【第五号】
「……ん」
目を開けると鉄柵の中。
また状況が逆戻りしたかと思ったが下を向くと鎖の色が汚い灰色から小汚い金色に変わっていた。
それに心なしか檻の外が明るい、さっきは真っ暗で視覚不全だったのに。
「ここは、どこだ」
「希少スキル持ちの牢獄です」
突然の声に体を振るわせ振り向くと座っていたのは先ほどの少女。
暗闇の中でも白黄色の髪の毛と耳、尻尾は綺麗に輝いている。
「君はどんなスキルを持ってるんだい?」
状況は読めないが同室になったのなら会話する他ない。
この子と協力すればここを脱出できるかもしれないし同室の理由も聞けるかも。
「私のスキルは言わないし、あなたと話もしません。それと勘違いしないよう忠告しますけど、私はあなたの監視役だから、変に仲間意識持たないでください」
「でも俺と同じ鎖に繋がれてるじゃないか」
「これは私が死から救われた証明です。勝ち取った鎖なのです」
勝ち取った鎖って……こんな窮屈な所で生きて何があるというんだ。
こんな暗くて空が見えない場所なんて、生きながらに死んでいるようなもの。
暗くて狭い部屋に一人いても、寂しいだけじゃないか。
「君はそれで良いのか」
「……」
「空も見えない地下に居ても美しい景色も面白い文化もない部屋にただ座ってるだけでも生きていると言うのか?
この世界で今この時にも変化は起きてる。それを君は見たくないのか?せっかく生きてるなら世界の全てを知りたいとは思わな……」
「黙ってください!!」
「ぐっ!!……」
息が出来ない……少女の鎖が首に巻き付く……。
目前の少女は口から鋭利な歯を剥き出しにしこちらを睨む。
「あなたに何がわかるのですか!!こんな暗くて狭い場所でも私が勝ち取った世界なんです!!」
「こ……ここよりも広い場所を俺はいくつも知ってる。七色に光る空、天にまで聳える大地、幻想的な建築物の数々……君はどうなんだ、それを見ずに勝ち取ったからここに定住するなんて……俺だったら死んだ方が良いね」
「なら……死ね!!」
少女の拳が何回も顔を殴る。
死ねと言う言葉の数だけ拳を振る少女の顔はつらそうに見えた。
いや、辛いに決まってる、世界というにはこの牢屋は狭すぎる。
「おい!何やってんだお前!!」
牢屋の外から来た黒フードに取り押さえられる少女。
羽交い締めにあっても少女の罵倒は止まらない。
「世界がどうだろうと知ったことじゃない!死んだら思い出も無くなるんだ!!」
「そのままにしておけよ」
太い声と共に来たのは同じく黒フードを被った者。
右手には何か液体の入った注射器。
その注射器を少女に撃つと少女の目がうつろいそのまま気絶。
「それで……君はこれに何を言ったのかな?」
注射器を拭く黒フードは目をこちらに向ける。
顔が隠れているが伝わる狂気、こいつは相当にやばい。
言葉を間違えると殺される。
「スキルを聞いたら殺されかけました……それと外の世界を知ってるかとも」
「なるほど、まぁ世界を知ることは悪くないがその好奇心は少し危ういな」
「危うい……なぜですか」
「こういう事だ」
その瞬間……視界の左右に噴き出る血飛沫。
理解が追いついたのは左右の手の感覚がなくなった後。
「あ……あぁああ!!!」
地面に落ちる両の腕。
痛みが飛び抜け頭が弾けるようだ。
「好奇心を否定はしないが使う場所を考えたまえ、場所を間違えれば牙をむく。自分にな」
出血のせいか思考が回らない。
手が使えないと……記事も書けなくなってしまう。




