ーケツイー 決意
夕日が落ちかける病室、俺はたった一人の大親友と話していた。
「お前、だいぶ元気になってきたな〜…」
「ああ。余命五年って言われた時はマジでこの世の終わりだと思ってたけど、なんかまぁ…しょげてもどうにもならないじゃん?」
俺の大親友、神坂はあと五年で確実に死ぬらしい。その現実は俺も親友も知っていながら受け入れないようにすることにした。辛くなるから。
「なあ、もう少しで歩けるようになるはずだからさ。そしたら、二人でどっか遊びに行こうぜ!」
「良いけど…親とかにちゃんと許可取れよ?俺責任持ちたくないわ。」
「分かってるって…!約束な!」
……一ヶ月後。神坂は俺達の予想を超える早さで逝ってしまった。中学最後の夏だった。街で遊んだ帰りに神坂は猛スピードで信号無視をした車に跳ね飛ばされてしまった。神坂の最期まで隣にいた俺はアイツの体温が段々消えていく感覚を嫌という程に脳へ刻み込んだ。元々病気で弱っていた身体に強すぎる打撃は救急車が来るよりも早く神坂の命を奪った。だが、犯人は捕まらなかった。途中、病室まで来た警察官が話していた内容を考えれば当然だ。
「おい、今回の事件起こしたのって輪倉さんの息子なんだろ?」
「え、そうなんですか!?輪倉ってあの天龍製鉄株式会社の!?」
「バカッお前声がデカいぞ…」
「あぁ…すみません。てかそれって大丈夫なんですか?大企業の社長の息子が無免許運転で学生を跳ね逃げなんて……」
「大丈夫なわけ無いだろ…会社としてもこの事は隠したいはずだ。どうせこの事件も明日には手を引けって指示が入るぞ…」
「先輩は…それで良いんですか?俺達は正義の為に働いているのに…」
「おい、バカな事を考えるな。お袋を悲しませたくないなら、この件からは大人しく手を引きな。」
それは、恐ろしく汚い会話だった。ただそれは恐ろしく的を射る発言だった様で、神坂が跳ね飛ばされた事はニュースにすらならなかった。神坂の両親はすっかり精神がやられた所に莫大な金を積まれ黙るように迫られたせいで、廃人同然となってしまって自殺したようだ。俺だけが五臓六腑に黒い炎を宿していた。絶対に許さないと、この痛みを百倍にして返してやると。俺はそう心に誓った。これは、俺、水無瀬智也の大親友…神坂拓哉の仇を取る為に奔走した俺の、物語だ。