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第八話 リヨン出立

「ア、ガ、ァ・・・」

 黒き人が一人、また一人と倒れていく。ついには全てが動くことは無くなった。

「な、何が・・・ 終わったのか・・・?」

 マリーはそうつぶやく。

 

 さっきまで、兵士たちの雄たけびと共に戦いの音が聞こえていたのに・・・

 今は嘘なくらいに静かだ。

「おーい! マリー!」


 レイドとカインの声が聞こえてくる。こちらまで走ってきたようだ。

「君たち・・・! どうしたんだ? まさか、やったのか?」

 レイドはうなづく。


「はい。どうやら荷台に積まれていた人間の怨念が呪いかなんかに代わり、こうした事態を引き起こしたのでしょう。俺は、彼の望みに従って殺しました」

 黒幕の正体は分からないが、事態は収束したと言っても良いだろう。

 

「そうか・・・ 沢山の犠牲者が出てしまったが・・・ ひとまずは、我々の、勝利だ!」

「「「万歳!」」」

 兵士たちが剣を上に持ち上げ、魔術師は空に祝砲を打つ。


 黒き人の街、リヨン。そうなる運命をレイドは変えてしまったのだ。

「これで・・・ 俺は死なずに済むのか・・・?」

 レイドはそんなことばかりを考えていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 完全に侵食されていなかった患者たちは元通りになり、普段の生活が戻った。

 リヨンの封鎖が解除され、街には活気が戻り始める。 


 レイドたちは、コレル子爵邸に客として招かれた。

 疲れを癒すと良いと・・・ 久々のふかふかなベッドだ。

 しばらくたったのち、コレル子爵とまた会うことになった。


「ありがとう! レイド君! 君はこの街の救世主だ!」

 応接間に入った瞬間、コレル子爵が飛び出してきた。

「娘の容態も回復した! まだ完全とは言えないが・・・ 命の恩人だ」

「・・・・・・!?」


 レイドは困惑している。こういう時どんな反応すれば良いのかが分からないのだ。

「さあ、街の人々も君にお礼を言いたがっている! さあ、外に出るんだ!」

 そう言われて、レイドは連れ出された。

「ちょ、何を・・・」


抵抗むなしく、レイドは外にでる。

  

「あなたが例の救世主? ありがとう!」

「助かったよ! 良かったらこれを持って行ってくれ!」

「貴方がいなければ、夫は助からなかったでしょう・・・ 貴方は命の恩人です!」

 レイドが外に出るや否や、次々に街の人々がお礼を言ってきた。


 (俺は、ただ自分が助かるためにしただけなのに・・・)

 レイドはまだ困惑している。ただ、悪い気分ではない。何か、じんわりと胸にこみあげてくる・・・


「ありがとう、みんな。別に俺一人の力だけでは無い。兵士のみんな、そして友人たちの力がなければ成し遂げれなかったことだ。その人たちにもお礼を言ってくれ」

 自然と言葉がつづられる。


「なんだよ、照れるな・・・」

 カインがもじもじしながら言う。

「レイド、君は本当に英雄だ・・・」

 マリー。


「まさか、貴方が街を救うとは・・・」 

「そのまさかですね・・・」

 モーリス。アンヌ。


「さあ、皆の者、レイド殿に盛大な拍手を!」

 コレル子爵が大きな声を出しながらレイドの肩に腕をのせる。

 辺りに盛大な拍手が巻き起こる。

 (・・・やってよかったな)

 レイドから自然と笑みが浮かぶのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 レイドの凱旋パレードが終わって少し経った頃、レイドたちはバイセン領へ向かう関所に来ていた。

「本当に行ってしまうのか・・・ もう少しいてくれても良かったのだぞ、何ならうちの娘と会わないか?」


 コレル子爵は名残惜しそうに言う。

 (それだけは勘弁してくれ!)

 非常にめんどくさいことになりそうだ。遠慮さしてもらおう。

  

「すみませんが、そろそろ出立しないといけません」

 いつまでもバイセン家に着かないようじゃ、死んだと勘違いされるだろう。

「そうか・・・」


 コレル子爵は残念そうにしている。

「では、せめてこれは持って行ってくれ。ほら、出すんだ」

 そういうと兵士がなにやら立派な剣を取り出す。


「この剣は、インテグリー、という剣でな。うちの先祖が使用した剣ならしい。ぜひ君に使ってもらいたい」

 そうしてインテグリーを手渡される。

 銀色に輝く長身の剣。柄には何やら魔石も入っているようだ。


「ありがとうございます! こんなものもらっていいんですか・・・?」

「いいんだ、勇気ある君に使ってもらいたい。いつぞやの先祖みたいにな」

「いいなあ、レイド様よ」

 カインは口惜しそうにしている。まあ、レイドは剣を扱えないが・・・


「そうだ、マリー。レイド殿たちをバイセン領まで護衛してくれ。街道に出てくる魔物くらいなら問題ないだろう」

「はっ、仰せのままに」


 マリーがこちらに向かってくる。

「てなわけで、私はまだ君たちと付き合う必要がありそうだ」

「ああ、頼むよ。マリー」

 レイドたちは歩み始める。


 (すべては、俺たちが生き残るためだ!)




 インテグリー。それは主人公フィリップが、リヨン解放作戦の際に手に入れる伝説の剣だ。そんな剣をレイドが手に入れてしまった。

 もう、シナリオは崩壊し始めている・・・ しかし、レイドは知る由もない。

 ここまで読んでくれてありがとうございます!


 第一章の前半部分が終わりました。

 

「面白そう!」


「続きが読みたい!」

 

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