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こうして見るとふわわがある程度は武器に気を遣っていたのが何となくだが分かった。
恐らく彼女が本気で振り回すと武器が保たないのだ。
――そう言えば太刀を選んでいる時は頑丈さを重視してたな。
加えて挙動の最適化も進んでいる。
空中での踏み込みを推進装置で再現しているのは知っていたが、完成度が上がっていた。
恐らくはどの程度噴かせばどれぐらい前に出られるかの感覚を掴んだのだろう。
ベリアルですら僅かに反応が遅れている相手に正面から打ち合えているのだ。
機体の性能差でやや押し負けている点からも技量というでは上回っているのは間違いない。
相手が剣に対してふわわは短剣。 間合いを詰めれば剣の長さが足を引っ張る。
加えて二本ある事もあって手数はほぼ倍。 流石に捌き切れずに刃が頬を掠めていた。
――俺とベリアルが合体してようやくまともに打ち合える相手にこれやれるのは何なんだ?
ふわわの恐ろしさに震えながらも注目したのは両者の武器だ。
あの悪魔型の武装は短剣、剣、長剣の三種。 その全てが常に紫電を放ってスタン――ある程度の耐性があったとしてもセンサー系へのダメージは免れない。
その為、鍔迫り合いをするだけでも危険な代物だ。
ただ、細かく制御できる代物ではなく、放たれる紫電は自機にまで及んでいる点から何らかの防御策を施しておかないと時期にまで悪影響が出るだろう。
ふわわは強化装甲の機能で、悪魔型は紫電を吸収してエネルギーに変換する機能を持っているようだ。
面白い機能だ。 本来ならデメリットとしか思えない効果もこうしてメリットに変換するのは興味深い。 機能として放出するのはエーテルに近く、参考にすればもっとパンドラを扱う幅が広がるかもしれない。 そんな事を考えている間に映像が進んでいた。
敵機はリーチの差を埋める為、剣を捨てて素手で捌き始めるが、ふわわの膝が入りくの字に折れ曲がる。
――ひぇ。
普通に肉弾戦で圧倒している事に更なる恐怖を覚えながら、映像で追い込まれた敵機は更なる手札を切った。 自機の周囲に磁界のような物を発生させて武器をドローンのように自在に操る事だ。
ここまで使わなかったのは温存していたからだろう。
飛んで来た剣を首を傾けて躱し柄に噛みついて拘束。
あちこちで声が上がる。 マルメルは驚きに仰け反っていた。
その隙に距離を取りに行ったが、ユウヤが電磁鞭で足を拘束。
ツガルが同期して仕掛けに行ったのだが、大剣で受けて勢いを殺した後に機体に爪を立てる。
そして放電。 全体のカバーに入っていたベリアルが居ない事で各個撃破が容易になった弊害だ。
再度、放電。 アバターが焼き尽くされたツガルはそのまま脱落。
その後はふわわが接近戦を行いユウヤがフォローという形になったが――
「もしかして少しムキになってましたか?」
「……うん。 まぁ……」
ふわわは歯切れ悪くそう答えた。 ユウヤを下げて一騎打ちの状況を作ったのだ。
それもあっただろうが、温めておいた切り札を使う為でもあったのだろう。
彼女の使った切り札は野太刀による二連撃。 振り切った後にエネルギーウイングで強引に姿勢を変えて二撃目に繋げるといった物だが、長剣を突破できずに半ばで折れた。
恐らくはイラと似たような破壊不能な材質で作られているのだろう。
折れた野太刀に対して長剣は無傷。 例の磁界で短剣は取り返され、ふわわに武器がなくなった。 それでも諦めずに行ったガッツは買いたいが、ユウヤに助けを求めなかった時点で視野が狭くなっていると言わざるを得ない。 その後の展開はあまり見るべき点はなかった。
武器を失ったふわわは諦めずに素手で粘りはしたが、装備と性能差に押されてそのまま短剣でコックピットを貫かれて脱落。
「気持ちは分からなくもありませんが、ここは素直にユウヤに助けを求めるべきだったかと」
「……うん。 ごめんな?」
ユウヤ以外を全て処理したと思っている敵機には明らかに余裕があった。
ヨシナリは無言で視点を上げるとタヂカラオが手動でコックピットを開放したのか機体からアバターが抜けだしている。 恐らくはユウヤに合図を送る為だろう。
無言で視点を戻すとユウヤが敵機と戦いを繰り広げている。
立ち回りとしてはかなり堅実だ。 大剣を使わずに電磁鞭と散弾砲で近づけずに中距離を維持している。
「接近戦は厳しいからか?」
「あぁ、今の俺じゃ打ち合っても押し負けるのが目に見えているからな」
こうして見るとユウヤの立ち回りからは冷静さが伝わって来る。
「あ、ここで気付いたんやなー」
敵機が背を向け、ユウヤの視線が空間の上に向いた所でタヂカラオが壁を殴って火花を散らしたのだ。
アバターは金属部品を使っているので上手く壁を殴れば火花を散らす事は可能だった。
ユウヤは僅かに訝しんでいたがタヂカラオだと気が付いて空間の中央に移動。
躱し辛い位置に敵機を誘導する。 ユウヤの抵抗を払いのけ、仕留めに行く瞬間――それが起こった。
タヂカラオの放ったエネルギーリングがユウヤ諸共敵機を拘束したからだ。
円柱に近い形状の空間で真上から放ったエネルギーリングは大きく広がり躱せる隙間が物理的にない。
加えてユウヤを仕留める事に意識を割かれていた敵機はまともに喰らう事で動きが止まる。
正確には重力異常に囚われて身動きが取れないのだが、こうなってしまうともうどうにもならない。
真上から強襲したタヂカラオが背後からエネルギーランスで一突き。
まともに喰らった悪魔型は躱す事も出来ずに爆散。 撃破となった。
タヂカラオが珍しくニヤニヤしており、余程爽快だったんだろうなという事が分かる。
「いや、本当にお見事です。 あそこまで思い切った手段は思いつきませんよ」
「前に一回戦っているのが大きかったね。 ふわわ君と同様に気配を察知して来るタイプと判断して、どうすれば認識されないかと知恵を絞った結果だよ。 動力を落として可能な限り視線も向けない。 そうすればそこらの木石と変わらない。 後はあいつが油断してくれるまで待って仕掛けたという訳さ」
楽し気なタヂカラオとは対照的にふわわやユウヤは不満そうだった。
「まぁ、ふわわさん達の気持ちも分からなくはありませんけど、仕留められなかったので仕方ないかと」
ふわわはぐぬぬと悔し気だったが、次の機会に頑張って貰おう。
これで地下での戦いは決着となった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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