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【創刊号】

「局長!!これはスクープですよ!!」


周りをはしゃぐ狼男。


「世界に知らせましょう局長。歴史に刻まれる……勇者の誕生です」


本を片手にメガネを上げる白髪の女。


「そんなに口開けて……私達がここに来た理由忘れちゃったの?はやく知らせないと、私達の情報を待ってる読者に届けなくちゃ」


隣で顔を覗いてくる黒髪獣耳を生やした女の子。

俺がここに来た理由?


「そんなことより……お前ら誰だ?」


ーーーーーーーーーーーー


「あいたっ!!!……なんだったんだ今の夢は」


目を開けると栃木県にある自室の床。

昨日飲みで悪酔いしたか、変な夢も見るとなると相当飲んでしまった。

記憶も無いし……変な事言ってないよな。


「おはよう歩道ほどうくん」


「おはようございます、暮林さん。昨日は……すみませんでした」


ドキドキしながら会社へ。

入社以来とても懇意にしてくれている先輩の暮林さんと会い明言は避けて探りを入れる。

さて上司である暮林さんはどう出るか。


「昨日?あの企画なら問題ないよ、だけど自分の身の安全は確保しておきなね」


企画……あぁ、俺が新人企画で出したやつか。

確かにそれも暮林さんに手伝って貰ってゴリ押ししてもらったんだっけ。

この感触から悪酔いはしていない……はず。


「暮林さん……俺、この企画で【世界新聞】の売り上げに貢献します。必ず」


「分かってるよ歩道ほどうくん、君みたいな若者が旅雑誌にそれだけの熱量があればきっと読者も分かってくれる。僕達もサポートするよ」


俺が入った雑誌社の中にある旅雑誌【世界新聞】。

小中の頃にボッチだった俺を救ってくれた雑誌、世界を見せてくれた雑誌。

近年での売れ行きは過去最悪、廃刊の噂まである始末。

そんな中俺が提案したのは【ネットに載らない世界の僻地へきち特集】。

旅案内という本来の目的とは逸れるが興味を持ってもらうにはうってつけ。


「それで歩道くん、目的地はここで良いんだよね?」


「はい、ありがとうございます」


目的地はヨーロッパ南部、そこにある森林地帯を取材する。

森の中はもちろん、その近くの町や市場を取材して観光地から外れた旅を提案する。

いわゆる邪道の王道を記事にする。


旅のコーディネーターは付けずに一人で取材を始める、英語や他国語はあらかた学習済み。

ヨーロッパでも英語が通じなければ近い言語を話せば大体通じる。

日本から数時間飛行機に揺られ着いたのは町外れの村。

その中でこれから行く森について聞くと。


「あぁ、あそこは鬼がいる」


「死にたくなければ帰りな」


「おや若い子、クッキー食べる?」


「アジア人が何の用だ、帰れ」


応答は多種多様、その中でも鬼という単語が多く聞こえる。

厳密には鬼と同意では無いがそれに似た妖怪が住んでいるという。

俄然やる気が上がる。


「……怖い」


まだ午前も8時頃なのに日の光が降りてこない。

暗闇の森、荒い道、響く野獣の声。

妖怪などの非科学的生物の起源は大体が人智を超えた何かか見間違え。

大災害を神の天罰と言うように江戸時代に来た外国人を妖怪と形容したように常識から外れた物を人間は化け物にする。


「鬼だってなんかの猛獣だろ」


ー猛獣と一緒にすんなよ、品がねぇー


「あ……」


息を飲む鬱蒼うっそうとした森の中。

目の前に立つ異形に言葉を失う。

身長は少し高い2m程、肌は赤色、目は青。

腰に差す日本刀がこの世のものでは無い事が分かる。

ヤバい……何をしたら……とりあえず逃げなきゃ。


ーおい、待てよー


先回りされた……殺される。

死ぬ前に何か書き残さないと。


ーお前、死ぬ事を喜んでるだろー


「は……何を言ってる」


ー俺は人の魂が見えんだよー

ーお前の魂は恐怖を感じているがそれ以上に幸福を備えてる、今の時代には珍しいー

ー最後に見たのは京の都だなー


