第七十一話 街に出よう
「レシティア・・・ なのか?」
「れ、レイド・・・」
レシティアはレイドを見た途端、委縮してしまう。
なんだか、凄くおびえているようだ。
「ご、ごめんなさい、ごっ・・・」
「おい、もう大丈夫だ。気にしていない。それよりも、一年間も看病、ありがとうな」
「いや、わたくしが、あの時、あんなことをしなければ・・・」
「もういいと言ってるだろ?」
「・・・・・・」
今度は黙り切ってしまった。
今のレシティアは、とても情緒不安定に見える。
「・・・レシティア、いつもこんな感じじゃないんです。きっと、慣れますよ」
「あ、ああ・・・ そうだといいが」
(ところで、あの人形みたいなものは何だろうか・・・)
レイドは、レシティアの傍にある大きな何かを見つめた。
「レシティア、”あの研究”は順調ですか?」
「・・・ええ、実用化までもう一歩よ」
レシティアはエレーヌの言葉を聞き、我に返ったようだ。
「”あの研究”って、そこにあるやつのことか?」
「・・・今、自立型の魔導兵器を作っているのよ。これで、誰も戦場に出なくていいようにね・・・」
「・・・・・・そうか」
「わたくしね、怖いのよ。また、誰か失ってしまうのではないか、と。いつまで、戦い続ければ・・・」
「レシティア、もう少しの辛抱です。彼が、レイドが、復活したのですから・・・」
「・・・そうだといいわね」
――すると、レイドはこちらに近づいている足音に気付いた。
「エレーヌ、ここで何をしている。・・・って、貴様、レイドか!?」
「・・・ロベルト、なのか?」
変わり果てたロベルトの姿が目に入った。
長髪になり、その目つきは非常に恐ろしい。
「・・・復活したのか。それならばさっさと黒き魔獣との戦争に加勢しろ」
「お、おい。どうしたんだよ・・・」
「・・・これがいつもの俺だ。奴らを皆殺しにする、約束された未来に向かってな」
「ロベルト、彼はまだ本調子ではありません。もうちょっと待ってください」
「・・・チッ、まあいい。おい、レシティア」
「ロベルト、完成したの?」
「ああ、理論上はな」
そうして、ロベルトは人形に向かう。
「Tartalmazza a lelket...」
「ゴゴォ、ガッ、ギ・・・」
「やったわ! ついに成功かしら!」
「いや、まだ油断はできない。これを制御する方法を見つけなければ・・・」
人形が何と動き始めたのだ。
何か、苦しんでいるような様子だが・・・
「何を、したんだ?」
「・・・成仏しきれなかった魂を封じ込め、本能のままに戦ってもらう。それが、”人造魔導兵”だ」
(・・・いくら何でも、それは、)
――こんな残酷なことが許されていいのか。
と言いたかったが、レイドは思い留まることにした。
「ククク・・・ これで、奴らを・・・!」
今のロベルトをどう表現すればいいのだろうか。まさに、狂気と呼ぶべきか・・・
「すみません、これでは失礼します・・・ 行きますよ、レイド」
「あ、ああ・・・」
そうして、レイドたちはレシティアの部屋から去ることにした。
「どうしたって言うんだよ。レシティアも、ロベルトも、何かおかしいぞ・・・?」
「・・・この一年間、色々あったんですよ」
「一体何が起きたら・・・」
(いや、これ以上、踏み入れてはいけない)
レイドの本能が、そう語っていた。
「せっかく一日自由になったんです。街に、出てみませんか?」
「・・・そうだな」
そうして、レイドとエレーヌは、学園から出ていくのであった・・・
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あれから少し時が過ぎ、レイドたちは街に出ることが出来た。
王都の活気は一年前と全く変わっていない。
「私たちは、これを守っているのですよ」
「・・・なるほどな」
そして、再び歩き始める。
「さて、どこに行きましょうか。ご飯でも食べに行きます?」
「病み上がりだが、大丈夫なのか?」
「多分大丈夫でしょう。昏睡中でも、強引に食べさしていましたから」
「え? どうやって?」
「もちろん、魔法ですよ」
「ははは・・・」
(なんか想像したくないな・・・)
そう思うレイドであった。
「どこでもいいぞ、エレーヌが好きなところでな」
「そうですか、では早速お肉の店へ・・・!」
「そういや、肉が好きだったな」
「確か、貴方は葉っぱが好きでしたっけ?」
「いや、そんな訳でもないが・・・」
「なら大丈夫ですね、付いてきてください。あっちに良いステーキの店があるんです!」
そういい終わるや否や、エレーヌは走り始めた。
「お、おい! 待てよ! ・・・食い意地が張ってることで」
そうして、レイドもエレーヌの後を追うのだった・・・




