プロローグ3
重治おじさんからもらったデモプレイヤー用のIDとパスワードを打ちこむと、明るいファンファーレの音楽を伴いながらSMFのトップ画面が現れた。このゲームはまだデモプレイの段階だから、大きく書かれたタイトルの下にはデモプレイ版の文字が書かれている。
マウスのカーソルを動かしてスタートと書かれたボタンを押す。すると先程までのトップ画面はキャラメイクの画面に移った。自分のキャラの種族、身長、体型、顔の細かいところに至るまで、とても繊細なキャラメイクが可能らしい。
これはデモプレイなので適当なキャラを作っても良かったけど、せっかくなら自分のアバターくらいかわいくしたいと思ってしっかり作ることにした。
種族は縦長な耳が特徴的なエルフ。透き通った白い肌に似合う長い銀髪。スラッとした長身に仕上げて顔立ちも私の持つ最大限の美的センスを動員して仕上げた。
悪戦苦闘を繰り広げたおかげで漫画とかアニメに出てくるような美少女キャラが出来上がり、早くも私はご満悦だ。
っと、まだゲーム本編は始まってなかったんだった。気がつけば私はキャラメイクだけで三時間以上も費やしていた。自分の集中力に恐怖を覚えながらキャラメイクを完了するよ、いよいよ私のSMFが始まった。
始まるまでは良かったが、一時間で終わると言われたチュートリアルを完遂するのに、私は十二時間以上かかってしまった。あまりのゲームセンスの無さに自分でも呆れてしまう。
でも、それでも、たとえ最初のゲームオーバーが開始三歩で崖から落ちての落下死だったとしても。私がこのゲームにどハマリするには充分過ぎたようだ。
一日、また一日と時間が経っていくにつれて流石に私の鈍腕も段々と改善されて行き、キーボードを操る指の動きも、千鳥足を遊ばせていた所からそこそこしっかり歩けるようになっていた。
しかし、ゲーム内で勢いよく成長を続ける私とは対象的にリアルの私の指には限界が近づいてきていた。キーボードのWASDキーに指をセッティングするだけで吊ってしまいそうになる。たまらず私は専門家に助けを求めた。
「遥斗〜ゲームやってると指吊りそうでやばいんだけどさ、どうにかできないかなぁ〜?」
「ん?姉ちゃんってもしかして重治おじさんとこのゲームをキーボードでやってんの?」
「うん。」
遥斗の表情が「あっ」というものに変わった。え?私なんか間違えてたの?
「俺がデモプレイヤーの友達から聞いた話なんだけどさ、あのゲームって初心者がやるならコントローラーのほうが良いらしいよ。」
「それってズイッチのコントローラーでもいいの?」
「いやいや、ウチにあるのはズイッチ専用のコントローラーだから……」
ちょっと待っててと言って遥斗は自分の部屋に戻り、SMFに対応しているらしいコントローラーを持って戻ってきた。
「はいこれ。姉ちゃんにあげるよ。」
「え!?いいの?」
「うん。俺、受験勉強でしばらく忙しくなるし。ゲームなんてやったら母さんに何言われるか分かんないしww」
「ありがとう遥斗!」
こうして私の指吊り危機は収束し、より一層私はSMFの虜になっていった。寝る間も惜しんでプレイを続け、平均して一日十八時間、長いときは一睡もしないでプレイし続けたときもある。
それだけやっていれば自然とゲーム内でもリアルでもレベルも上がり、捜索技術も若干は向上した。時間の力は恐ろしいもので一ヶ月間のデモプレイが終わる頃には、およそ四〇〇〇人のデモプレイヤーの中で五本の指に入るくらいのレベルになっていた。
「どうせ一ヶ月間のお試し」「おじさんのお仕事の協力」くらいの気持ちで始めたSMFだったが、私はもう既に製品版をやると心に決めていた。
製品版のリリースは一ヶ月後。今から待ち遠しくて仕方がない。




