 夜宵は元引きこもり配信者。野営の二文字はアレルギーに近い。


「ちょ、暴れないでください! 馬が驚きますって!」


 案の定、馬が驚き、その場を高速でぐるぐる走り始めた。


―――数分後。


「うっぷ……吐きそう」


「あなたのせいですけどね」


 馬が落ち着きを取り戻し、再び移動を開始する。


「もうすぐ小さな池に着きます。そこで野営します……暴れないでくださいね」


「……はい」


 レイナは夜宵が暴れる前に釘を刺す。

 

 目的地に着くと、レイナはタオルを夜宵に手渡した。


「荷物の整理をするので、先に体を洗ってきてください」


 言われるまま、夜宵は池へ向かう。


―――どうも、ヘルヘイム・レアイナです。皆さん、美少女のありのままの姿を見たいと思ったことはありませんか?(まあ私も美少女だけど)


 私はあります! そして今が絶好のチャンス!


 私は誰に向かって語りかけてるんだろうか。


 池は木に囲まれていて、覗くのにはピッタリの場所だった。


 木の陰からそろりと覗き込む――その瞬間、顔の横を小石が掠めた。それは夜宵が投げたものだ。


「えっ……」


「あれ? 気配を感じたけど……気のせいかな」


 皆さん。命の危機を感じたため、覗き見作戦は中断とします。


――体を洗い終えた夜宵が馬車に戻ってきた。


「レイナ、池に野生動物とか来なかった? 気配を感じたんだけど」


「えっ、ん、な、何も見てないよー?」


 あまりにも下手くそな嘘を付くが。


「そう? やっぱり気のせいか」


 夜宵はあっさり信じた。


「荷台に布団を敷いたから、いつでも寝ていいよ」


「ありがとう。じゃあ先に寝るね」


 夜宵が荷台に入ったのを確認し、レイナは再び池へ向かう。


―――皆さん。寝ている美少女に触れてみたいと思ったことはありませんか?(まあ私も美少女だけど)


 私はあります! たくさん弄くり回したい!


 しかし、汚い体で触るなんて失礼だ!ということで、池で体を清めてきます。


 三十分ほど体を清め、こっそりと荷台へ行くと、夜宵はすやすや眠っていた。


 レイナはそっと夜宵の上にしゃがみ、胸に手を伸ばす――


 その瞬間、膝蹴りを食らい、荷台の壁に頭をぶつけた。


 夜宵が目をこすりながら起きる。


「……ん、どうしたのレイナ?」


「どうもしてません……」


 普通の人なら、ここで諦めるだろう。だけど、私はセレトナに触ったり、覗いたりできるまで諦めない!


 皆! 応援よろしく!


 ほんと…私は誰に語っているんだろうか。


――夜宵のガードの固さ(物理的な)が、レイナの心に火を付けてしまった。


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