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地上に関しては中々に混沌を極めていた。
柱――もはや塔と読んだ方が適切なそれを中心にプレイヤー達がそれを包囲する形になっているのだが、塔から吐き出される敵性トルーパーと背後から襲って来るエネミーの群れ。
完全に挟み撃ちという形になる事もあってかなりの劣勢だ。
そんな中、カカラとアドルファスはそれを物ともせずに凄まじい戦いぶりを見せつけていた。
特に一対多で力を発揮できるカカラにとってこの状況は決して悲観するものでもない。
ガトリングガンの斉射で地表を薙ぎ払い、ミサイルの嵐を巻き起こし敵性トルーパーを次々と撃墜していく。 アドルファスはカカラの背に乗り、彼の死角をカバー。
移動を任せる事でドローンの操作に専念できる点も良い配置だった。
――よく見るとアドルファスの足というよりはカカラの背に固定具が付いていた。
足を乗せると固定して落ちないようにする代物だ。
「うむ。 最近、人を乗せる機会が増えたんでな! 付けてみた!」
「いや、振り落とされる心配ないから楽になったぜ」
カカラのような大型機に付いていると非常にありがたい装備だ。
個人的にはマルメルやアリス辺りを乗せるといい感じになるなと思いながら少し視線を下げるとヴルトムが仲間達と円陣を組んで持ちこたえていた。
人を集める事もだが、動かす事も上手くなっている印象を受ける。
あまり対戦する機会に恵まれなかった事でこういった時にした戦っている姿を見れないのだが、より集団戦に特化した成長をしているようだ。
そのまま地上を俯瞰していくとふと一点に注目した。 マルメルだ。
まんまるに向けて手を振っていた。 何やらやり取りをした後にまんまるがちいさく頷くとマルメルのアウグストを肩車して上昇を始めたのだ。
「あぁ、この時点で来ようとしてくれたんだな」
「まあな! まんまるさんが近くに居てくれて助かったぜ!」
「重かったですぅ……」
少し遅れてホーコートが上でヨシナリが苦戦している事を察して急上昇。
映像をヨシナリにフォーカスすると塔の近く――反応炉から少し離れた位置で苦戦している姿が映し出された。
「流石のお義兄さんでもアレは無理ですか」
「単純に躱す隙間がないからな。 空間転移とか使えたら楽だったんだけど、強引に突破すると被弾は避けられないから離れるしかなかったんだよ」
反応炉の近くには複数のオビディエンスフレームのカスタム機。
突撃銃、散弾銃等のとにかくばら撒くタイプの携行火器をこれでもかと装備した連中が密集。
明らかに近づけたくないといった動きだった。 これをやられると単騎のヨシナリとしては非常に困る。
「我ながら焦ってたなぁ」
最低でも味方を何機か連れて行くべきだった。 そうすれば突破は可能だっただろう。
「ヨシナリ君でもこんな場面やったら焦るんやなぁ」
「そりゃ焦りますよ。 反応炉は中で移動してたんですからモタモタしてると逃げられると思ったんで……」
塔は明らかに宇宙まで伸びていた。 トルーパーの限界高度を軽く超えている。
そこまで逃げられると手出しができなくなると思っていた事もあって猶更だ。
突破自体はパンドラを使えばできなくもなかったのだが、表面を掘削する必要がある以上は無理に取り付けば落とされるのが目に見えている。
ポンポンは全体指揮で忙しかった事もあって結局、単機での突出を選んでしまった。
ここは大いに反省するべき点だろう。
そんな事を考えている間にマルメルとまんまる、ホーコートが援護に到着。
ヨシナリが取り付くまでの援護をしてくれたのだが、その先がよろしくなかった。
あの塔は敵を吐き出し続けているのだ。
つまり、敵の精製もしくは生産、輸送を担っている可能性が極めて高かった。
それに穴を開けて内部に突入する事の意味をもっと深く考えるべきだっただろう。
内部はシャフトのように空洞になっており、恐らくはエレベーターに近い代物で反応炉を安全に上へと送る役目がある。 そんな重要な場所が侵入された時の対策をしていない訳がない。
ヨシナリが反応炉に対して攻撃を開始したと同時にシャフト内に次々と敵性トルーパーが出現。
「おいおい、俺が見てない所でこんな事になってたのか」
「そうなんだよ。 しかもこいつら撃たずに組み付きに来たからどうにもならなかった」
下手に撃つと反応炉に当たるからか敵機は武器を使わずに両手を広げて突っ込んで来たのだ。
狭いシャフト内でそんな事をされれば高機動機であるホロスコープに防ぐ手段はない。
何せ逃げるスペースが物理的に存在しないのだから。
「正直、終わったと思ったよ」
実際、こうなった以上はヨシナリにできる事はなかった。
だが、別のルートで上がってきていた者が居たのだ。
ユウヤとタヂカラオ。 どうやら彼等が悪魔型を撃破した場所はシャフトの真下だった事もあって天井を破ってそのまま上がって来たのだ。
「これ、いつから気付いてたんですか?」
「割と直前だよ。 あの悪魔型を仕留めて地上に戻ろうかと思ったんだけど、例の反応炉が真上にあるって気付いてね。 そのままユウヤ君を誘って突っ込んだという訳さ」
「元々、反応炉を上げる為のエレベーターみたいな物だからな。 天井ではあったが、開閉する仕組みがある以上は破るのは訳ねぇよ」
「あぁ、そうか。 元々、反応炉はあそこの下だったからか」
「そう言う事だね。 例の敵機があそこに誘い込んだのも反応炉を置いておく関係で守りが固く、逃がしてしまえば邪魔が入り辛いと考えたからだろう。 まぁ、結果的に僕達が下から仕掛ける事が出来たので悪手ではあったね」
敵側としてはあそこで勝てると踏んでいたのだろうが、タヂカラオの存在を失念した事で完全に引っ繰り返されてしまったのだ。
後は下から上がって来た二人が反応炉にとどめを刺して完了となった。
反応炉を挟んで上に居たヨシナリは取り押さえられて身動きが取れないといった非常に間抜けな状態でのステージクリアとなったので素直に喜べない所ではあったが、勝利した事は素直に喜ばしかった。
「ったく、我ながらいいとこなかったな。 俺はランク戦に潜るわ。 じゃあおつかれ」
真っ先に離脱したのはツガルだ。 それに続く形で次々にその場から去って行く。
アドルファスとカカラは例の悪魔型と遭遇できたというのに借りを返せなかった事が少し残念そうで、ケイロンは撃破された事が悔しかったのかツガルと同じでランク戦に潜ると口にしていた。
アリスはマルメルに軽く挨拶し、ポンポン達は疲れた様子でまたなと小さく手を振っていなくなる。
「星座盤」のメンバー達も思う所があるのか次々に去って行き、最後はヨシナリとタヂカラオだけとなった。
「まぁ、色々とあったけど勝てて良かったよ」
「ですね。 今回のMVPは間違いなくタヂカラオさんですよ」
「よしてくれ。 作戦立案したのに欠片も予定通りに行かなかったんだ。 僕としては素直に喜べないよ」
お互いに苦笑。
「では、俺もこれで」
「あぁ、楽しかったよ。 次は例のイベントかな? またよろしく頼むよ」
「えぇ、一緒にぶちかましてやりましょう」
ヨシナリは小さく手を上げてタヂカラオに別れを告げるとその場を後にした。
誤字報告いつもありがとうございます。
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