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第七十六話 皆の者、戦いに備えよ!

 それから時は少し進み、夜となった。

 アミアンの街の灯が途絶えることは無い。

 だが、バイセン邸はそれらとは打って変わり、明かりが1つの部屋に、ポツンとともっているだけだった・・・


「皆、集まったな。これより、作戦の最終決定を行う」


 ラジは厳かな態度で、そう言った。

 レイドたちに加えて、アミアンの有力な戦士たちも交えての大規模な会議だ。


「・・・まずは、我らアミアンの戦士たちの今後の予定を伝えていこうと思う」

「では、ここからは儂が話さしてもらおう」


 アミアンの戦士群から、一人初老の男が手を挙げた。

 静かに、厳かに壁に貼られた地図へと向かう。


「魔獣の攻撃は、明日に始まると見ている。恐らく、北西部からくるじゃろうな」

「質問だ。なぜ北西部から来ると分かるんだ?」


 レイドはそう質問した。

 ――確か、前の戦いの時も、北西部だったはずだ。


「まあ、偵察隊がそう言っているのもあるのじゃが・・・ そっちには、例の遺跡がある方角なんじゃよ・・・」

「なっ・・・! 奴らは、あの遺跡を根城にしているのか!?」


「落ち着け、まだ決まったわけでは無い。誰も確認に行けないような状況だ」


 ラジがそうなだめる。そして・・・


「ここからは私が説明するわ」

「・・・エマ!」


「レイド・・・ 今は再会を喜んでいる場合じゃないわ。早速説明していくわね」

「・・・ああ」


「よし。まず、私の”前世”の記憶だと・・・ その遺跡が根城になっていることは十分に考えれるわ。だって、本来は敵の本拠地なんだから」


「・・・なんですって! それは流石に・・・!」

「落ち着いて、エレーヌ。話はここからよ」


「今は黙って話を聞こう? 文句はそれからだよ~」

「ぅ・・・ 分かり、まし、た・・・」


 エレーヌの反応は当然だ。レシティアもそれを聞いて戦々恐々としている。

 平気そうなのは、ロイクと、ロベルトぐらいだ。


「ただし本来の歴史より、今回は半年も速いわ。まだ占領される前かもしれない。今が絶好のチャンスよ!」


「・・・反対です。こっちの身にもなってくださいよ! 地の利も無いのにどうやって! ずっと耐えれば・・・」


「でもね、”本来”の歴史では、既にバイセン領なんて滅んでるわ。もちろん、貴方も・・・」

「・・・っ!」


 (エマの言っていることは正しい。だからこそ、理不尽だ・・・)

 ――レイドはそう険しい顔をして思う。


「そういうことだ、エレーヌ。これしか手は無いんだ」


 ラジが無機質に、そう、それだけ伝える。


「・・・貴方、やっぱり止めた方が良いんじゃない? 娘を戦場になんて送りたくないわ!」


 ソニアも見かねて口をはさんできた。

 いつもニコニコとしている人だ、今はとても悲痛で叫びそうな顔をしている。


「これは・・・ 決定だ」

「嫌よ! 嫌よ! 私たちが死ぬべきなのよ!」


「・・・まだ死ぬとは分かっていない」

「けどっ! そんなの死にに行けと言っているようなものじゃない!」


「・・・っている」

「何!?」


「そんなのとうに分かっているっ!!!!」

「・・・っ」


「誰が好き好んで娘を死地に行かせるものか! だが適任はエレーヌと、レイドしかいない。私たちは領地の防衛で手一杯!」


「・・・・・・」


「逆に・・・ どうすれば、良いんだよ・・・」


 ――ラジの頬には、涙が流れたであろう痕が沢山あることに気が付いた。

 心を殺して娘を戦場に送る決心は、並大抵のものではない・・・


 

「なあ、今の時間は、互いに弱音を吐き合う時間なのか? 違うだろ、どう勝つかって事じゃあねえのか!」


「・・・カイン」


「そんなこと考えてたら、死んでしまうのもうなづけるぜ。なあ、ラジさんよぉ!」

「カインの言う通りだよ~ だから、ここに共に戦う仲間がそろっているんだ。僕が可愛い妹を死なせるわけがないじゃないか」


「ラジさん、一つ言いたいことがあります」

「・・・・・・なんだ」


「俺は、今まで何度も死に直面してきました。けれど、俺はまだ、死んでいない」

「・・・」


「俺は、仲間に、そのたびに命を救われた。だから、俺も! もう!」








「決して仲間を死なせたりは、しない・・・!」

「レイド・・・」


「だから、ラジさん、信じてください。俺は、必ず生きて帰ってきます!」


 

 ラジは静かに座っていた椅子から立ち上がった。

 そして、背負っている戦斧を取り出し、掲げる。


「明日の戦い、必ず勝利し、遺跡へと反撃するのだ! 我らはアミアンの勇敢なる戦士!  決して敗北は許されないぞ!」


「「「おう!!!」」」


「大丈夫だ、エレーヌ。決して、死なせたりはしない」

「・・・はい。貴方こそ、また死にかけないでくださいよ?」


「・・・善処する」


 皆の思いがこれで、1つになった。


「おっしゃあ! やってやるぜ!」

「声だけ出しても戦いには勝てないわよ? カイン?」


「うるせえ黙ってろ! レシティア!」



 

「・・・ロベルト、ちょっといいかな~?」

「なんだ? 俺はあのノリには付き合えんぞ?」


「そうじゃなくて・・・ ちょっと別室に移動しよう」

「? 別に構わないが・・・」

  

 ロイクはそのままロベルトを連れ出してしまった。

 何かあるのだろうか・・・


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