第八十七話 いつまでも
「Επιτεθείτε ... σ' αυτόν!」
「ふ~ん・・・ Άμυνα! Υπερασπιστείτε με!」
――ガァァァンッッ!!
エレーヌとロイクは激しい魔術戦を繰り広げている。
忘れがちだが、ロイクは魔法も使える。
「クッ・・・ 流石に厳しいかな~」
「ロイク、俺にもできることは無いか!?」
「う~ん・・・ 妹を戻す方法も分からないし、今は無いと思う」
ロイクはしばらく経つと防戦一方になっている。
レイドは何もできない。
「Átkozott... Utálom őt!」
「・・・!? まずい、呪術だ! 避けろ!」
「うぐっ・・・!」
エレーヌが放った呪術は、音もなく地面をえぐる。
(呪術も使えるのかよ!?)
「呪術だけは避けるしかないね~ いや、どうしよう」
「・・・・・・」
「・・・レイドっ! 大丈夫か!」
「ロベルト!」
レイドたちが色々と悩んでいると、後ろからロベルトたちがやってきた。
「チッ・・・ 次から次へと・・・ 小癪な・・・!」
「・・・!? おい、エレーヌのやつ、どうなっている!」
「操られている、何かに」
「・・・呪術の類か!」
「嘘・・・ エレーヌ! わたくしよ! 分からないの!?」
「誰だ・・・? 貴様」
「っ・・・!」
ロベルトたちは、全員呆然としている。
恐らく、どう対応すれば良いか分からないのだろう。それは、俺たちも同じだ。
この間にも、エレーヌとロイクの戦いは続いている。
「ちょっと・・・ わたくし、どうすることも出来ないわよ! ロベルト、何とか出来るでしょ!」
「無茶言うな! 俺だって、何が原因か今考えている・・・!」
「お願いだ、エレーヌを、救いたい・・・ 呪術も使ってくるから、手ごわすぎるんだ」
「何・・・? 呪術だと・・・!」
ロベルトは急に顔が青ざめる。
「まずい! エレーヌが呪術を使ったら体が持たないぞ! あれは負のエネルギーだ!」
「何だと!?」
「また呪術が来るよ!」
ロイクが後ろを向きながらそう言った!
皆、一斉に横に避けた。
「ねえ、エレーヌの目から、血が出ているわよ・・・!」
「あんな強力な呪術を使ったら、当然だ!」
「あ、あぁ!」
――どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・!
「お、落ち着くんだ! レイド! いいか、エレーヌがなぜこうなったか教えてくれ!」
ロベルトはそう諭す。
しかし、レイドには余り伝わっていないようだ。
「あ、あぁ・・・」
「・・・レイドっ!!!」
――レイドの頬に強烈な痛みが走る!
「ちょっと! しっかりしなさいよ!! 婚約者なんでしょ? 何ナヨナヨしてんの!」
「・・・・・・すまない」
「レイド、何か心辺りあるものは無いか?」
「・・・あ、確か左腕に呪術紋章が!」
「よし、術者は誰か分かるか?」
「奴が・・・ カインが・・・ 自分で!」
ロベルトは、それを聞いた途端、希望が見えたような顔をした・・・!
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――体が、動かない・・・
私は、レイドとの戦いがしっかりと見えている。
だけど、体が言うことを聞かない!
「諦めろ・・・! お前の仲間は、決して貴様を救うことは出来ない!」
直接、誰かの声が聞こえる。
――貴方が、やっているのね! このっ!
「無駄だ。じきにお前の意識は無くなるだろう、その時が、永遠の別れだ」
永遠の、別れ・・・!
イヤ、イヤっ! 私は、まだ、消えたくない!
まだ、やり残したことが・・・
最初、死のうと思った。
家族を傷つけるくらいなら、いっそやられた方がまし。
だけど・・・ 踏みとどまったレイドの顔を見たら、
そんなことを言ってられない!!
――このっ、、、 うぅ!
必死に抵抗を続けるが、ついに気力をなくしてきた。
――たす、、、けて。レイド!
霞む視界の中、エレーヌが見たものは、
こちらに突撃してくる、レイドの姿であった・・・!
「おい、本当に大丈夫なんだろうな・・・!」
「ああ、俺に解呪は任せろ! レイド、足止め頼んだぞ!」
「ああ!」
レイドとロベルトは、エレーヌに向かって一直線に走り抜けている!
「Támadás! Ő az egyetlen...!」
「させるかっ! Leszerelni! Ó, ez a csúf átok!」
すると、エレーヌの周りに出来ていた紋章魔法陣が消え去る・・・!
「なっ・・・ 解呪したか!」
(本当に解呪が出来る! これなら・・・!)
「Επιτεθείτε ... σ' αυτόν! Επιτεθείτε ... σ' αυτόν!」
エレーヌは負けじと魔術を放ってきたが・・・
――ガァァァンッッ!!
「僕がさせないよ~ 遠距離から防御魔術さ!」
「小癪な・・・!」
レイドたちは止まらない。
ついに、エレーヌの傍に到達した!
――暴れるエレーヌを止める方法・・・
恐らく、これしかない!
「小僧め! 我を止められると思うなよ!」
「ああ、そうだろう。俺だけならなっ!」
「っ、何!」
「・・・愛してるぞ!!」
レイドはエレーヌに飛びかかり、抱きしめて動きを止めた!
「う、うぅ・・・」
一見すぐに跳ね飛ばされそうだが、そうはいかない。
”エレーヌ”が、抵抗するのだから!
「左腕・・・ これかっ!」
ロベルトはどうやら紋章を見つけたようだ。
今は、黒光りしている・・・
「食らえ! Leszerelni! Ó, ez a csúf átok!」
「ア゛グァ・・・!」
「もうちょっとだ! ロベルト!」
エレーヌの目は、少し、元に戻っている気がする!
「よし! Leszerelni! Ó, ez a csúf átok! Leszerelni! Ó, ez a csúf átok!」
「や、止めろ・・・! やめろぉぉぉぉぉ!!!」
「Leszerelni! Ó, ez a csúf átok! Leszerelni! Ó, ez a csúf átok!」
「ヴ、ァ・・・!」
エレーヌが何か黒い球を吐き出した!
「フン、これが核か・・・! 消えろっ!」
――バキィィィィンッ!!
黒い球は、粉々に消え、辺りに光が差し込む・・・
辺りには、何とも言えない沈黙が続く。
「・・・ああ、やったわ! やるじゃない! ロベルトッ!」
「あ? えぁ!? は、放せっ!」
「終わったね~」
「・・・そうだといいがね」
「不謹慎なこと言わないでよ・・・」
(やった・・・ 倒したのか・・・! ようやく、ようやくだ!)
この戦い、色々とあったが・・・ 俺は、勝利することが出来た! 誰も、欠けることなく。そうだ。
そう思い、エレーヌから腕を放そうとしたが・・・
「・・・ん?」
――な、何か、動かない?
レイドの背中に、エレーヌの腕が回されていたのだ。
「え、エレーヌ?」
「・・・今は少し、動きたくないです」
お互いに、血やら砂埃やらで汚れてはいるが、悪い気はしない。
「”あの言葉”、後でしっかりと言ってもらいますからね」
「・・・聞かれていたのか」
「当たり前です」
その頃のロイクとミゲルは・・・
「・・・咎めんのかね? 君らしくないな」
「・・・まあ、こういう時に、水を差すのは悪いかな」
「ようやく君にも、婚期が・・・!」
「うん? 黙ってくれるかな?」
ロイクは、どっちか分からない涙を流すのであった・・・




