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2話 辺境の地と幽霊屋敷

 セレトナの父は使用人たちに指示を出し、セレトナを勘当する準備を進める。


 夜宵は自室に戻るよう命じられ、肩を落としながら部屋へ戻った。


 ベッドに腰を下ろすと、頭を抱え。


 「はぁー……殺されなかっただけマシかな。初対面であんなこと言ったら、そりゃあ見合いもなかったことにされるよね」


 急に冷静になり、自分の行動を反省していると、扉がノックされる。


 トラウマが蘇り身構えるが、入ってきたのはメイドだった。


 「元お嬢様、こちらに着替えてください」


 “元お嬢様”という言葉が胸に刺さったが、言われた通りに着替える。


 渡されたのは、まさに町娘といった服だった。


 「それでは、ついてきてください」


 促されるまま夜宵がついていくと、屋敷の外に出る。そこには、みすぼらしい馬車と一人の使用人が待っていた。夜宵は、自分が街の外に追い出されるのだと悟る。


 「元お嬢様、こちらへ」


 「……はい」


 渋々馬車に乗り込むと、馬車はどこかへ向かって動き出す。


 街を出たところで、御者をしていた使用人が話しかけてきた。


 「それにしても……初対面の貴族にあんなことを言うなんて、セレトナ様も変わられましたね」


 「そうですか……」


 「正直、笑いを堪えるのが大変でしたよ。もっと冷たくてクールな方だと思っていましたが……案外、面白い方なんですね」


 「……そうですか」


 夜宵はこれから自分がどうなるのかを考えるので精一杯で、会話を続ける余裕はない。


 やがて眠気に負け、いつの間にかまどろみに落ちていた。


 その後、数日かけ目的の場所に移動する。


――「セレトナ様、起きてください」


 その声で夜宵は目を覚ます。促されるまま馬車を降りると、そこは辺境の村の近くだった。


 「あなたは今日からここで暮らしていただきます。すでに住居は用意してありますので、村長にお話を聞いてください」


 使用人はそう告げると、少量の金を渡し、馬車に乗って帰ってしまった。


 しばらく立ち尽くした夜宵は、トボトボと村の中へ足を進める。


 村には木造の建物が並び、意外にも賑わっていた。


 服装こそ庶民的になったが、夜宵の整った顔立ちは隠せず、すれ違う人々の視線を集める。


 村長の家が分からず、優しそうな女性に声をかけてみた。


 「すみません。村長さんがどこにいるかご存じですか?」


 「村長が家にいるかは分かりませんが、すぐそこの八百屋を曲がったところですよ」


 夜宵はお礼を言い、教えられた場所へ向かう。

 村長の家は他の建物より少し大きく、すぐに分かった。


 玄関をノックすると、優しそうなおじいさんが現れる。


 「おや、見ない顔だね。お嬢さん、名前はセレトナで合ってるかね? さっき男の人から話は聞いておるよ」


 「そうですか。私の住む場所はどこでしょうか?」


 「ちょっとついてきなさい」


 そう言っておじいさんは杖をつき、ゆっくり歩き出した。


 その足取りに合わせ十分ほど歩くと、目的の場所に着いた。


 そこにあったのは、意外にも“お屋敷”だった。


 「え……ここですか?」


 「そうじゃ。この村で唯一のお屋敷じゃ。……幽霊は出るがの」


 「……今、なんて言いました?」


 「この村で唯一のお屋敷じゃ」


 「その前です!」


 おじいさんはホッホッホと笑いながら説明を続ける。


 「昔、この屋敷に子供と使用人達が住んでおったんじゃがな。全員死んでしまい、そのまま幽霊になった。――そんな噂があるんじゃ」


 「めちゃくちゃ訳ありじゃないですか!?」


 「まあ、タダで住めるなら上等じゃろ。それじゃあワシは帰るかの」


 村長は門と玄関の鍵を渡すと、帰ろうとする。


 「ちょ、待ってください!」


 夜宵は慌てて肩を掴んだ―


 「ちぇーーーい!!」


 夜宵の手が振り払われ、村長は片膝をついて掴まれた肩を押さえる。


 「何なんじゃ小娘!」


 先ほどの穏やかな表情は消え、怒りに満ちていた。しかし、ただ肩が痛いだけだ。


 「ご、ごめんなさい!」


 夜宵は慌てて頭をペコペコと下げる。


 「まあいい。次からは気をつけるんじゃぞ…」


 その迫力に、夜宵は「ゴゴゴゴゴゴ」とオーラを感じた。


 村長は立ち上がると、ヨボヨボと自宅へ帰っていく。


 「はぁー、このゲームの世界に来てから、散々な目にばっかり遭ってる気がする……」


 そう呟きつつ門を開け、中に入る。


 中庭は荒れ放題で、草木が伸びきっていた。


 玄関を解錠して扉を開けると、中は暗く、不気味な雰囲気が漂っている。


 だが幸い、夜宵はホラーゲームが得意であり、異様にホラー耐性があるおかげで、あまり怖がっていなかった。


 ――「バタン!!」


 玄関の扉が勝手に閉まる。だが夜宵の反応は。


 「えーーー! 自動ドア!?」


 この調子である。


 そのまま、ズカズカと屋敷の探索を始めていった。

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