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第六十九話 一年後の世界

 しばらく、エレーヌはレイドの上で泣いているままだった。

 刻々と時間は過ぎていく。


「・・・そろそろ落ち着いたか?」

「・・・・・・・」


 エレーヌは、鼻をすすりながらも無言でうなづいた。


「一年って言ったよな」

「・・・はい。そうです」


「これまでに起こったことを、教えてくれるか?」



 エレーヌの話をまとまるとこんな感じだ。


 まず、マルクは死亡した。国賊という扱いになり、葬儀すら行われなかったらしい。

 国王は、責任を取る形で退位。第一王子が実権を握ることとなった。


 そして、もう一つ。それは、”黒き魔獣”が、本格的に攻めてきたらしい。

 国王が即位していきなり戦争が始まったわけだ。


「・・・マルクと深い関わりがあった家は、全部取り潰しとなりました。つまり、貴方はもうユーラル家ではありません」


「・・・! それは、本当か?」

「はい。本当です」


「待ってくれ、エレーヌとの婚約はどうなったんだ!」

「今からそれを伝えようと思いました」


(伝えるって、何をだ・・・?)

 ――まさか、婚約破棄・・・?


「・・・なんだ?」

「レイド、今日から貴方の名は、レイド・バイセンとなります」


「ん? つまり、それって・・・」

「はい、正式に、今日を持って成婚です」


(ちょっと待ってくれ、結婚したのか?)

 驚きの余り、声も出ないレイドだった。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


「こ、これから、その、よろしく・・・」

 

「は、はい。やっぱり、言うタイミングを間違えましたね・・・」


 両者とも頬が赤く染まっていたが、混乱するふりをして何とかごまかそうとしていた。

 しばらく、沈黙が続く・・・


 

「・・・あ、レイド、話は変わりますが、体は動きますか?」

「え? そういえば、一年寝ていたにしては、体が良く動くな・・・」


 そう言って、レイドは肩を回し始めた。

 体の衰えがまるで無いようだ。


「実は、一年間、ずっとレシティアが魔法を施してくれてたんですよ」

「あのレシティアが、か?」


「はい、あのことでかなり罪悪感を持っていたようで・・・ あとで挨拶しましょう」

「ああ、分かった」


 レイド自身、レシティアには命を救われたと思っている。恨む気持ちなどみじんも無い。


(レシティア、レシティアと言えば・・・ はっ! そうだ!)


「お、おい! マリーはどうなったんだ!?」

「マリー、ですか・・・」


 マリー、という名を聞いた途端、エレーヌは暗い顔になり俯く。

 そして、何かを決心したように、再びレイドに顔を向けた。


「・・・付いてきてください」

「ああ、分かった・・・」


 そうして、レイドとエレーヌは病室から外に出る。

 

「だいぶ大きな病院だな・・・」

「はい、今は。見覚えはありますか?」


「見覚え・・・? まさか!」

「はい。想像している通りです。ここは学園でした」


「学園・・・ 無くなったのか・・・」

「・・・”黒き魔獣”との戦いが始まり、ここは軍病院となりました。元々、マルクの件で半壊していましたし・・・」


 そう話しながら、レイドたちは外に出た。

 そして、何やら壊れた旧校舎の方へ向かう・・・


「・・・ここは、軍の集団墓地となりました。”黒き魔獣”との戦いで命を落とした戦士たちの墓です」


「なっ・・・ っ・・・」

 ――声がうまく出ない。どんな反応をすればいいか分からない。


 さらに、エレーヌは奥へと向かっていく。

 しばらく歩いた後、何やら大きな墓が現れた。


「彼女は・・・ ここに居ます」


(嘘だ・・・ 何かの悪い夢だ・・・)

 ――しかし、目が覚めることは、無い。


 リヨンの街で出会ったマリー。エレーヌよりも先に知り合い、そして、戦友であり、命の恩人だった・・・


 ――何も考えられない。考えたくない。

 今、目の前にある事実を、認めたくない。


 レイドは呆然と突っ立っているだけであり、墓を見ようともしなかった。


「・・・まだ受け入れられない気持ちは分かります。一旦ここから離れて、皆のところへ向かいましょう」


「・・・・・・」

「・・・さぁ、行きますよ」


 レイドはエレーヌに手を引っ張られ、引きずられていくように墓地から去っていったのであった・・・




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 学園の敷地内を移動し、闘技場の辺りまで移動した来た。

 学生で賑わっていたころとは打って変わり、今は兵士たちが機械のように訓練をしている。


「ここが、私たちの拠点です。さあ、この部屋へ・・・」


 そうして、レイドは言われるがままに部屋に入った。

 室内にいる人たちと鉢合わせする。


「おい、レイド、レイドじゃねえか! お、俺だよ、分かるか! カインだよ!」

「・・・レイド、復活しちゃったか~ てことは、け、け、結婚!? なっ、な・・・」


「カイン、ロイク・・・ 俺・・・」

「どうしたんだよ? そんなにやつれて、病み上がりだからか?」


「・・・彼は、あの墓を見てきたのです」

「ああ・・・ そうだね、痛ましいことだよ・・・」


 ロイクが珍しく、痛ましい真剣な口ぶりになった。

 カインも、苦汁を呑んだような顔である。


「・・・ひとます、レイドが無事でよかったぜ。ロベルトに、レシティアにも後で会っておけよ?」


「あ、ああ・・・」


「・・・レイド、いきなりですまないけど、今の状況を伝えたいと思う。いいかな?」

「・・・・・・」


 ロイクの問いかけに、レイドは無言でうなづいた。


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