第六十七話 岐路
「い、いやぁぁぁ!!」
「なっ・・・! どうしたんだ!」
レシティアの悲鳴を聞き、レイドたちは直ちに駆けつけた。
「マリーが、マリーがぁっ!」
「・・・うそだろ」
マリーはレシティアをかばい、黒き魔獣によって胸を貫かれていた・・・
「くそっ! マリーから離れろ!」
「ギシャァ!?」
「殺ったぞ! マリーは!」
「ねえ、返事をしてっ! マリーっ!!!」
マリーは虚ろな目でレシティアを見つめる。
もう、体は動かないのだろうか・・・
「マリー! 今すぐ、治癒魔術を!」
「あっ! エレーヌ、お願い! 何とかして!!」
「Θεραπευτική μαγεία, θεραπευτής...」
「ねえ、これで大丈夫よ・・・」
そう言って、レシティアはそっとマリーの手を握った。
しかし、反応はまたもや無い・・・
「おかしいよ~ なんで気が付かなかったんだ? 魔力探知は確かに動作してたのに・・・」
「・・・ロイクさん」
「何だい?」
「奴の体から、こんなものが出てきました」
そうしてレイドはロイクに、何かを手渡した。
紫色に光る、禍々しい球体だ。
「・・・これが体の中から出てきたのは確かかい?」
「はい、間違いありません」
「これは、認知疎外の魔道具だよ。なぜこれが体の中に・・・」
「つまり、人工物が体内にあったと・・・」
「うん、そういうことになるね」
軽々しい物言いではあるが、ロイクの顔は非常に険しいものになっている。
手に力がこみ上げ、今にも魔導具が割れてしまいそうだ。
「・・・ねえ、エレーヌ、まだなの?」
「ちょっと待ってください。・・・これは、厳しいです」
「え? なんでよ・・・ レイドだって治せたじゃないの!」
「内臓が潰れてしまっては、どうしようも・・・」
「嫌よ! 嫌よ!! 何とかしなさいよ! ねえ!」
「おい! 落ち着け!」
「アナタは黙ってなさいよ! レイドっ!」
「うぐっ、」
レイドはレシティアに突き飛ばされ、転んでしまう。
「何をするんだ、レシティア・・・」
そうしてもう一度立ち上がろうとしたときに、異変を感じた。
(な・・・ 急にめまいが・・・)
レイドは立ち上がれず、その場にもう一度倒れこんでしまった。
「ん? レイド、大丈夫かい?」
「お、おい! しっかりしろよ! 俺が分かるか? カインだぜ?」
(っ・・・ 身体強化魔術の、げん、か・・・い)
――レイドは、そのまま、気を失ってしまったのである・・・
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「レ、ド・・・ レイド・・・」
――何か、聞いたことのある声だな・・・
「聞こえますか・・・ レイド・・・」
何もない、真っ白い空間が広がっている。
自分の体は、無い。
・・・はっ! ”あの声”だ!
「良かったです・・・ 聞こえているようですね」
「また、お前か・・・」
「久しぶり、というべきでしょうか? 貴方にとっては、これが数年ぶりの再会ですからね」
(やっぱり、どこから話しかけているかが分からないな・・・)
――もがこうとしても、実体が無いからどうしようも無い。
「さて、貴方は今、生死の狭間をさまよっています」
「・・・そうだ、マリー、マリーはどうなった!」
「貴方の運命が変わり、私も役目を終えたはずなのですが・・・ このままだとまた、死んでしまいます」
「やっぱり無視かよ・・・」
これまでも、”そいつ”に話しかけたことはあったが、反応してもらえたことは無い。
「レイド・・・ 変えた未来を守るために、ひとつ忠告をしましょう」
「・・・なんだよ」
「貴方たちの中に、まだ裏切り者がいます。それを探し当てるのです! そうすれば、今度こそ脅威は打ち砕かれるでしょう!」
「裏切り者、だと・・・?」
――エレーヌ。いやいや、それは無いだろう・・・
ロイク。これもあり得ない。はずだ・・・
カイン。信じたい。友が裏切るはずが無いと。
レシティア、ロベルト、エマ、マリー・・・
だめだ。信じたくない・・・ なんで、そうなるんだよ・・・
「・・・理解できましたでしょうか。それでは、時間のようです」
「おい、最後に教えてくれ。お前は、何者なんだ・・・?」
レイドがそう言っている間にも、意識が段々と薄くなっていっている。
「・・・それは、また、お教えする機会があるのかもしれませんね」
(・・・! 反応したぞ! おい、ちょっと、待って、く、れ・・・)
「ぅ・・・、う・・・ はっ!」
レイドはまた、違うところで目が覚めた。
辺りを見回していると・・・ どうやら、どこかの病室のようだ。
「・・・え、レイド・・・?」
何か、懐かしい声が聞こえた。
「え、エレーヌ・・・ ゲホッ、ゲホッ・・・」
「っ・・・」
たまたま病室に入ってきたエレーヌは、驚きの余り、持っていた杖を落としてしまう。 そして、そのまま・・・
「ああ、良かった!!」
「え? ちょ、エレーヌ・・・!」
――なんと、レイドに飛びついて来たのだ!
「ど、どうしたんだよ。なんか、身長も伸びたか?」
「・・・っ、当たり前ですよ! 貴方、一年も寝たきりだったんですよ!?」
「は? 一年・・・? え、えぇぇぇぇぇぇっ!!??」
「も、もう、帰ってこないかと・・・ ぐす・・・ぅ、ぅぅ・・・」
エレーヌはそのまま泣き始めてしまった。
レイドも何が何だか分からず、呆然としている。
レイドたちの英雄章は、ついに、最終局面へと迫る・・・
第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~ 終




