【第三号】
つまずくと思ったがあっさり木というフレーズをゲット、やはり認識は日本人と同じくらいか。
さっきのウルフ呼びも日本人が分かる英語の範囲、林檎がアップルでも伝わるように英語の混在レベルもその程度だろう。
今のところは。
「いきなりで申し訳ないのですが、シータさんのお宅にお邪魔してもいいですか?」
「いいですよ」
いいのか、自分で言っておいてあれだが見知らぬものを無闇に招かない方がいいと思う。
その程度の警戒心で良い世界と喜ぶべきか、何か不審者を招き入れる理由があると疑うべきか。
「お名前を聞いても良いですか?」
「これは失礼しました、俺は国近歩道と言います」
「ホ↓ドウ様とお呼びしても良いですか?」
「ホ↑ドウと呼んで欲しい、あと様付けはいらないですよ」
「はい!よろしくお願いしますホ↓ドウさん」
まぁいいか。
ホ↓ドウだと歩く道と同じになるから嫌なんだけど、仕方がないか。
漢字も一緒だし、イントネーションなんて本人以外気にしないし。
「ホドウさんはどこから来たのですか?」
「どこから……ここから南方の町から来たんだ。まぁ放浪の途中って所かな」
日本から来ました、なんて言っても通じるはずないしあらぬ誤解を招く可能性があるからはぐらかしそれっぽい事を並べる。
「南方……ウェーリから来たということですか?」
「まぁそんな所です」
「それは大変でしたね」
何かわからんが要らぬ誤解を招いたことは確か。
やはり嘘は上手く言わないと自分の首を締めるだけ。
事実を言ってもどうしようもないけど。
「あそこが私達が住む村です」
招かれたのは村全体が露出した村。
この世界の事はよく知らないけど無防備過ぎではないか、それともこれがその世界のベターなのか。
「村の中には田畑を中心とした家々が並んでいます。ここの土壌は小麦に適しているらしく国からの援助もあるんですよ」
あまり農耕の事は知らないけど向こうに見える田畑に実るのが小麦ということはわかる。
国からの援助か、それはさぞ立派な土壌なんだろう。
「ようこそ!!」
シータの家に着いた瞬間に手厚いお迎えが待っていた。
頭にたぬきみたいな獣耳を持つ父らしきおお男と笑顔が素敵なシータに似たお母さん。
「腹が減ってるでしょ、お肉食べる?」
優しい言葉に優しい顔。
この世界は思っているよりも暖かいのか。
それに振る舞われた料理はどれも美味しかった。
それも新人歓迎会で食べた高級焼肉よりも上を行くほどに。
「ではお休みなさい」
ふかふかなベッドで就寝。
とりあえずこの村にお世話になりつつ日本への帰還方法を探すか。
いや、この異世界の事を調べてまとめた本を出版するのもありだな……鬼の名前も調べないと。
「ん……ん?」
気づくと目の前に鉄柵が降りていた。
確かおれ……ベッドで寝ていたような。
「起きたか囚人、こちらに来い」
鉄柵の向こうにはこちらを見下ろす黒フード。
まさか……騙されたのか。




