第六十六話 さようなら
「ガァァァァ・・・!!」
怒り狂ったように威嚇を始める黒化マルク。
人間を辞めた彼の・・・ いや、それの姿は、非常に醜いものであった。
「おお~ 怒ってるのかな? まあ、いつでも来なよ?」
「私たちが通させない!」
前衛として立っているのは、ロイクとマリー。
マリーも今は、非常に心強い戦力である。
「マズ、ハ、弱ソウナ、女カラ、ダ!」
「はっ! 私の方に来たな!」
(・・・俺で駄目だったんだ。マリーが戦えるはずない!)
「サテ、一人目・・・ ッナ!」
余裕そうにマリーに突撃していた、マルクの表情が一変。
急に動きが鈍くなったのだ!
「マリー! わたくしが妨害魔術をかけたわ! 今のうちよ!」
「よし! チャンスだな!」
「小癪ナ・・・! フンッ!!」
「おっと、その程度の攻撃は読まれるぞ?」
マリーはマルクの攻撃をきれいに受け流した。
そして、体勢を崩したマルクの足を狙う・・・
「グゥッ!」
「まずは片足、ってところかな?」
「女・・・!」
「おっと~ まだ終わらないよ? そーれぇ!」
マルクの片足を奪いよろけたところを、すかさずロイクが追撃に入った!
(コレハ・・・ カテナイ・・・)
「・・・? 逃げちゃったよ~?」
「一旦、様子ヲ見ルカ・・・」
マルクは一旦後ろに下がった。そして・・・
「おい、足回復してねえか?」
「あ~ 再生持ちかな・・・?」
先ほどまでほぼ失っていた左足が、みるみると元に戻っている。
「ドウシタ? ソンナニ驚イタカ?」
「いや? それならできなくなるまで切るだけだよね~」
「おい、ロイク兄貴! 向こうから何か来るぞ!」
「んん~?」
黒き魔獣が、森からぞろぞろと現れたのだ・・・
「ちょっと! それは反則よ! カイン! 何とかして!」
「できねえよ! お互い後衛だろ!」
そう言っている間にも、敵の援軍はどんどん接近してきている。
「へぇ、君、援軍なんて呼べたんだ~」
「我ハ何モシテイナイ。勝利ノ女神ハ、我二ホホエンデイルダケダ!」
「マリー、ロベルト。君たちは後衛を守るんだ。僕が前衛を一人でやるよ」
「・・・分かった!」
「了解。呪術使いは前衛に向いていないけどね?」
「早く、皆を助けないと・・・!」
エレーヌも次第に焦り始めてきた。
しかし、今はレイドの治療で手が離せない。
「エレーヌ、行ってくれ。俺は大丈夫だから・・・」
「何を言っているんですか! まだ途中までしか終わっていませんよ!」
(くそっ、どうすればいいんだ・・・)
――レイドは何かと行動に移そうとするが、やはり駄目だ。
体が全く思うように動かない。
「・・・わたくしが何とかするわ! Βελτιώστε τη σωματική ικανότητα!」
「・・・これは、身体強化魔法!」
「これで何とかしなさいよ! ふん!」
なんとか止血は済んでいる。これなら動けそうだ。
「エレーヌ!」
「・・・分かりました。 兄さん! 援護します!」
(・・・俺もこの状態なら戦えそうだ。黒き魔獣の方に行こう)
「よし、エレーヌがいたらお兄ちゃん元気100倍だ! 反撃に移るぞ!」
「「「おう!」」」
そうして、レイドは黒き魔獣の対処に向かった。
「バウッ!!」
「やあ! これでも食らうんだ!」
「ゴルゥァァァ!!」
「大型魔獣がきたぜ。ロベルト、頼んだ!」
「はいはい。Átkozottak, tartsátok fel őket!」
「ゴァ!?」
「よし! これでも食らいやがれ!」
カインは矢を数発放つ。
それらは全て、大型魔獣の目など、急所に的中した!
「ゴァゥァッ!」
「やっちまえ、レイド!」
「うおおおおお! くたばれぇ!」
そうしてレイドは、大型魔獣の首を跳ね飛ばした。
他の皆も、続々と黒き魔獣を倒していっている。
「よし、こっちは片付いたぞ! マルクの方は大丈夫か!」
「・・・多分大丈夫だぜ、ほら、圧倒してるよ」
「ナゼダ、ナゼダ! 全ク攻撃ガ通ジナイ・・・!」
「さあ、なんでかな? 君が弱いだけだと思うよ?」
もうマルクは虫の息だ。必死に立ち続けてはいるが、もうよろよろである。
「そうですね、貴方は喧嘩を売る相手、間違えました」
「コノ・・・ バケモノ共ガァァァァァァァ! マダ、我ハ、ヤルベキコトガ!」
「ははっ、どっちが化け物だよ。それじゃあ、さようなら~」
「ゴゥェッ・・・!」
なすすべも無く、黒化マルクは切り捨てられた。
そして、無様に床へ倒れ伏せる。
「我ハ・・・、・・・」
「・・・あ、殺してしまった。大事な情報源だったのに」
「まあいいじゃねえか。それより、これで一件落着ってとこか?」
「うん、これ以上来る気配もないね」
「・・・やったわ! わたくし頑張ったでしょう!」
「はいはい、お嬢様」
「ふぅ~ 片腕はつらいね~」
戦闘が終わり、戦勝ムードだ。
ようやくマルクとの長い戦いが、終わった。
レイドは、エレーヌと目が合う。
「エレーヌ・・・ すまない」
「まったく、また一人で・・・ と言いたいところですが、今回は仕方ありませんね・・・」
「レイドよ、いくら愛する人がピンチだからって、焦っちゃだめだぜ?」
「うるさい! カイン!」
「楽しそうね、あっち」
「はい、お嬢様」
すると、レシティアは申し訳なさそうに、マリーに顔を再び向ける。
「ねえ・・・ アナタは、この学園に来て正解だった?」
「・・・急にどうなさいましたか? お嬢様?」
「ここに来てから、ハプニングだらけじゃないの・・・ 申し訳ないわ」
「・・・・・・」
「やっぱり、怒っているの?」
「いいえ、何を言い出すかと思ったら、そんなことですか。フフッ」
突然、マリーは笑い出した。
レシティアも拍子を付かれて、ちょっと怒り始めたようだ。
「何! おかしいわけ?」
「いや? すみません。私は、ここに来てからとっても充実した生活を送れてますよ」
「・・・そう、その返答を求めていたのよ! 全く、もどかしいわね!」
「・・・お嬢様は変わりませんね」
「さてと、あっちに行こうかしら?」
「はい、お嬢様。 ・・・ん?」
マリーは違和感を覚える。
何か、レシティアの背後にいるのではないかと・・・
(あれは・・・ 黒き魔獣! 小型だから気付かなかった・・・)
「クルル・・・ ギシャァ!」
「お嬢様、危ない!」
「え? キャァ! マリー! 何をするの・・・ っ・・・え?」




