第八十五話 大魔女の血を継ぐ者
――うぅ・・・ ここは、どこだ・・・
レイドが頭を痛めながらも起き上がった場所は、見慣れた場所であった。
「はっ、何を寝そべっているんだよ、無能が」
前に人影が一つ・・・
「ふ、ファブリス・・・」
「どうした? 俺様の魔法が凄すぎて呆然としているのか?」
こいつは、確かに死んだはずだ・・・
なぜ、なぜ・・・
そう思い、レイドは体を動かそうとするが、すぐに違和感に気付く。
「体が・・・ 小さく・・・」
――そう、これはまだ幼き日の体であったのだ。
「まっ、無能のお前には一生経っても出来ないことだよな! ガハハッ!」
そうファブリスが笑い始めると、近くに居た使用人たちもそれに続く。
カインは、居ない。
「・・・・・・」
「? 何か言ってみろよ? 魔力無し!」
「ああっ!」
「ちょ、おい、どこに行くんだよ!!」
――俺は全力で駆けだす。
今すぐ、ここから出ていかなければ・・・!
「おい・・・ 待てって言っているだろ・・・?」
「っっ!! は、放せ!」
レイドは何とかして、ファブリスの手を離そうとするが、全く動きやしない。
「お前も・・・ コっちに・・・ クルンだよ・・・」
「はっっっ・・・!」
次第にファブリスの顔面が溶けていき、骨が見え始める・・・!
その途端、周りの様子は急変、使用人だった骸骨たちが一斉にこちらへ向かってきた!
「ああっ・・・! 来るな! 来るなっ!!」
「ア゛ア゛ア゛・・・」
ファブリスの拘束は未だ解けない。
「止めろっ! 止めろ!! ああああっ!!!!」
「大人シク・・・ 従エ!」
「・・・そこまでだ!!」
「ア゛ア゛ッ!」
ファブリスの拘束はそこで途切れた。
「・・・マリー!?」
「レイド! 今は話している場合ではない! 今すぐ脱出するぞ!」
「わ、分かった・・・」
「ヴォォォ・・・ 待て・・・」
マリーはレイドの手をつなぎ、全速力で走り始めた!
後からは無数の骨が迫る・・・!
「はぁ、はぁ・・・ なんなんだ! これは!」
「・・・・・・」
しかし、マリーは何も話さない。
しばらく走り続けると、何やら空間の切れ目が見えてきた。
中からは、遺跡の様子が見える・・・
「レイドっ! あそこに飛び込め・・・!」
「ちょっと待ってくれ! マリーは来ないのか?」
「私は、そちらへは行けない」
「はぁ? なんでだよ、骸骨共もすぐそこに・・・」
「・・・レシティア様を、頼んだぞ」
「え? なっ・・・!」
マリーは静かに、レイドを抱きしめる。
・・・そして、思いっきり押した。
「おい、マリー・・・!」
そのままレイドは、空間の切れ目に呑まれていく。
――そうか、そういうことか・・・
レイドが最後に見たのは、涙するマリー。
彼の意識は、それで途切れた。
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「ぅ・・・ ぅぅ・・・っ」
「嘘だろ? まだ生きているのかよ!」
レイドは焦げ臭い匂いを感じながら、静かに起き上がった。
段々と視界がはっきり見えてくる。
少し離れたところに、カインと・・・ エレーヌが居た。
「ヴ・・・ ぁ・・・」
「カッ、そんな重症じゃ、まともに動くことすらできないよな?」
「カイ・・・ン、何を・・・した?」
「エレーヌにか? ・・・ようやく、ようやく復活を果たしたんだぜ! こいつは・・・ガ・・・ッ」
カインはそのまま血を吐き、倒れた。
腹を貫かれている・・・ そう、魔法によって。
「ご苦労。カインよ・・・ 貴様はもう用済みだ」
「え、エレーヌ・・・?」
「ふむ、この者はエレーヌと言うのか。中々良い体だな」
「・・・お前は、誰だ?」
エレーヌは体を動かしながら、ギラリとこちらを見つめてきた。
あれは、とても生物ができるような目ではない。
「貴様は・・・ ジャンとよく似ているな。そういえば、この体もミアに似ている気が」
「おい、質問に答えろ!!」
「・・・ふむ、なぜ貴様ごときの質問に答えねばならない?」
「なぜって・・・ っ、早くエレーヌから出ていくんだ!」
「それは出来ぬ相談だ。欲しかったら殺せば良い。ジャンもそうしたようにな」
「・・・・・・」
「まあ、貴様にジャンほどの覇気を感じないがな・・・ 死ね」
エレーヌは杖を大きく掲げ、何やら唱え始める・・・!
――来やがったか!!
「Έκρηξη...! Ακολουθήστε με!」
エレーヌの頭上から魔法陣が現れ、こちらに魔法が飛来する!
「こうなったら・・・ インテグリー!!」
――しかし、インテグリーは光ることは無かった。
「ぐわぁっ!!」
レイドにそのまま爆風が直撃し、後ろに吹き飛ばされる!
「・・・どうした? ほんの小手調べだぞ?」
インテグリ―が・・・ 反応しないだと・・・!




