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チートな神様はハズレ姫。  作者: 秋春じゅん
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1.婚約破棄された五の姫様。

天然皇女は眠い。

婚約破棄やら解消劇は体力が足りない。

 

「本日をもって、あなたとの婚約を解消します。五の姫、いえ、リゾレット・ラムザ・ルーシア皇女殿下様」


 儚げなピンクブロンドの美女を小脇に抱き、アルバート・カイツェルナ公爵家子息は高らかに宣言する。


 本日はルーシア皇都高等学園の入学パーティーにて、その下剋上ともとられる事件が起きてしまった。貴族社会に於いて、学園の入学パーティーは貴族のデビューとも並んで、重大な式典であり、この様な醜聞を起こす事はあり得ない出来事だ。しかも、どちらも上級貴族であり、方や皇族相手にこの様な事件を起こすなど、余程の事だろうと、学園生、父兄と共に教師陣や運営である国の重鎮達も驚愕の表情をしている。しかし、好奇心は抑えられずに、ヒソヒソと噂しながら、成り行きを見守っているようだ。


 リゾレット皇女殿下にとって、アルバート公爵家子息は5歳の頃から婚約しており、幼馴染でもあった。


 確かに、どちらも恋心というものはなく、政略的な婚約者でもある。だが、決してアルバートの事は嫌ではないし、リゾレットにとってはアルバートは友であり、言うなれば戦友というような者だった。


 そんな同志のつもりでいたリゾレットは、あまりに急な展開にフラフラと目眩が起きた。


「いくら皇族といえど、罪なき者に対し虐め抜いて学ぶ場を失わせるような事など、言語道断。この学園では平等に学ぶ権利が誰にでもあるのです!」


 アルバート公爵家子息はそう言うが、そりゃそうだよね。学ぶ馬は平等だよ。何を分かりきった事を今更言うのだろう。虐めとか言ってたけど、何だろう?それが私と何の関係が?


 ポワンと首を傾げて顎に手を添えて、アルバートにハテナと目を向ける。煌めく深い海のような瞳でアルバートを見つめると、徐々に頬が赤く染まっていくアルバート子息。


「うぐっ!!・・・」


 リゾレット皇女にまともに真っ直ぐ見つめられ、吸い込まれる様な瞳にボウッとなり、息も絶え絶えになるアルバート。


 その様子に途端に隣の美女がマズい!と顔を顰め、アルバートに擦り寄り、シクシクと泣き出す。


「私もこんな目にあわされるなど、平等な学園と聞いていたのに、あんまりです。」


「・・・はぁ。そうですか、それはたいへんでしたわね。」


 わたくしがそう声をかければ、アルバートの後ろにいた子息がズイッと前に出る。リンドバーグ・クリアベル侯爵家子息ですわ。


「知らないフリは見苦しいですよ。皇女様、あなたは皇族の身分を傘に着て、身分の低い者を虐げたそうですね。そんな方だとは思ってもおりませんでした。私はあなたを軽蔑します。」


 何だろうな。どうやら、私がこの美女をいじめたとかそんな事を言ってるような気がするけど。まさかよね!?だってこの人と、会ったの今初めてだもの。ましてや話かけるだなんて、そんな暇あったら、園芸部のサンルームに一直線ですわ。


 そう思い、今度はリンドバーグ侯爵家子息を見つめる。


 見つめられた途端に顔が真っ赤に染まり、慌てて顔を背ける子息。


 すると泣く美女の後ろから、もう1人追加ですか?新たな子息が出てきましたわ。


「そうです!貴方は彼女の教科書を破り、ノートを引き裂き、挙句には階段から突き落とそうとしたそうではないですか!幾ら身分が上の者であっても、やって良い事と悪い事がありますよ!何故そんな酷い事が平気で出来るのでしょう!」


 ルイス・ミルウォーカー辺境伯子息がそう叫ぶ。脳筋は声がデカいから、耳に優しくないですわ。しかも威圧魔法をかけましたの?わたくしに?効きませんけど?腐っても皇族ですわよ。精霊魔法は効かないの忘れていますの?


 しかも何だか、劇みたいな登場ですわね。



 あ〜あ、この劇、つまんないですわ。もう飽きてきましたし、もうわたくし眠くなってきちゃいましたわ。


「ふわぁっ・・・」


 つい、あくびが出ちゃいましたわ。



「「「「なっ!!?」」」」


「!!ちゃんと聞いておりますか!リゾレット皇女!」


 アルバートが叫ぶ。


 ───貴方の声も煩いですわ。


 もう、眠くて眠くて仕方ないんですの。今日は朝から入学パーティーに参加する準備で、早くに起こされ、お風呂に着付けでしょ。他の生徒より早くに来て、皇族挨拶の為にリハーサルもやりましたのよ。だから、入学パーティーに参加するのにのもやっとですのに、こんな面倒な事に巻き込まれて、本当に辛くて仕方ないですわ。でも、目をゴシゴシこすりながらも、何とか応えましたわ。



「・・・ねぇ?アルバート。そんな面倒な事、この私がすると思いますの?」


 ・・・。


 ・・・・。


「「「「!!!・・・確かに!!」」」」



 リゾレットは呆気にとられる4人を眠い目で見つめた。



「それは誰かに命令したのでは!?」


 儚げない雰囲気もなくなり、ブチギレてきた美女が叫ぶ。



「え〜!命令って、そんな事考えるのも面倒ですのに?」



「「「「・・・確かに!!」」」」



 どんだけ私が物臭なのか、良く知っているじゃないの。



「婚約解消?破棄ですの?別に良いですわ。何でも。じゃあ、お父様によく言って・・・アーシャに言ってもらいますわ。」

(こんな時でも自分で言うの面倒なのかい!)と会場中の皆の心の声。


「!!そんな!!姫」


 真っ青になり、膝をつくアルバート。


 口をポカンと呆気たまま、固まる面々。きっとわたくしの態度が婚約解消劇のリハーサル通りの反応では無かったのでしょうね。わたくしが縋り付くとでも!?そんな思い通りになんて、なってあげませんことよ。


 わたくしはそれだけ言うと、パーティー会場を後にした。


 後程、皇族に対し不敬だとか、皇族を陥れた等と厳罰に処された彼らは、当然の事ながら、アルバート公爵家子息の不義と言う事で、婚約破棄され、学園入学と同時に謹慎処分の為、今学期中は自宅謹慎らしい。ご愁傷様だけど、自業自得だ。入学早々、面倒を起こすからだと関係者達の談。



 そういえば、その美女の名前もよく知らなかったですわね。どなたも何も仰らないですしね。なんか「ゲームと違うとか、好感度足りてなかったの!?」とか叫んでましたけど、そんなの知りませんわ。


 そうですのね。ココってもしかして、どっかの乙女ゲームの世界だったのですかしら?


 わたくし、前世の記憶がありますの。でも、前世でも乙女ゲームというものは、いたした事ありませんわ。ですので、〝悪役令嬢でしょ!?〟とか仰られても解りませんのよ。そう言われましても、ご期待に応えられませんわ。


 あ〜眠いですわ。今日は一杯考えて疲れましたわ。皆様、お休みなさいませ。





何故眠くて眠くて仕方ないのか、それが皇女の秘密の鍵だったり?

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