第六十四話 恐怖の再来
「マルク、久しぶりだな・・・」
今のロマンの格好は教員姿ではなく、黒装束をまとった、何とも気味が悪いものであった。
「ロマン・・・ そ、それで、どうなさいましたか?」
「おいおい、堅苦しい口調は無しにしようぜ? 今は、俺らは”同志”なんだからな」
「あ、ああ・・・」
マルクは動揺を隠せない。額から冷や汗がにじみ出ているのが丸分かりである。
「さてと・・・ 俺はお前の状況を確認しに来たんだが・・・ どうも、レイドとの戦いに負けたようだな?」
「あっ・・・ いや、我は断じて負けてなどいない! ・・・次だ! まだ次がある・・・」
「はぁ? やれやれ、期待していた俺がバカだったか・・・?」
「なっ・・・! 我はまだやれる! もう一度機会があれば・・・」
「でもよぉ、お前、”進化の薬”をもう切らしちまったんだろ?」
ロマンはわざとらしくそう言う。
マルクはそれに対して何も言うことが出来ず、ただ単に必死に耐えていた。
「・・・何か言うことはねえのか?」
「・・・我に、もう一度チャンスをくれ・・・! その薬を・・・ 我に・・・!」
「フフフ・・・ 良く言った。ほらよ、これが最後のチャンスだぞ?」
そう言ってロマンは、袋に入った何かをマルクに見せる。
黒く輝く、丸い薬だ。
「ああ、ああ・・・! ・・・んぐぅ ぁ・・・」
「おいおい? そんなに飲んで大丈夫か?」
「ハ、はハ・・・ 全然、ヨゆウ・・・ ゥガ・・・ ゴッァゥィ・・・」
マルクは次第に何かに支配されていくように体をくねらせ始めた。
「あっ・・・ こりゃぁ・・・ 手に負えねえわ・・・ 仕方ねえ、逃げるか!」
ロマンはそうしてどこかへと消えて行ってしまう。
「うゴガァ、ギぁゲ・・・」
マルクは段々と”黒い何か”へ変貌を始めた。
黒き怨念が蒸気を立てながらマルクの体をむしばんでいく。
「・・・レィ、ド・・・」
――この世に存在してはいけない生物の、誕生だ・・・
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その頃、レイドたちは未だにCクラスで作戦会議をしていた。
未来に起こるであろうべレーター家の攻撃に備えるためだ。
「・・・その真の力とやらは、そこに行けば必ず手に入るんだな?」
「ええ、私の記憶が間違っていなければ絶対にここにあるわ!」
(ええ・・・? でも、そこは・・・)
――エマが地図を広げ指さした先は、バイセン領に広がる森だった。
「ここに遺跡があるはず・・・ ていうか、あいつがフェイスを持っていたってことは、もう行ったことがあるんじゃないの?」
エレーヌの持っている杖、フェイスはロイクが後に遺跡から発掘したものである。
「ああ、確かに遺跡で手に入れたのは確かだ」
「ちなみにどうやって中に入ったの? すごく強い守護者がいたはずだけど」
「・・・地面が崩落して入ってしまったんだ」
「ゲッ、そこもストーリー回収してるじゃないの・・・ まさか、こいつが主人公・・・?」
エマはこそこそと独り言をつぶやき始めた。
「・・・なんか言ったか?」
「えっ・・・? あ、いいえ、何も何も・・・ それより遺跡の事よ!」
「お、おう・・・ それで?」
「貴方、その様子じゃまだ詳しく調べてないわね? 実は奥にチートアイテムがあるのよ!」
「ちーとあいてむ?」
「ええ! 黒き敵をすべて薙ぎ倒せる、聖なる力よ!」
エマは誇らしげにそう言う。
レイドたちも、まさかのことに驚いていた。
「・・・それは本当の事なのかな?」
ロベルトも真剣な顔でエマに尋ねた。
「ええ、普段は閉ざされている間にあるんだけど、ミゲル教頭が居れば開けることが出来るわ!」
「・・・でかしたぞ! 早速バイセン領に戻ろう!」
「おいおいレイド、行くのはエレーヌとロイクの兄貴に伝えてからだぜ?」
「あ、そうだな! 早く伝えに行こう!」
――思いもしなかった。まさか、”黒き敵”に効果的なものがすぐ近くにあったとは。
ずっと続いていた戦いにも、今度こそ終止符を打てる!
そうレイドは心躍っていた。
――だが、少し遅すぎたようだ・・・
「ドォォォォォォォォォンッッ!!」
「な! なんだ!」
急に辺りから轟音が響き渡り、学園全体を揺らす。
数秒間続いた後、すんと静まった・・・
「・・・? 終わったのか・・・?」
「・・・! おい! レイド! あれを見ろ!」
そうカインが指さした先をレイドは見る。
「! あれは・・・!」
教室の窓から、大きな砂煙が舞い上がっているのが見えていたのだ・・・
(しかも、これは医務室の方だ・・・)
――学園に何かが現れた。それは確実なことだ。
もし、エレーヌに何かがあったら・・・
レイドはそう考えるといてもたってもいられず、走り出す。
「すまない! 一旦様子を見てくる!」
「あ! おい! 待て!」
カインの制止を聞かずにそのままレイドは走り去って行くのであった・・・




