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第五十四話 マルクの乱入

「ちょっと・・・ 何を勘違いしているのよ・・・」


 レイドは抜刀し、エマに静かに近づく。

 周りの生徒も何か異常だと感じ、こちらに集まってきた。


「おい、喧嘩か?」

「いや、あいつ剣を持っているぞ! あの女が危険だ!」


(これで・・・ すべてが終わる・・・)

 レイドは周りのことなんて見えていない。そのまま歩みを止めることは無かった。


「わ、私がべレーター家のはずがないでしょ!」

「・・・何?」


「だ、だって私平民だし・・・」

「名前など、いくらでも変えられるだろう? お前が、”あれ”を知っているからだよ」


「そんなの・・・ ひぃっ!」


 レイドの剣がエマの首筋にまで届く。


「おい、本当にやばいぞ! どうするよ!」

「だけどあいつってレイドだろ? 化け物じゃねえか!」


 野次馬の生徒たちは皆、止めに入らない。だが、ただ一人を除いては・・・


「おい! レイド! 何をしているんだ!」

「・・・マルク?」


 どこかへ消えたはずのマルクが戻ってきた。


「その剣をしまえ!」

――そして、こちらに剣までも向けてきたのだ。


「・・・なんのつもりだ?」

「決まっているだろう! その女を助けるためだ!」


「はぁ・・・?」


(こいつ、今さら正義の味方にでもなったつもりか?)


「さあ、来るんだ! 女!」

「え、え? 急に何?」


 エマも突然のことに困惑する、そもそもマルクが誰だか分かっていない状況なようだ。

 マルクは強引にエマを引き寄せた後、こちらに剣を再び向けてきた。


「良いか? お前が次何か悪事を働こうとしても、俺が止めてやる!」

「・・・状況も理解しないで突撃してくるとは、いい度胸だな?」


「はっ! よく言うな!」


(なぜマルクは勝てる自信があるんだ?)

 マルクは過去、レイドに惨敗している。本来ならばまた突っかかることは自殺行為に等しいはずだ。


「・・・マルク、お前、剣が変わったか?」

「ようやく気付いたようだな! 我は、この世で一番強力な魔剣を見つけたのさ!」


 マルクの剣は、黒く輝く剣に変わっている。


「いいからエマをこちらに渡すんだ。分かった、殺しはしない」

「・・・そんな戯言、信じられるわけがないだろう!」


 ――うっとおしい。だが、こいつの言っていることは正しい。

 しかし、今逃したら、エマが逃げるかもしれない!


「・・・俺にも譲れないものがある。ここで退かないならば、お前もただじゃ済まないぞ!」

「ようやく本性を見せたか! レイドぉ!」


「・・・止めてください! 私がレイドと話をしますからぁ!」

「うるさい! 女! 貴様は黙って見てろ!」


「・・・え?」


 さて、レイドとマルクは一触即発の状態だ。

 野次馬たちも、静かにその状況を見ている。


「・・・何をしているんですか! レイド!」

「エレーヌ・・・」


 すると、騒ぎを聞きつけたエレーヌがレイドの元へ駆けつけてきた。


「あいつが、あいつが! 全て知っているんだ! 俺の敵だ!」

「何を訳の分からないことを言っているんですか! 取り合えず落ち着いてください!」


「もしかして、俺がおかしいのか?」

「そうですよ! いったん落ち着いて下さい!」


 レイドはその場でよろめき始める。


「エレーヌ! 飼い犬のしつけがまるでなっていないようだな!」

「飼い犬・・・? まさか、レイドのことを言っているんですか?」


「そうだ! 犯罪者予備軍はさっさとCクラスに帰るんだな! なぜ貴様らが授業に参加できるのかも不思議なんだが」


「あの、私もCクラスなんですが・・・」

 エマが気まずそうにマルクにそう言った。


「何!? それは大変危険だ! すぐにAクラスに移転させよう!」


「それはさすがにおかしいだろ!」

「そうだそうだ! 部外者が出しゃばるな!」

 周りの生徒たちからも批判の声が上がる。

 マルクが登場した時から、彼らの視線は冷たかった。


「ええい! うるさい! 我の父上は誰だと思っているんだ!」

「・・・・・・」


「フン! 最初からそうしておくんだな! 行くぞ! 女!」

「え? ちょ、ちょっと・・・!」


 そのままエマはマルクによってどこかへと連れ去られてしまった。


「はーい! 皆そこで何しているの~?」

「ロイク先生だ。仕方ない、もう行くか」

 

 野次馬もその場からいなくなった。

 辺りにはレイドとエレーヌ、そしてロイクしかいなくなる。


「・・・落ち着きましたか? レイド」

「ああ、だが、あいつに聞かなければならないことが・・・」


「それは、また今度にしましょう?」

「・・・ああ」


「何があったか、聞かせてくれるかい?」


(ロイク、エレーヌは家族みたいなものだ。いっそ、話してしまうのもいいのかもしれない・・・)

 レイドはそう考えた。


「・・・エレーヌ、ロイクさん。今から話したいと思います。信じられないと思いますが、一旦聞いてください」


 エレーヌとロイクは、無言でうなづいた。

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