【第十号】
「スキルというより能力と言った方がしっくりくるな」
檻に入って1週間が経った。
ここにいる間はすることも無くただ鎖に繋がれた少女と過ごす。
することもないと言うのは何か奴隷労働的な指令が無いということ。
その分スキル磨きがはかどる。
ルミナスが言うにはスキルとは想像が力になるという。
最初はぶっきらぼうだったが次第に話しができるようになってきた。
「手を火に出来るようになったけど」
両手を火に変化する事が出来るように。
だが残念ながらこの火に火としての性質はない。
何かを炙ったり人を暖めたりなどは出来ない、ただ火を伸ばして遠いものを掴んだり接触はできる。
……利便なんだか不便なのかわからんスキルだ。
「俺達はどうして何も言われないんだ?」
「そんなの決まってる、レアスキル持ちだから」
なるほど、スキルにもレアリティがあるのか。
という事は売買目的で労働免除なのか、だがそれならさっき見たく腕を切るなんてマネはしないはず。
全くどうして意味がわからない。
「1つ良いですかホドウ。あなたは人間種なのになぜ捕まっているのです?」
「なぜとはなぜだ?」
「私が聞いた話だと人間種は生まれながらにスキル鑑定をされてレアスキルと判明したら【騎士族王位】として王都で育てられると、戦いで捕まるなら捕虜となるはず。こんな所に居る意味が分かりません」
きしぞくおうい?
何だそのカッコイイ代名詞みたいな集団は。
というかそれが本当ならおれあの獣人に捕まらなかったら快適な異世界ライフを送れていたのでは……。
先程のバシトとの会話でここは人身売買グルーブ獣人の隠れ家と判明している。
「その騎士族王位とはなんだ?」
その疑問にルミナスは首を横に振る。
「あまり知らない」
「なら知ってる事だけでも教えて欲しい」
「その国の王が認めた騎士集団、国によって数は異なるらしいの」
充分な情報だ。
この世界の政治体制は王政、そして騎士と呼ばれる防衛手段を持っている。
現代社会のような兵器は無いだろう、それがあれば騎士なんて意味をなさない。
恐らくそれに変わるのはレアスキルを持った人。
「ルミナス、ここみたいな場所はあと何個くらいあるんだ?」
「……星の数ほど」
星の数か、世界に興味が無いと言いつつ例えから興味がある事が分かりやすすぎる。
それにこの子も少なからず俺の言葉から情報を探っている。
「世界には興味が無いんじゃなかったのか?」
「世界には興味がないけど、昔見た星空には興味があるの。お母様と見たあの空がどこで映るか」
「なら探せばい良い、世界のどこかにあるはずだからな。情報を辿ればどこへでも行ける」
「無理よ、ここが私の世界だから」
2人が座るにしては広い空間。
地面は冷たく自由も無い、監視する獣人。
この子が言う世界とは命が保証されている空間のことだろう。
もしかしたら日本で平和ボケした俺が強欲なのかもしれない、それにこの子が血のにじむ思いで勝ち取ったのがこの空間なのかもしれない。
でも、それでも。
「こんな所にいても空は見えないぞ」
「でも命がなくちゃ思い出の空は見えない」
「でも見たいんだろ、今の空を」
「……うん」
俯くルミナスの顔から涙がこぼれる。
思い出が綺麗なほど今の惨状は心に来る、お母さんと見た星空を思い出し目を開けると今にも壊れそうな天井。
そんなんじゃ壊れてしまう、昔の俺もこんなハードな状況じゃないが似たような心境になったことがある。
そうした時は必ず本を見ていた。
「なら行こう、あの時見た空の下に」
「無理……もうどこで見たかも分からない」
「分からないなら調べれば良い、ルミナスは知らないと思うが。この世界は思っているよりも広くない」
「どういうこと?」
「情報を辿れば行き着く。そのためにはルミナスの力が必要だ。一緒にここから出てくれるか?」
手を差し出すとルミナスは手を重ねる。
「私……もう一度空を見たい」
「ならまずはこんな狭い所から出ないとだな」




