第八十六話 最強の戦士、再臨
「Ανατινάξτε, επιτεθείτε του!」
――ドガァァァン!! ダァァァァンッ!!
「うぐっ、 ・・・くそっ」
レイドはずっと逃げてばかりだ。
エレーヌによる魔法の連射ばかりはどうすることも出来ない。
「アガッ・・・ っ、大人しくしろ・・・!」
「・・・?」
一瞬、エレーヌの目が本来の青紫に変わった気がした。
いや、こんな距離から目なんて見えるはずがない・・・
(魔法の連射が止まった・・・ 今なら! ・・・いや、でも!)
「フフフ・・・ 貴様が隙を作ったところで、あの小僧は攻撃なぞできないのだよ」
「・・・まさか! エレーヌ! 聞こえているのか!?」
「無駄だ。じきに抵抗する力を失い、この体は我の物になるだろう・・・!」
今すぐ目の前にいる敵を倒したい。体中が痛い。早く終わらせたい。
・・・だが、攻撃する勇気など、無い。
――Ανατινάξτε, επιτεθείτε του!
「ッ、、、またかっ!」
「ハハハ! 貴様とこの体の主、どちらが先に力尽きるか見ものだな!」
エレーヌ・・・ いや、奴は次々と追加の魔法を放ってくる!
一発でも当たれば木っ端みじんだ!
「はぁ・・・ はぁ・・・ あっ、ぅ・・・」
(なんだ・・・ 急に、めまい、が・・・)
そう思うと同時に、レイドは失速してしまった。
よろめきながら、跪いてしまう・・・
「あ・・・ どう、やって・・・」
「我は何もしとらんよ。血を失いすぎたのだろう・・・ よくもまぁ、人間のくせにここまで動けたものだ」
「・・・まだだっ! 俺は・・・!」
「再び立ったところで何になる? 貴様が我を倒せるとでもいうのか?」
「・・・っ」
――もどかしい・・・
しかし、レイドは唇をかむことしか出来なかった。
「他の女と大人しく伴侶になっておけば、こんな人生を歩まずに済んだことを。貴様は少々運が悪かったな」
――――そうだ、俺は何にこだわっているんだ?
別に、敵に堕ちてしまったエレーヌを助ける義理は無い。いや、助けられない。
そう。俺が生きていれば、それでいいじゃないか・・・
そして、レイドは静かに立ち上がる。
「・・・この期に及んで悪あがきとは」
しかし、レイドの目は変わっている。
昔、ユーラル家から追い出された時のような、絶望の瞳。
「・・・ア゛ァァァァッッ!!」
「・・・!? 貴様、正気か!?」
レイドは一目散にエレーヌに向かって切りかかった!
止めを刺しに行っていたエレーヌは油断しており、とっさの防御が遅れる・・・!
「ヴッ! クソッ・・・! この時に、妨害を、するな・・・!」
エレーヌの片方の瞳が、元に戻る。
そして、レイドの方を見て、訴えかけた。
――早く、殺して・・・
「・・・ああ。分かったよ」
レイドの剣が、ついに喉のすぐそこまで差し掛かる。
しかし、そこから動くことは無かった・・・
「ア゛ ヴゥ・・・」
「・・・ハハ、やはり、殺せないでは無いか!」
レイドは一瞬、立ち止まってしまった。
そして、魔法で腹を貫かれる。
「・・・・・・」
「まだ生きているのか・・・ 安心しろ、今すぐに殺してやる」
――ああ、エレーヌ・・・
俺は、結局・・・ 何も、役に、立てなかっ・・・
「・・・いいや、君はよく頑張ったよ~」
「!!?? 貴様っ、まだ、生きて・・・!」
ロ、イ・・・ ク・・・
「お~い。生きてるの? ねぇ? 早くこれを飲んで~」
「ア゛・・・ ヴッ・・・ おうっぇぇっ!!」
「・・・元気になったかな?」
「ゴホッ、ゴホッ・・・! な、何を飲ました!」
「え? これ。 瞬間回復薬」
「・・・そういえば、痛くない」
傷だらけだった体は、いつの間にか元通りである!
「いや~ 少ない量で良かった。急所を外していたね」
「バカな! カインが与えた傷は、致命傷だ! 薬なぞで・・・!」
「・・・ふ~ん、見てたんだ。けど、分かるよね? 僕は、バイセン家だよ?」
「・・・・・・」
(あ・・・ 一言で納得した)
「っ、ともかく、貴様もこの体は傷つけまい!」
「・・・まぁ、気絶さして縛り上げておくことしか出来ないかな」
「・・・は?」
その瞬間、ロイクは一瞬でエレーヌのすぐ近くまで接近し、剣を振りかざす!
「っっっ・・・!」
間一髪でエレーヌが避け、後ろへ下がった。
「貴様は、究極の妹好きじゃ・・・!」
「よく分かっているじゃないか~ だからこそ、兄弟間の絆? で少しくらいケガしても大丈夫だと思う、うん」
「クソッ・・・!」
エレーヌは焦りを隠せない。
(こやつは、片腕を失ったとはいえ、最強の戦士・・・ 我も、本気を出さねば・・・!)
「・・・そこまで言うのならば、本気で戦ってやろう! この体が持つかは分からないがな!」
「やって見なよ・・・!」




