870
他も交戦に入ったようで目視はできないが各種センサーで起こっている事は分かる。
それにしても嫌な乱戦だ。 せめてもうちょっと視界だけでもなんとかしたい。
肉薄してきた寄生エンジェルフレームのエネルギーブレードをギリギリまで引き付けて躱し、至近距離からアトルムのバースト射撃でコアを破壊。
力を失った寄生トルーパーは落下。 その末路を確認せずにそのまま加速。
とにかく前へと進まないと話にならない。 下はいつまでもは持ちこたえられないはずだ。
アメリカ側のプレイヤーが撤退する前に行ける所まで行かなければならない。
それは彼等も自覚しているらしく、アメリカ側のプレイヤーは制限時間を意識しているらしく、かなり無理をして前に出ている印象を受けた。
レーダー表示で敵味方の識別ができない状態で視界が死んでいる事もあって上手く援護ができない。
つまり、連携を期待できないのだ。 割と最初から思っていたが、この視界を塞ぐ粉塵が邪魔すぎる。
『――と皆、思っているようだから何とかするとしよう』
不意に通信からタカミムスビの声。 同時にフィールド全域の風の流れが変わった。
集まっている? 何だと流れがおかしくなっている上を見上げるとガスの向こう側で何かが集まっているのを見てそう言う事かと察した。 恐らく気象操作系の武装を持った特殊機体が何かをしているのだろう。
詳細は不明だが何が起こるのかだけは分かった。
風の流れが止まったと同時に上空から叩きつけるような突風が戦場全体に吹き荒れ、ガスが巻き上げられる。 それにより視界が一気にクリアになった。
――最高かよ!
寄生トルーパーは分かり易くエネミーのコアがへばりついているだけあって見ればすぐに分かる。
即座にマーキングしてアトルムとクルックスの連射で次々と撃墜。
他の味方機もここぞとばかりに攻勢に転じる。 地上では誤射を気にして撃てなかった大規模破壊兵器を装備した機体が嬉々として使用を開始していた。
大口径のレーザーが戦場を薙ぎ払い。 巨大ミサイルが降り注ぐ。
ただ、ガスを吐き出しているエネミーが健在な以上、すぐに視界は元に戻るはずだが、ここまでクリアな状態で大気汚染を行う場合起点を見極めるのは非常に容易だ。
「居た」
地上を進むエネミーや寄生トルーパーの群れに混ざって卵のような形で表面にあるタコの吸盤のような噴出孔からガスを吐き出している個体が居る。
アシンメトリーに持ち替えて狙うがそれよりも早く無数の狙撃――大型の対物ライフル弾が突き刺さって即死させ、駄目押しとばかりにミサイルが突き刺さっていた。
捕捉したと同時に撃ち込んだらしく、ターゲットが被ったのだろう。
射程内に居るガスを散布している個体は集中的に狙われていた。
ならとヨシナリは無理に狙わずに前に出る事に専念する。 はっきり見えていれば対処に関してはかなり楽になる。 識別は味方のままだが、視界がクリアになったお陰で早い段階で敵と認識できるのは大きい。
加えて、対処もホーコートを散々見て来た身としては慣れたものだった。
既存フレームの機体に関しては一度躱させてから同じ状況に持って行けば同じ躱し方をするのでそこを狙えばいい。 二機のソルジャー+にアトルムとクルックスでバースト射撃。
左右に躱した所で回避先を狙って撃ち込むと吸い込まれるように命中。
そのまま撃墜。 今度はキマイラフレームだが、動きが遅い。
張り付いているコアが干渉して変形できない事もあってバランスが悪かった。
ただ、既存のジェネレーターよりも寄生しているコアの方が動力源として優秀という事もあって出力自体は上がっている。 ただ、ヨシナリが納得できない点があった。
既存機は全て出力が限界突破しているのだ。 数値で言うと約150~200%といった所だろうか。
ジェネシスフレームの場合はカナタ達を見る限り、その限りではないらしいが既存機は概ね出力面では強化されてると見ていい。
パンドラによる負荷に苦しんでいる身としては非常に納得のいかない話ではあった。
キマイラタイプは変形できない事もあって明らかに持て余している動きだ。
元の持ち主の動きをトレースしようとはしているが、明らかにエラーを吐いている。
攻撃に入るまでが遅い。 加えて弱点が剥き出しの状態という事もあってソルジャータイプより撃破が楽まであった。
機体の消耗にさえ気を付ければある程度の継戦は可能だが、あまり時間をかけると機体が先に限界を迎えるだろう。
それに雑魚にばかりかまけているとこの先、ジェネシスフレームが出て来た時に満足に戦えなくなる。
寄生トルーパーを捌きながら射程内に捉えたガスの散布固体を狙撃し、時には味方を援護。
地上と違って空中は進めはするのだが、数がとにかく多い。
――いっそ思いっきり高度を取って直上から仕掛けるか?
リミッターを外す必要はあるが、今のホロスコープなら何とか行けるはず――
不意にロックオン警告。 ミサイル。 変形してバレルロールで回避。
誘導性能が高く、追いかけて来るものは変形して撃ち落とす。
「地上からか?」
畳みかけるようにシックスセンスがホロスコープに伸びるラインのような物を捉えた。
これには覚えがある。 弾道を誘導する磁界のような代物だ。 簡単には躱せないなら防ぐしかない。
近くに居た機体をアトルムとクルックスでコアを破壊した後、掴んで盾にする。
僅かに遅れて無数の銃弾が盾に次々と命中し瞬く間に穴だらけになった。
爆発する前に投げ捨て撃って来た相手を確認して、思わずアバターの下で表情を歪めた。
見覚えのある機体だったからだ。 タカミムスビのアマノイワトに次ぐ巨体。
味方として戦った時は頼もしさしかなかったが、こういった形で出てこられると厄介以外の何物でもない。 ジェネシスフレーム「サガルマータ」カカラの機体だ。
その巨大な威容には三つのコアがへばりつき、変わり果てた姿となっていた。
「この様子じゃ『烏合衆』も北側か。 道理で姿が見えなかった訳だ」
ミサイルはサガルマータの物のはずだが、銃弾は――アレか。
飛行形態のサガルマータの背に別のジェネシスフレームが乗っている。
見覚えがない点からアメリカの機体か、新入りといった所だろう。
両腕にガトリング砲、胸部に寄生コア。 背面のパーツが恐らく誘導を担っているのだろう。
この様子だと他のメンバーも来そうだ。 カカラとその背中に乗ってるおまけだけでこれなのだ。
これ以上増えられると厄介だった。
誤字報告いつもありがとうございます。
宣伝
パラダイム・パラサイト一~二巻発売中なので買って頂けると嬉しいです。
Kindle Unlimited、BOOKWALKERのサブスク対象にもなっていますのでよろしければ是非!




