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チートな神様はハズレ姫。  作者: 秋春じゅん
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2.打止め余り姫は、五の姫。

学園始まるよ〜

 常春の国、『ルーシア帝国』。


 巨大な平地は山岳地帯に囲まれ、浄らかな湧き水、肥沃な大地は何を植えても良く育つ。山岳地帯の周りは実り豊かな森林が覆い、魔素量が多いにも関わらず、穏やかな魔物や聖獣、動物が生息している。


 この地が恵まれているのは、主に精霊に祝福され、愛された土地ならではであろう。精霊は森や山岳地帯には多く住むが、この地では他の国とは違い、町や村を住処にする者も多い。ましてや皇都にまで姿を見せる者もいて、この国では精霊と共に暮らす事が当たり前であった。



 ───人は魔法を使う。


 魔法は精霊の祝福があって、初めて使えるようになるのだ。従って、祝福が無いものには魔法は使えない。精霊にとって、貴族も平民も関係なく、精霊に気に入られているものは、多くの祝福を受ける。


 そんな国の頂点である皇族達は特に魔法の扱いに長けており、殆どの者が一つだけでなく、二属性三属性持ちが多く生まれた。


 長男であり、頼り甲斐のある金髪碧眼の美丈夫であるイーサン・ロム・ルーシア皇太子25歳は炎、水、風、土の四属性持ち。膨大な魔力に精霊に愛されし朗らかな性格でありながら、洞察力もあり、次代の皇帝として相応しいと皇国民の人気も非常に高い。妻のマリィヌと息子のエドガーの愛情深い父でもある。


 そして、シルクの様なシルバーロングヘアを後ろで結び、翠の深い瞳が癒される次男のミルロード・リム・ルーシア皇子は23歳。水、氷、雷の三属性持ち。見たものを即座に記憶するずば抜けて鋭い頭脳はイーサンの補佐役であり、将来は宰相を目指しているらしい。現在、婚約者のミレールア侯爵家令嬢とは婚約したばかりだが、氷の皇子と噂の高い彼も婚約者の前では、氷も解ける溺愛ぶりだそう。やや嫉妬深いので、ミレールアの扱い注意である。


 そして、次は一の姫の長女のエバリンデ・ラムザ・ルーシア21歳。炎、風、雷の三属性持ちで、女性ながら魔力が多く、精霊の少ない隣国であるミネルヴァ王国のカイル王太子殿下の婚約者であり、今年の9月に嫁ぐ予定である。ミネルヴァ王国は絹生産地として優良な最も親交深い隣国だが、精霊が少ないせいか、魔法を使える者が非常に少ない。精霊に愛されるエバリンデが嫁ぐ効果も期待されている。


 次は双子で次女のルビアンナ・ラムザ・ルーシアと三女メリッサ・ラムザ・ルーシア共に19歳。

 風、氷の二属性持ちのルビアンナに風、土の二属性のメリッサ。お喋りでお洒落好き。社交界で流行を作る事を信条とし、噂話も大好物。風魔法で噂を仕入れるのも得意だが、頭の回転が良すぎて、周りの貴族に噂を流し、どの様に流れていくか、早さや規模などを時々情報操作実験をして楽しんでいる。


 四女のアリシア・ラムザ・ルーシア18歳は風、土、緑の三属性持ち。緑を育てたり、皇国の農地育成に助言したり、学園でも肥料開発に勤しんでいる。今年で学園も卒業なので、婚約者のベルモンド辺境伯子息の領地で研究の続きを行う予定。ルーシアの森の精霊に、最も愛されている皇女と言っても過言ではない。


 そんな魔力、精霊に愛される皇族の多い中、末っ子である、五の姫のリゾレット・ラムザ・ルーシアは神殿から、属性なしと診断され、早15年。魔法も使えないハズレ姫と呼ばれている。だから、学園が始まる前から皇国中の人気を集めるアルバート・カイツェルナ公爵家子息にとって、彼女を疎ましく思っていたのは仕方ない事なのだろう。


