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佐敷上城 4
友人と来ていたらきっと引き返していた。神聖な空気
は友達とふざけ合う笑い声とはあまりにミスマッチ
なものだった。それまでふわふわと小説に出てきた場所は
どんな所だろうという知的好奇心だけを引き連れて来
た。それは子供がありはなんで
きれいにぎょうれつをつくって歩いているんだろうと
不思議がってありを追いかけて行くような感覚である。
強張る顔と裏腹に足は歩みを止めなかった。止められ
なかった。ここから引き返す方が怖かった。坂を登り
切るとそこは森だった。正確には右斜め前に民家があ
り、道路もコンクリートで舗装されている。しかし、
森、である。いや、今まで見てきた森とは違う、
むしろ今まで私が見てきたものは森ではなかったので
はと感じるほどの植物の霊気を感じた。息を感じた。
視界を80度左に転移させると石の塊がみえた。その奥
に整備された草原があり一台の車が止まっている。辿
り着いた佐敷城跡。