何言ってんだこいつ……京の都って……どれだけ昔の話なんだ。

そんな事はいい、今はとりあえずメモだ。

現代に残る鬼のイメージに近いが巨体ではなくどちらかと言えば細い、棍棒ではなく日本刀……何か意味があるのか。


ーお前……そうか命を投げてもやりたい事があるのか、この世でー


「やりたい……こと、一ついいですか」


ーなんだ、聞いてやろうー


こんな機会もう無い、口は回る、視界も開けてきた、進むだけ進むしかない。

それが編集者の仕事。


「取材させてください、あなたの事を読者に紹介させてください。もし出来ない理由があるなら、僕が解決できるよう努力します」


鬼の記事を書けばそれにまつわる各所巡りなどで記事が出来る、それにここヨーロッパに鬼が居るという事実が明るみになれば世界を超える旅行を提案できる。

どちらにせよ大スクープ、編集部も問題の一つや二つ総力を上げて解決してくれるはず。


ーそうか……気に入ったぞわっぱ。殺すのはやめて見返りに解決してもらおうかー


「是非お願いします」


ー我の名前を探してきてくれー


「名前……ですか?」


ー不満か?ー


「いいえ!とんでもないです」


鬼の名前か……日本の国立図書館とかで調べるか。

それとも寺社仏閣を回って、オカルト編集部にでも掛け合ってみるのもありだな。


「あの……会ったことは言わないので協力者を募っても大丈夫でしょうか?」


ーあぁいいぞ、それと忠告しておくが我と会ったことを他言すればお前は死ぬぞー


そうだった、俺の目の前にいるのは妖怪の中でもとびきりおっかない鬼だった。

普通に会話していたから抜けていたけど、今に殺されてもおかしくはない。

逆に生きてることが奇跡なくらい。


「わかりました、それではあなた様の名前を見つけることができれば取材を受けていただくということでよろしいですか?」


ー契約成立だなー

ーじゃあ気をつけて行けよ、ホドウー


「あぁ……どうも」


現地取材は切り上げて日本で調べるか。

いやしかし、こんな展開になるとは強引にでも企画を進めて良かった。

これで廃刊の噂なんて聞こえなくなるぞ。

というかなんで名前知ってたんだろうか。


……。


それから1時間ほど森を歩いているが一向に抜けない。

GPSは生きてる、道はそれていないのにわだちがある道に出ない不気味。

勘弁してくれよまじで、早く日本に帰ってやらなきゃ調べないといけないのに。

次第に前から差す光が強くなっていく、木々をかき分けるとそこに広がっていたのは。


「……草原?」


別の場所から出てしまったのか見知らぬ草原。


「どこだよここ……て、え?」


GPSが死んでる所かスマホの画面がつかない。

電池は満タンだったはず、まさかあの鬼に騙されたか。

いやそもそも殺したいなら会った瞬間に殺しているはず、ではなぜ俺は知らぬ草原に立っている?


その疑問は空に浮かぶ影で解決した。


「ありゃ……ドラゴン?」


空に浮かぶ影は鳥にしては大きすぎ、飛行機にしてはいびつすぎた。

それに草原に轟く咆哮、創作だろうがゲームで聞いたドラゴンの声に似ている。


「ドラゴンがいるということは……ここはヨーロッパじゃない?」


ヨーロッパじゃないことは確定している。

考えろ、今まで見てきた地図とその土地の情報を照らし合わせドラゴンが出てもおかしくない地域を選定しろ。

そうすれば現在地がわかるはず。

……もちろん現代社会にドラゴンのいる地域など無い。


「お兄さん、そんなところに立って危ないですよ?」


「あぁちょうどいい、ここはど……」


目の前にいたのは笑顔で俺を見つめる獣耳が生えた可憐な少女。

何かのコスプレかと思ったが自然に動く獣耳はどう見ても偽物ではない。

この子を見て確信、俺はどうやらどこか別の世界に迷い込んでしまったらしい。



最後までありがとうございました。


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