プロローグ2 SMFとの出会い
私が不登校になってからしばらくの間、家族にはかなりの迷惑をかけてしまったと思う。ほぼほぼ人間不信になってしまった私は、よく深夜にヒステリーを起こして泣き出したり、騒ぎ出したりした。
それでも家族は私のことを献身的に支えてくれた。そのかいもあって、不登校が始まって半年になる最近は外出はまだできないけど、自分の部屋を出てリビングでゴロゴロするくらいは出来るようになった。
今日も朝10時くらいに目覚めて遅すぎる朝ごはんを食べにリビングへ出ると、久しぶりの来客がいた。
うちは来客なんて滅多にない家だから、全く予想してなかったので咄嗟に壁の後ろ側へ隠れる。
「何してんのよ明子!重治おじさんでしょ」
壁の後ろでビクビクしている私に気づいたお母さんが少し呆れた口調で言った。お母さんがこうした口調で話すのも私の精神が戻ってきたいい証だ。
「あ、そうなの?おはよう!重治おじさん」
私が遅れながらも挨拶をすると、おじさんも優しく挨拶を返してくれる。重治おじさんはお母さんの五歳年下の弟で、たしかゲームを作る会社で働いている。
「それにしても、平日におじさんが来るなんて珍しいね。」
「ははは。そうだね。普段だったら働いてる時間だからね。」
「もしかして、おじさん会社やめたの?」
「コラー!自分と一緒にしないの!」
冗談混じりに話していると、キッチンで私の朝ごはんの支度をしながらお母さんが私に釘を投げてきた。おじさんはお母さんにまあまあと笑い、話を変えた。
「今日はね、アコちゃんにお願いがあってきたんだよ。」
「私にお願い?」
お母さんが朝ごはんをお盆に乗せて持ってきてくれたので、トーストを食べ始める。ハムとチーズが乗った、我が家では定番の朝ごはんのメニューだ。
「アコちゃんさ、MMOゲームに興味ない?」
「MMO………って何?」
私の頭上にクエスチョンマークが浮かび上がると、おじさんはカバンからチラシを取り出して私に渡した。
「MMO……簡単に言うとたくさんの人がオンラインで繋がって、同時に同じゲームをするんだよ。」
「へぇ〜」
チラシにはザ・ファンタジーと言った感じの絵柄で色彩豊かな世界や敵らしき物が色々と描かれていた。
「今度ウチの会社でソード・マジック・ファンタジアって言うゲームを出すんだけど、今はそのデモプレイヤーを集めてるんだよ。」
「へぇ〜凄いねぇ。」
おじさんの話を半分どこかへ流しながら聞いていると、話は思ってもいない方向に進んだ。
「そこでさ、アコちゃんにデモプレイヤーをお願いしたいんだけど……」
一瞬おじさんが何を言っているのか理解できなくて目をパチパチさせてから叫んだ。
「えぇ!?」
もともと私はアウトドアが好きであまりゲームというものに触れないで育ってきた。それはおじさんも知っているはず。それに、我が家には適任者がいる。
「そう言うのだったら遥斗に頼んだら?私より全然いいデータが集まると思うけど。」
一つ下の弟・遥斗は小さめのゲームの大会で、優勝するくらいの腕前らしいからデータを集めたいならそっちに頼めばいい。
「それは駄目。遥斗は今年受験生よ?ただでも勉強しないんだから、デモプレイヤー?なんてやったら、もっと勉強しなくなるから困るわ。」
そう言いながらコーヒーポッドを持ったお母さんが私の隣に来た。そういえば遥斗は私の一つ下で受験生だった……
「それに、アコちゃんはゲームがあまり得意じゃないでしょ?そういう人のデータも作る側にとっては貴重なんだよ。どうかな、引き受けてくれないかな?」
その後も色々と重治おじさんは説明をしてくれたけど、しばらく考えることすらせずに私は答えた。
「う〜ん。まあ時間はいくらでもあるしいいよ!」
こうして私はソード・マジック・ファンタジア(長いので略してSMF)と出会った。




