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第六十一話 狂気のマルク

 レイドとマルクが戦う大将戦まで、まだ時間がある。

 ということで、レイドはエレーヌの見舞いに行くのだった。


「・・・ここかな。おい、エレーヌ、いるか?」


 レイドはそう言って、学園内診療所のドアを開ける。


「・・・シッ! ここは病室ですよ!」

「あ、す、すみません・・・」


 レイドは職員に怒られてしまった。

 奥を見ると、寝ているエレーヌが見える。


「・・・彼女の容体はどうなんだい?」

「ああ、ロイク先生。・・・今は安定しておられますよ。少し前までは半狂乱でしたが」


「とりあえず、近くに行ってみましょう」


 そうして、レイドたちは歩みを進める。


「・・・ぅ、んっ・・・」


 どうやら、エレーヌは起きてしまったようだ。


「・・・! エレーヌ、大丈夫かい!」

「・・・兄さん?」


「ああ、僕を分かるようだね。良かったよ!」

「そりゃあ・・・ うっ、痛っ・・・」


「エレーヌ、その左腕はどうしたんだ?」

「・・・レイドもいたのですか。分かりません、あの時と同じところが痛むのです・・・」


(確か、呪いを受けたのも左腕だったよな・・・)

 あの時の紋章は、痕になって今も残り続けている。

 どうしても、消えないのだ・・・


「・・・うーん、見た感じだと、何も起こっていないように見えるが・・・」

「やっぱり、ロベルトの呪術がなんらかの形で連鎖を起こしたのでしょうか?」


「いやー、分からないね。僕は素人だから、何とも言えないよ」

「そうですよね・・・」


 (取りあえず今分かることは、あの紋章にはまだ効力があるということだ・・・)


「レイド・・・」


 レイドが思案に更けていると、不意にエレーヌが話しかけてきた。


「何だ? どこか調子が悪いところでも?」

「違います・・・ すみません、負けてしまいました・・・」


「それくらい大丈夫だ、次勝てばいい」

「応援にも行けそうにないです、本当に不甲斐ない・・・」


「・・・エレーヌ、俺は絶対に勝つ」


 レイドは拳を握って、力強くそう答えた。


「だから、今は休んでおくんだ」

「・・・はい」


「それでは、時間だから俺は行くよ」

「ええ~ お兄ちゃんはここに・・・」


「・・・兄さん、さっさと行ってください」

「・・・・・・」


 そうして、レイドとロイクは病室から静かに出たのだった・・・



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 


 

「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」


 時は少し進み、ついに第三回戦が始まろうとしてた。観客たちも大盛り上がりである。

 先ほどよりも人が増え、中にはミゲル教頭もいる。

 そして、胸を張りながらマルクがやってきた。


「フッ! どうやら逃げなかったようだな! レイドぉ!」

「・・・だから、俺は逃げないぞ? 当てつけは止めてくれ」


「ハッ、その様子だと、我から溢れるオーラが見えていないようだな?」

「え? お、オーラ?」


(こいつ、やっぱり頭がおかしくなったんじゃないか?)


 マルクの目はガンギマっている。

 今にも、自分が持っている黒い剣を振り回しているほどだ。


「それでは、第三回戦、大将戦を始めます! 両者、用意!」


 取り合えず邪念は捨てて、レイドもインテグリ―を抜刀することにした。


(なんだ、あいつ・・・ いきなり突っ込む気か?)


 一方のマルクは、前傾姿勢で剣を前に出している。

 明らかに突っ込む気満々だ。


「初めっ!!!」


「おおおおおおおお!!!!」


(くっ、やっぱり来たか・・・)


 試合開始直後に、マルクはレイド目掛けて突進してくる。

 しかし、それでは軌道が丸見えだ。


「食らえぇぇっ!!」


(これは、受けてカウンターを狙うか・・・)


 ――レイドはそう考え、受けの体勢に入る。

 いや、何かがおかしい。レイドは妙な違和感を覚えた。


(全身が、避けろと言っている・・・?)


 レイドはそう考えるや否や、全力で横に飛んだ。


ドガァァァァァァン!!!


「クソッ、逃がしたか・・・」


 ――先ほどレイドがいた場所は、地面がえぐれ、マルクの剣がそこに突き刺さっていた!


「おい、なんて力だよ!」

「ハハハ! これが我の新たに付けた力だ! さあ、次ぃ!!」


(何!? さっきよりも速い!!)


 マルクは剣を力づくで抜くと、再びレイドに向かって突進を始める!


「うひゃひゃひゃ!!! まてぇ・・・ 待てぇ!!」

「クソッ!」


 とんでもない力量の差で、レイドは避けることしかできない。

 あんなの、一発でも食らってしまったら終わりだ。


「レイドぉ・・・ 逃げてばっかりかァ・・・? つまらんッッ!!」


 マルクの漆黒の目は、まさに獲物を追う猛獣そのものだ。


(どうにかしてこの状況を打開しないと! だが、どうすればいいんだ・・・?)

 レイドは何も思いつかないまま、ただ逃げてばかりいる。


「ハハハハ! フフフ、フフ・・・ ウッ・・・ ウがァァァ・・ 頭がァ・・・」

「は? 動きが鈍くなったぞ。何だ・・・?」

 

 マルクは頭を抱え、うずくまってしまったのだ。

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