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ランク戦をこなしたり、マルメルがGを稼いではガチャで溶かす光景を眺めていればあっという間に時間は過ぎ、イベント戦の当日となった。
「はい、やってまいりましたワールドレイド。 ミッションを受託したらもうちょっと情報が出たので共有していきたいと思います」
場所はいつものユニオンホームだが、随分と家具が増えていた。
マルメルがガチャで当てた外れアイテムだ。 ついでに言うとメンバーのアバターもかなり変わっていた。
「よっしゃぁ! 燃えて来たぜ!」
マルメルはあのアフロで行くのかと思ったが、黒を基調とした野戦服を身に着けており、頭部は角刈り。
やや浅黒い肌にがっちりとした体格。
初期の固定サイズではなくしっかりと作っているだけあって人間味がある見た目となっていた。
表情もしっかりとあるのでにやりと笑っている事も分かる。
「そうやねー。 今回も中々に楽しめそうやし、期待してるわぁ」
ふわわも変わっており、短く切り揃えられた黒髪に細い体。
顔は日本人形のように整っている。 和装が良く似合いそうな顔だったが、服装は動き易いズボンとワイシャツといったさっぱりしたものだった。
「ふわわさんもアバターを弄ったんですね」
「マルメル君がアイテム余ってるっていうし折角やしねー」
「ってか姉さんリアルと違いすぎ。 何ですかその胸と尻は、全くないじゃないですか」
黒髪ロングでセーラー服という何かを狙っているのかと疑いたくなる装いのシニフィエの指摘にふわわは無言でその額を指で弾く。
「要らん事は言わんでえぇ」
そしてホーコートは気に入ったのか対爆スーツをしっかりと着込んでいる。
ヨシナリもスニーカー、ズボン、黒のパーカーとラフな格好をしている事もあって統一感がないなと少し笑ってしまった。 ベリアル、ユウヤはそのまま。
アルフレッドは留守番なのでここでヨシナリ達の出発を見送る。
「まぁ、何だかんだとイメチェンできましたね! グロウモスさんも今日はよろしくお願いします」
「ふ、フヒ。 ま、任された」
グロウモスは大きいサイズのハーフパンツにこちらも大きめのパーカー。
顔にはガスマスクが装着されているので、喋る度にコホーと籠った呼吸音が響いた。
「正直、アバター弄るのって今更感あるよなぁ」
「そうでもねぇよ。 俺もアバターを弄り出したのはAに上がる少し前だった。 ――あぁ、そこの厨二野郎はもっと早かったな。 初めて会った時にはもう弄ってたな」
「ふ、我こそは闇の王。 王には相応しい装いという物があるのだ」
何だかんだと話している間にヨシナリはウインドウを可視化。
ミッションの概要を表示させる。
「はい、ブリーフィングを始めるから注目。 まずはフィールドから。 場所はどこかの惑星――俺の見立ては月面に近い環境だと思ってる。 だから重力に気を付けて。 後は散々、注意されている装備制限に関しては頭に入れておくように。 特に俺、マルメル、グロウモスさん、ホーコートは残弾の管理を徹底」
映像を切り替える。 空は真っ暗、太陽がそこそこ近いのか視界は明瞭に見えた。
「ここまでは事前に知らされていた情報。 で、ここからが、もうちょっと詳しい内容になる」
切り替えた映像の下にはカウントが記されており、既に三時間近くが経過している事を示している。
「入れ替え制って事は聞いてたけど、順番は聞いてなかったからな。 どうやら俺達は二番手って感じみたいだな。 恐らくは先行して入っている他所のサーバーのプレイヤーがいるから状況次第ではそっちの援護も必要になると思う」
「ちなみに何処か分かるのか?」
「あぁ、分かるぞ。 アメリカ第三サーバーだ」
「最初に当たった所かー。 今回は味方って事でええねんな?」
「はい、そこは間違いないみたいです。 わざわざ制限時間を設けているのはスコアアタックと見て間違いないので、ガンガン敵を仕留めて行きましょう」
他に言っておくことはないかなとウインドウを操作していると、これがあったと忘れている事を思いだした。
「後、前の侵攻戦と同じで降下スタートなのでそこだけ気を付けてください」
言い終わった所で準備しろとアナウンスされたのでそのまま操作してフィールドへと移動を開始。
直ぐに切り替わるかと思ったが読み込み中といったシークバーがポップアップ。
限定ミッションの時も妙に読み込みが長いなと思っていたが今回は更に長い。
通常のミッションなら1秒もかからないのに、こちらに関しては30秒近くかかるみたいだ。
焦らすなぁと思いながら待っていると作業が完了し、ヨシナリの意識はイベントフィールドへと移動した。
最初に感じたのはズシンという衝撃。
薄暗いが、足元に光源があるお陰で視界は問題ない。
「――ってか狭いな」
呟いたのはマルメルだ。
視界を巡らせるとマルメル、ふわわ、シニフィエ、グロウモスの機体が見える。
形状から球のような構造の狭い構造体にホロスコープを含めて五機が詰め込まれていた。
どうやらこれは降下カプセルのような代物のようだ。
「まぁ、降下までの辛抱だ」
「狭いのはえぇねんけど、外って見えへんの?」
「う、ウインドウ操作で外が見れる。 中々、凄い眺めだけど話と違う」
何だとヨシナリも操作して外の映像を確認すると――
「こりゃ凄い」
そしてグロウモスの言う通り、話と違っていた。
現在地は宇宙であり、周囲の状況からヨシナリ達は戦艦の腹に連なるように張り付いているカプセルの中のようだ。 そして下に広がるのが目標の惑星なのだろうが、様子が違っていた。
具体的には赤っぽい雲のような物で覆われており、明らかに大気があるように見える。
「地表部分が全く見えないな。 前情報だと月面みたいな場所だったけど、全く違うぞ」
「もしかしたらなんかあってあんな感じになったとかですかね?」
もしかしたらシニフィエの言う通りなのかもしれない。
戦闘開始から既に三時間は経過しているのだ。 何かあってもおかしくはない。
もしかしたら派手な爆発物でも使って砂が巻き上がってあんな感じになった可能性もゼロではないからだ。
「――ってかそれよりも滅茶苦茶盛り上がってるな」
マルメルの言う通り、雲の下で光が瞬く。 この距離で見えるのだ。
戦闘の激しさは疑いようがない。 ヨシナリとしてはアメリカ第三サーバー相手にエネミーが何処まで戦えているのかが気になっていた。 無限湧きの雑魚なら問題はないが、そうでないのなら――
視界の端で次々とカプセルが投下されている。
どうやらそろそろ出発のようだ。 ややあって、ヨシナリ達のカプセルも切り離された。
誤字報告いつもありがとうございます。
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