第五十七話 エレーヌの悩み
その後、他の人にベレーター家について聞いても、何も有力な情報は得られなかった。
「は? 俺が知るわけねえだろ」
――カインはもちろんこんな反応だ。マリーも同じである。
最後にロベルトにも聞いてみたが、
「・・・・・・うーん、僕は知らないね」
何か少し考えた様子だったが、やっぱり何も知らなかった。
(うーん、どうしたものか・・・)
「レイド! ついに来たぞ!」
「どうしたんだ? その紙は・・・?」
カインが持ってきたのは封筒である。
「さっき、Aクラスの奴から渡されたぜ! 中身を見ろってな」
「これは・・・ やっぱり・・・」
――諸悪の根源たるレイドへ
貴様に逃げ道など、とうに存在しない!
次の剣術大会、貴様も参加するよな?
我が直々に貴様を倒してやる!
各々の退学をかけて勝負だ!
シャロン王国第二王子 マルクより
どうやら挑戦状のようだ。
「ちょっと見せてくれよ・・・」
そう言って、カインは挑戦状に目を通す。
「どう思うか?」
「これはなんか、イタい奴だな・・・ 頭大丈夫何なんだろうな? あいつ」
「よくもそんな勇気が出るものだ・・・」
レイドは魔術を使用しないので、純粋な剣術ならレイドは負けるはずがないのだ。
「まあ、今は別のことを考えた方がいいんじゃねえか?」
「・・・何をだ?」
「もちろん、エレーヌのことだよ。その様子じゃ、喧嘩しただろ」
「いや! 喧嘩は・・・ していない」
「そうかよ? 取り合えず動くなら今だぜ?」
(どうしよう・・・ ロイクとカインでは言っていることが違う・・・)
ロイクは待つべき、カインは今すぐ動くべきだと言っている。
――果たしてレイドはどうするのだろうか?
「・・・今すぐ行こうと思う」
「お? お前にしては積極的じゃねえか? やるな」
「さっそく、行きたいんだが、恐らく女子寮だよな・・・」
エレーヌは寮に住んでいる。女子寮は、男性は立ち入り禁止だ。
「マリー、ちょっといいか?」
「? どうしたんだ?」
「あの・・・ 女子寮の潜入の仕方って分かるか?」
「おい、レイド、単刀直入に言うなよ!」
カインはあちゃー、と思っていそうな顔だ。
「・・・・・・?」
マリーは怪訝そうな顔をしながら黙っている。
「あ、ちょ、これには訳があってだな・・・ 実は・・・」
「・・・なるほど、そういうことなら協力しよう。君のことを変態と疑ってしまったじゃないか」
「ははは・・・」
レイドから乾いた笑いがこぼれ出た。
「・・・それなら、私がエレーヌを呼んでこようか?」
「・・・ああ、その手があったか! よろしく頼む!」
「他にどのような手があるのだ・・・?」
「え? それはせんn」
「おい! それ以上は言うな! レイド!」
「・・・? それでは準備してくるぞ・・・?」
そうして、マリーは寮へ向かう準備を始めるのだった・・・
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~エレーヌ視点~
「はぁ・・・」
その頃、エレーヌはまだ自室に籠っていた。
(どうしましょう・・・ レイドに話しかける方法が思いつかない・・・ まさか、あのレイドが・・・)
――レイド・フォン・ユーラル、私の婚約者の名前だ。
最初、それが聞かされた時、ショックで夜も眠れなかった。
そうなることは分かっていたが、どこの馬の骨か分からない奴と婚約するなんて。
(しかも・・・ 中央部の貴族じゃないですか・・・ 絶対に弱いし、差別してくるに決まってます!)
そう思っていた時に、驚くニュースがやってきた。
そのレイドが、リヨンの街を救ったいう。
――その頃から、私はレイドがただ者じゃないと薄々感じていた。
まあ、所詮は私よりか弱い、同年代の少年。しばらくは様子を見ておこうと考えていたの・・・
しかし、彼はとんでもない重荷を背負って生きてきたことが分かった。死の運命を変える為に・・・
正直、レイドのことを甘く見ていた。
――そして、何か悔しい気持ちになっている。
私はいままで事実を知らず、蚊帳の外に居たようなものであること。
そして、私よりも遥かに強い精神力を持っていたこと・・・
(レイドは凄い人です・・・ でも、正直になれない・・・ どうすればいいのでしょう・・・)
エレーヌは、そんなことを悩んでいた。
「おーい、エレーヌ、いるか?」
「!? この声は・・・」
ドアからノックが聞こえた。
「・・・はい、何でしょうか・・・?」
「ああ、エレーヌ。大丈夫かな?」
「マリー・・・ はい・・・ あと少しで行きますから・・・」
「それは良かった。それより、伝言があってきたんだ」
「何でしょうか・・・」
(嫌な予感が・・・)
「レイドから、話したいんだとさ。一回、話を聞いてもいいんじゃないか?」