 だからって、何も咎のない者を欺くのは上級貴族としても人としても良い事ではないし、ましてや皇族を陥れて何の特になるのだろう。リゾレットはカイツェルナ公爵夫妻からも謝罪をうけたが、謝罪されてもそんな事、瑣末にしかない。今更どうでも良かった。


 やたらと最近眠くて眠くて仕方がないので、周りにあまり構っていられない。「いったいわたくしの体はどうなってしまったのかしら?」


 本人にも徐々にこうなってしまった自らの体質を恨めしく思っていた。


 あまりに眠くて仕方ないから、学園の談話室のソファでも、お昼休みの休憩室でも眠ってしまう。


 そんな姿をよく見かけている学園生にとって、ハズレ姫は怠惰でだらし無いと捉えている者が大半だ。優秀で勤勉な兄弟姉妹達に比べて良い所のない、出涸らし打止めハズレ姫と呼ばれていた。


 しかし、誰かを貶める程、したたかでも、気力があるとも思えない。そんな暇があったら、彼女は寝ているだろう。それが皆の共通の認識。あの美女が誰だか判らないけれど、よく陥れようと画策したものだ。直ぐにバレるような杜撰な計画だ。今期は謹慎しているらしいし、彼女ものんびり寝て過ごせそうで安心だ。


 というのも、確かに出涸らしハズレ姫なのだが、見た目は麗しく、可愛いし、見ているだけで癒される。高貴な身分なのは変わりないし、教室で呑気に平和そうな顔で眠っている姿を見ていると、トゲトゲしていた心も癒されてくる。男女問わず癒しの存在。所謂、アイドル的存在なのだ。



 そうそう、わたくしはこれで安心して眠れますわ。

 心の中で呟くと、静かに目を閉じた・・・。


「何が安心なもんですか!!リゾレット皇女殿下!!」


 ソファでうたた寝をしていた、わたくしのケープを剥ぐのは、侍女のアーシャだ。


「寒いですわ。返してくださいな。アーシャ。」


 高々とケープを持ち上げると、グイッと顔を近付けて、睨みつけるアーシャ。彼女は乳母の娘で、乳姉妹なので、子供の頃から私の性格を知り尽くしている。


「まだお昼ですよ。今寝たら、夜の睡眠の質が落ちます。夜の睡眠の質が落ちますから、昼間も眠くなるのです。」


 せっかくの美人が台無しですわ。何故そんなに怖い顔で睨むのかしら。


「大丈夫よ。アーシャ。私は夜もぐっすり眠れていますもの。」


 ホンワカと微睡みながら、微笑む私の背中を起こすアーシャ。ああん。横になりたいですわ。


「駄目です!リゾレット皇女殿下!目をお開けください。」


 ああ、アーシャに寄りかかるのも温かくて宜しいですわね。ウフフ。


「駄目ですってば!!リゾレット皇女殿下!横になんて、ならせませんよ!!」


 そのまま、引き摺るように立たされてしまった。

 ああん。私のソファが側使えと騎士によって、撤去されていく。折角、この陽の辺りが良い、ポカポカの陽気が素敵な園芸部のサンルームを見つけたのに。残念ですわ。


「園芸部のサンルームに部外者が勝手に、ソファを置いてはいけません!!」


 それはそうだわ!部外者は駄目よね。


「解ったわ!それなら園芸部に「リゾレット皇女殿下!園芸部の入部は土魔法属性持ちの方のみが入部を許されているそうですので、お断りを受けましたよね!?先日。」・・・そうだったかしら。」


 あら、それなら仕方ないわね。


「では午後の授業を受けに教室に戻りましょう。」


 仕方なしに、アーシャに背中を押されながら、私は教室に戻るのだった。


眠いが基本です!

キリッ!

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